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その日は連休最終日、新幹線のぞみ東京行きは混んでいた。

帰省先から戻るツレさんが、通路側に取った自分の席にようやくたどり着いたその時。田原俊彦さん往年のヒット曲よろしく〝ハッとして、グッときた〟という。

 

座席の背もたれにどうしたことか、腹が膨らんだデカいバッタが止まっている。

10cmはあったらしいから、たぶんわが国最大といわれるショウリョウバッタのメスだろう。

 

ツレさんは思った。この列車にいる誰かが駅に来る前、草むらを通った時にキミを連れてきちゃったんだろうな。…でもこのままじゃバッタが自分の頭に乗りそうだ、キミドリのチョンマゲはイヤや〜!

 

背もたれからバッタが乗った白いカバーをそっとはがし、それを両手で持って客室の外へ。乗っていた12号車のデッキ、以前黄緑色の公衆電話があった台にカバーを置くと、バッタがそこに移ってくれた。一安心のツレさんは席に戻り、ぐっすり眠ったという。

 

目覚めた時は終着まで数十分。トイレに行こうとデッキに出ると、バッタは壁づたいに天井近くまで登っていて。

これは折り返しの清掃でもきっと気付かれないと思ったツレさん、ちょうど通りかかったパーサーの若い女性に思い切って声をかけた。

「すみません…あの〜、そこにがいます」

「ヱッ!ど、どこですか?」

指差した先を見上げた、パーサーさんの絶叫が響いた。

「ギャアァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

「す、すみません!ワタシダメなんですう!」「お待ちください、すぐ助っ人を呼んできますから」

駆け出したパーサーさんにホント申し訳なく思い、その場に残ったツレさん。連れて来られた車内警備のおじさんによって、バッタがビニール袋の中に去るまでを静かに見届けたという。

 

 

 

ショウリョウバッタの別名は「米つきバッタ」。体全体を上下に大きく動かすさまが、米をついているようにみえることから付けられたといいます。その姿はまた、お辞儀を繰り返しているようだとも。

誰より丁寧にお辞儀をしていたという、ユッコこと岡田有希子さんを思い浮かべるわたしでした。

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