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会社の幹部が居並ぶ、大事な会議に遅刻した。
朝出社して、手帳の予定に赤線を引いてたのに。
昼前に受けた、他部署からの面倒な相談事。善後策をどうにか捻り出し、若手に手伝いを頼もうとしたら。彼女はイヤホンを付けて、リモート会議で取り込み中みたいだ。なぜかわたしに、怪訝そうな表情を向けている。
ヱ？会議って、もしかして…。
職場を代表して、その会議にリアル参加しているはずのわたし。
赤線を引いた午後1時から、すでに30分以上が経っていた。
仕事を終え、どんより落ち込んで帰路につく。
玄関前でポケットをまさぐると、そこにあるはずの鍵が無い。
暑くてジャケットを脱いだ、あのとき落としたのか？
それとも、もしかして…。
ドアノブに手をかける。果たしてあっさりとドアが開いた。
鍵は玄関に置きっぱなしだった。つまり、そもそも鍵をかけるのを忘れていたということだ。
失恋、それは人生における大きな哀しみのひとつだろう。
だけど失念を繰り返すようになるのも、同じぐらい哀しい。
ユッコこと岡田有希子さんはデビューして2度目の夏、「哀しい予感」という曲を唄っていた。
あの頃はまだ、失恋よりもずっと深い哀しみがあるなんて知らなかった。
photo by yukikostarlight