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月曜の午後。勤務シフト担当のわたしに、同期でチーム副リーダーの重責を担うOがさらりと言った。
「忌引を取ることになりました、7日。調整お願いします」
彼の穴を埋めるには、いろんな人に頭を下げて交代してもらわなきゃいけない。正直しんどいけど、困った時はお互い様だ。
忌引が7日、ということは親御さんか…葬儀だとかいろんな手続きやら、いろいろ大変なのはよく知っている。7日でも短いほどだ。
「このたびは御愁傷さまでした…親御さん、ですよね」
「いや、親じゃないんだ。もう両方ともいないから」
???
「え…もしかして、まさか…奥さん?」
「うん」
「!!…マジで?」
「うん、マジで」
「 …………ご病気だったの?」
「うん、実は5年前から入院してて」
「容体が急変しちゃって、昨日逝ってしまった」
彼の表情は、飄々としたいつもと変わらなかった。
長年同じ職場で仕事をしてきたけど、Oは家族のことを話すことがなかった。奥さんが何年もがんと闘っていたことを、みんな知らなかった。Oがこの数年、以前にも増して仕事に没頭し、去年昇進も果たした一方で、毎月必ず有給休暇を取っていた理由も。
「明日は出社するから、明後日から頼むね」
「なに言ってんの、明日だって来なくていいよ!」
「いや、いろいろ済ませとかなきゃいけないし」
次の日も、Oは普段通り淡々と仕事をしていた。
みんなに帰れと言われても、遅くまで仕事をしていた。
そうしなきゃ、悲しみを紛らわせられなかったのだろう。
「ご飯ちゃんと食べてる?」「いや、食べてない…」
チームを束ねるOの7日もの不在は、残されたメンバーにとってやたらに長い。
だけど彼の7日は、それこそあっという間なんだろう。
ユッコこと岡田有希子さんの人生は、それこそあっという間だったのかもしれない。
だけど彼女を想うみんなの心の中に、その輝きはずっと消えずにいるんだろう。
photo by yukikostarlight