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調べてみたら、もう20年も昔のことで驚きました。

ピンク・レディーが再結成して「テレビが来た日」という歌を唄い、NHK「みんなのうた」で連日流れていたのは。

「お茶の間に初めてテレビがやって来た!嬉しい!」という、昭和30年代的な内容の歌詞。世代ギャップを強く感じる、共感しにくいものでした。平成15年当時、NHK50周年という背景からうまれたこの曲は、テレビが一番元気だった時代への、作り手の懐古に満ちていたのでしょうね。

 

そして令和5年のいま。

気がつけばテレビから「世帯視聴率」という概念が消えていました。そしてお茶の間では点いていないテレビの前で、家族がそれぞれのスマホやタブレットに目を凝らしています。

 

ヘッドホンをしてYouTubeに没入している、高校生のわが子に訊いてみました。いまは学校で前の晩のテレビの話なんてしないよね、どんなこと話してるの?

〝先生がやらかしたこととか、課題の量がえげつないこと〟…なのだとか。

好きなタレントやアーティストの話は、いまはネットの世界だけでするものらしいです。

 

ピンク・レディーをはじめ、多くのアイドルを生んだテレビ番組「スター誕生」。ユッコこと岡田有希子としてデビューを果たした、佐藤佳代さんが決戦大会で優勝したのは、番組の終焉が半年後に迫った昭和58年3月でした。

そして東京での生活を始めるため、彼女がふるさと名古屋をあとにしたのは、その年の8月のこと。

 

それから40年が過ぎたいま。

彼女が憧れた、みんなが知っている「お茶の間のアイドル」は、消されたテレビの画面みたいにいなくなりました。

細分化が行き着いたコンテンツの、いくつものチャネルのひとつ。手のひらの画面の中で窮屈そうに踊る、同じような顔つきの少女達…。

絵が得意だった佳代さんがもし、いまの「スマホの中のアイドル」をみたとしたら。


〝私は純粋に生きたいから、美を表現したいから芸能界へ行く。キャンバスが舞台に替わっただけのこと〟


…かつて反対する母親に切々と語ったような、そんな気持ちになれるのだろうか。

 

家族の誰も点けないテレビを眺めながら、ついそんなことを考えてしまった夏の夜なのでした。

 

photo by yukikostarlight