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クールビズという言葉がなかった、平成の初め頃。
就職して配属された経理部には、昭和を体現する先輩がいた。
「バカ!なんでスーツを着てこないんだ」
夏、泊まりがけで行われた研修の集合時間。サングラスにアロハシャツの同期二人が、七三分けの髪にグレーのスーツ姿の先輩Kさんに怒られていた。この同期の一人は三十余年経った今、経理局長に就いている。
膨大な伝票をひたすら捲って電卓を叩き、判子を押す。社外の人に会うことがない経理職場で、Kさんは営業マンよりもシュッとしていた。スーツとネクタイは毎日微妙に違ったし、真っ白なワイシャツはいつもアイロンがびしっとかかってたし、足元は常に磨き込まれた革靴だった。
そんなKさんは酒と煙草をこよなく愛し、アフターファイブは冷徹実直な職場での顔と一変した。カラオケに行けば、いつも宇宙戦艦ヤマトのエンディングソング「真赤なスカーフ」を熱唱していた。難関大グリークラブ出身の美声で。
普段は開かずの間になっている、会社創業以来の帳簿書類が詰まった地下倉庫。数年に一度という倉庫整理の日、汚れていい服装で来るようにとのお達しがあった。汗まみれ埃まみれのキツい一日、さすがのKさんもジャージ姿だった。
「だけどあのとき、Kさんジャージに革靴だったんだよね〜!」
この夏ひさびさに集った、いまはそれぞれの道を歩む同期たち。ほんのひととき三十余年前に戻って、したたか飲んで笑った。
ユッコこと岡田有希子さんが取り残された昭和の末は、遥か遠くなったけど。
わたしの駆け出しだった平成の初め頃も、いまはセピア色の思い出だけど。
ユッコさんの面影は、わたしのなかでいつまでも色褪せないのです。
photo by yukikostarlight