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少年時代を過ごした北関東の街で、一年振りに母に会った。
もうすぐ80歳の母はいつのまにか、前歯がみんな抜けてしまっていて。
本人が嫌がるから、入れ歯も使っていないと妹が言う。
いまは養護施設にいる母、外出の機会は通院と父の墓参りぐらい。
この街にいまも住んで、母の様子を見てくれる妹夫婦と姪っ子と、墓参の帰りに母を囲んで食事するのが慣わしだったけど。
今年はどうする?施設に連れて帰るしかないの?
妹は「柔らかいものを選べば外食でも大丈夫、うどんとか」。
そして連れて行ってもらったのは、利根川の異名が店名の和食チェーン店。〝味噌煮込みうどん〟がこの店の名物という。母が食べたがったので、わたしも一緒に注文したのだけど。
ユッコこと岡田有希子さんのファンになって、わたしは彼女が味噌煮込みうどんを〝すごくかたくて、すごくおいしい〟と絶賛していたのを知っていて。
歯の無い母に食べられるだろうか、心配になって店員に頼んだ。
「やわらかめでお願いします」。
外国籍らしき若い男性の店員は、きょとんとした顔をしていた。
通じなかったかな?不安をよそに運ばれてきたのは、ぐつぐつ煮立ったままの鉄鍋。熱々のうどんはよく跳ねるからと、前掛けをいっしょに配ってくれる。ありがたい。
ユッコさんが好きだった、味噌煮込みうどん。北関東のチェーン店で看板メニューの理由は、創業者が名古屋で食べて感動したからという。
今回思いがけず食べたのだけど、最後のひとくちまで美味しくて、人気の理由がよくわかった。そして、歯の無い母にもしっかり噛めた、うどんのやわらかさが嬉しかった。
願いが届いて良かった、母が笑顔で良かった。
〝すごくかたい〟本場の味噌煮込みうどんはちょっとおあずけだけど、いつかユッコさんの故郷でいただくのを楽しみにしよう。
東京にはないその和食チェーン店の経営理念は、「親孝行」なのだそうです。お店の前には親不孝通りならぬ、「親孝行通り」の標識が立っています。
photo by yukikostarlight