「てっぺんの向こうにあなたがいる」
を観てきました。
ストーリーは、
1975年、エベレスト日本女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、世界最高峰エベレストの女性世界初登頂に成功した多部純子。その偉業は世界中を驚かせたが、同時に深い影も落とすこととなった。登山家としての挑戦はその後も続き、晩年には余命宣告を受けた後もなお、純子は笑顔で周囲を巻き込み、山に登り続けた。
というお話しです。
女性だけで海外の山へ登頂するという目標を掲げて結成された登山クラブは、エベレストの登頂を計画する。副隊長の多部純子は資金集めに翻弄するが簡単には集まらず、新聞記者で多部たちの活動に共感した北山も一緒に資金集めに協力する。
1975年、やっとのことでエベレストにアタックをするが、雪崩にあったり酸素が足りなくなるというトラブルに見舞われ、立て直そうという隊長に対し、チャンスは今しかないという多部は一人で山頂に向かう事となる。そして日本時間16時30分、純子は女性として初の世界最高峰制覇を果たした。
その世界中を驚かせた輝かしい偉業は純子を有名にしたが、一方で登山クラブは解散し友人たちは純子の前から姿をけしてしまう。一人の功績だけを重視し周りの気持ちを考えなかったからだ。女性初のエベレスト登頂という功績により有名になった純子。息子の真太郎はいつも”多部の息子”と呼ばれることに辟易し、家を出てしまう。
晩年になり癌を発症し余命宣告を受けながらも、家族や友人、周囲の人々をポジティブな考え方で巻き込み、人生をかけて山へ挑み続けた。登山家として、母として、妻として、一人の人間として。純子が、最後に「てっぺん」の向こうに見たものとは。後は、映画を観てくださいね。
この映画は登山家の田部井淳子さんという方をモデルに作られた映画です。モデルにはなっていますがフィクションなので、伝記映画ではありません。でも近いような出来事はあったのかもしれません。とても面白く観せていただきました。
純子は女性だけで海外の山に登りたいと思い、仲間で女性だけの登山クラブを設立し、エベレストに登頂するという目標を掲げます。結構な人数が集まり、資金集めを始めます。そんな時に女性だけでエベレストに登頂するという話を聞き、北山という新聞記者が純子たちを訪ねてくるんです。そして北山も取材クルーとして行動を共にするようになります。
1975年ですから、なんだか装備も本当に大丈夫なの?と思うようなモノで、あの頃、ペットボトルって無かったのかな。マヨネーズの入れ物に水を入れて持って行くからと言って集めていたのが印象的でした。食べ物を乾燥させて持って行くからと言って、フライパンで何かを炒めていて、唯の消炭になっていました。あの頃、まだフリーズドライなんていう製法、無かったんですね。
そんな時代の不思議に目を奪われて、資金集めが大変とかいう事にあまり目が向きませんでした。まぁ、何をしようと思っても資金集めは大変よね。それは現代でも一緒ですからね。でも1975年頃なら景気が上向きでお金出してくれてたんじゃないの?バブル景気に入る前ですから、お給料がバンバン上がっていた時代なんじゃないかなぁ。
そしてエベレスト登頂となりますが、うーん、純子さんって猪突猛進的な人で周りが見えなくなってしまう人なのかな。この頃、既に36歳くらいだったと思うけど、周りの人を思いやる気持ちはあまり無かったみたいですよね。
色々な状況から、もしどうしても一人だけ登頂させるとなって自分が選ばれたら登頂するのは当たり前です。みんなの期待を背負っていくんですから。でもねその後なんです。降りてきたら、登頂したのは喜んで良いけど、登山クラブみんなの功績ですよね。それを後片付けもせず、一人でやったぁ~!と言って騒いでちやほやされて喜んでいたのでは、周りは面白くないですよ。
そのことを、この映画ではしっかりと描いているのが凄いと思いました。通常ならいい事ばかりを並べて凄い登山家と持ち上げるんだろうけど、ちゃんとこういう人だったと描いている。それは凄いですよね。どんな人にだって欠点はあるし、良い面悪い面があると思うんです。完璧な聖人君子なんていないんですよ。だから人間って面白くて愛おしく感じるんです。
実は私の母の親友が大学で淳子さんと同級生だったらしいけど、相当変わった人だったみたいです。母の親友はお嬢様育ちなのにボロクソに言ってました。オバちゃん言いすぎだよって言ったら、だってねぇ~ってまた長い長い話を聞かされ、私はぐったり、おばちゃんはスッキリしていました。うーん、でも面白かった。
エベレスト登頂後、有名人となった純子はTVに出たり本を書いたりして資金を集め、山に登る時は自分の資金で登っていたようです。スポンサーはつけなかったみたいです。そのことはあまり映画では描かれませんでした。
でも、母親が有名になったために、息子の真太郎はグレてしまいます。親が有名だと思春期とかは反発してしまったりありますよね。何をやってもあの人の子供だからと言われて自分の力じゃないみたいに思えて、周りに寄ってくる人間も親目当てなんじゃないかと思ってしまい、人間不信になると思うんです。観ていて可哀想でした。
晩年の姿も描かれ、純子が癌になり余命宣告されても山に登ることを続けていたようでした。夫の正明がいい人なんですよ。この正明さんが聖人君子と言われて良いような人でしたね。だって、妻が山に出かけてしまうと1年くらい戻って来ないでしょ。その間、父子家庭で子どもを育てて仕事をして、凄い大変だっただろうなと思いました。
だってね、妻が山に登って生活費を稼いできてくれるなら応援して送り出すだろうけど、趣味で山に登っているんですよ。ましてスポンサーを付けないと言っているから、自分が講演をしたりして稼いだお金は全部登山に使うわけでしょ。夫は子育てをして、生活費を稼いで、妻の帰りを待っているって、しんどいだろうなと思いました。私の夫なら離婚届突きつけるだろうな。反対の立場なら、私も夫に離婚届を突きつけていると思うもん。
いやぁ、凄いお話でした。でもそんな凄いお話を吉永小百合さんと佐藤浩市さんが演じていて、若い頃をのんさんと工藤阿須加さんが演じているので、綺麗で清々しくて素敵な夫婦にしか見えませんでした。良く考えると不思議な夫婦なんだけど、演じる人によって、こんなにも綺麗になるんだねー。(笑)
息子役を若葉さんが演じていて良かったです。凄く彼の気持ちが解って、彼が両親に文句を言う事によって、観ているこちらが、やっぱりこの夫婦おかしいよなぁと改めて気が付くという事になるんです。何かおかしいと思いながらも、つい綺麗だからいいのかなぁと流してしまいそうになることを、しっかりと真一郎がいう事によって、問題が着地するという感じがして良かったです。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。良い映画なのですが、若い人向けではないです。人生を過ごしてきた人が観ると理解出来るし感動もすると思うけど、経験が少ないと人の気持ちを解らない事とか夫婦の関係とか、何となく不公平に思って共感出来ない気がします。映画としてはよく出来ているので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
「てっぺんの向こうにあなたがいる」










