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坂本龍一さんがなくなったことが伝えられた4月2日は、盟友だった忌野清志郎さんの誕生日でした。
「い・け・な・いルージュマジック」PVでの、おふたりのキスシーンは強烈でしたね。今思えば化粧品のCMソングとして〝ルージュマジック〟の言葉ありきという大人の事情のもと、二人のキスは商品の話題性を最大限に高める計算づくの仕事だったのでしょう。
坂本さんとユッコこと岡田有希子さんを結びつけたのもまた、化粧品のCMソングでした。
彼女がオリコン1位を獲った最初で最後のシングル「くちびるネットワーク」。こちらもまた、松田聖子さんの大人びた詞に坂本さんによる小気味よいテンポの曲、そしてユッコさんの魅力的なうたが揃ったからこそ表現できた、完璧な仕事だったのだと思います。
彼女のラストアルバムとなってしまった「ヴィーナス誕生」の最初のナンバー「WONDER TRIP LOVER」の作曲は坂本さんでした。彼はこの曲を、歌詞とタイトルを変更してセルフカバーしています。ユッコさんがなくなった直後、1986年4月21日に発表されたアルバム「未来派野郎」の3曲目「Ballet Mécanique」。
冒頭から全編を通して刻まれる、時計のチクタク音やカメラのシャッター音のサンプリング。そして終盤、不穏な激しいギターソロが強引に曲を終える…穿った解釈をすれば、まるで撮られるために笑顔をつくるアイドルの日々を、そしてその時が永遠でないことを象徴しているようにも聴こえるメロディー。
そして、矢野顕子さんとピーター・バラカンさんによるこの歌詞に、わたしはどうしてもユッコさんのことを想起してしまうのです。
Why a smiling face can't erase lonely eyes
(どうして微笑んでいても、瞳は寂しそうなままなんだろう)
…
コオシテ ナガイ アイダ ソラヲ ミテル
…
わたしがユッコさんのファンになった数年前。この曲を改めて聴いたら、まるで坂本さんから彼女への追悼曲のように感じたのです。
ユッコさんの存命時に曲が制作されており、そのような意図は全くなかったはずなのに。
「MAKING OF ヴィーナス誕生」によると、レコーディング最終日だった1月28日に、坂本さんが電話でユッコさんにスタジオを訪ねる約束をしたそうです。
「坂本さんのレコーディングが終わったら、来てくれるんですって!…ねえ、渡辺さん。坂本さんがくるまで、レコーディングやってて下さいね!」…彼女の言葉に、興奮した様子が伝わってきます。
でもその夜、坂本さんが制作中のアルバム「未来派野郎」のレコーディングは難航し、ついにユッコさんのいるスタジオに姿をみせることはなかったそうです。このことをもしかすると、坂本さんはのちに悔やんでいたのかもしれません。
空の上で、あの日の約束が果たされたのでしょうか?
坂本龍一さんの訃報に接し、心からお悔やみ申し上げます。
photo by yukikostarlight