火喰鳥を喰う 横溝正史ミステリ&ホラー大賞 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「火喰鳥を、喰う」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

信州のとある村に暮らす久喜雄司と夕里子の夫婦のもとに、謎めいた日記が届く。それは雄司の祖父の兄で、太平洋戦争末期に戦死したとされる久喜貞市の遺品だった。日記には最後のページには「ヒクイドリ、クイタイ」という文字がつづられていた。その日を境に、不可解な出来事が起こり始める。

というお話しです。

 

 

信州で暮らす久喜雄司と夕里子の夫婦の家で奇怪な事が起きる。家の墓石の久喜貞一の名前が削られて消されていたのだ。貞一は太平洋戦争時に南方の島で亡くなった雄司の祖父の兄の名だった。警察に相談し、犯人を捕まえてくれるように頼む二人。

そんな事件が起こった直後、東京の記者からの連絡で、戦死した久喜貞一の日記が見つかり現地人から預かったというのだ。何か因縁でもあるようで気味が悪いが、とりあえず日記を記者から受け取ることに。



 

祖父の久喜保、雄司の母・信子、雄司、夕里子、夕里子の弟・亮の家族5人と、記者の与沢、玄田の2人が立会い日記を読んでいく。すると何故か最後の白紙ページに「ヒクイドリ クウ ビミナリ」という文字が現れる。

その日を境に祖父の失踪など、幸せな夫婦の周辺で不可解な出来事が起こり始める。夕里子は大学時代に知り合った超常現象専門家・北斗総一郎に連絡を取り、日記による怪現象を解明しようと動き出す。しかし北斗は夕里子の元彼で夕里子に今も執着している恐ろしい男だった。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画は第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した作品の映画化です。ホラー映画なんだろうけど、怖さは無いんですよ。ただ不気味な雰囲気が漂うという感じですかね。貞一という戦死したとされる祖父の兄の日記が見つかり、おかしなことが続いて起こるというお話なんです。

 

そこから展開していくのですが、まぁ、太平洋戦争の南方の島といえば、こういうことが沢山あったので、日記に書かれている内容はそんなに恐ろしい事でも何でもありません。敵に追われ森の中を逃げ回り続ければ食料に困りますよね。火喰鳥というのはたとえで、それこそ戦死していく仲間を食べることになったりは「野火」でも描かれていました。

 

 

なので、火喰鳥を喰うという部分は恐ろしい話だというだけで、呪いも何もありません。戦争はそんな酷い状況を生むのであって、起こしてはいけないという教訓です。人間が人間で無くなるのですから。では、何が怖いのかというと、この貞一さんの日記が見つかり、彼が人を食べてでも生きたいという生への執着を利用して、ある人物が自分の欲望を叶えようとするお話です。

 

生きている人間が怖いというホラーなので、貞子やら加耶子の怖さとは全く違い、あの怖さはありません。どちらかというと、ダークファンタジー&ミステリーという感じですかね。出てくる誰もが怪しくて、不気味なんです。そして、どんどん新しいキャラクターが後から後から出てきます。

 

 

原作もこういう展開なのかしら。これだけバンバン新しいキャラが出てきて展開していくと、元にいたキャラクターはどこまでが実在していてどこまでがいないのか、よく解らなくなってしまいました。最終的に誰がどうなったのかは描かれますが、全員が描かれる訳では無いので、あの人どうしちゃったんだろうな~と何となく考えてしまいました。

 

面白い内容だとは思います。今までこういう系のホラーは無かったので良いとは思うのですが、描き方がもう少し何とかならなかったのかなぁ。本で読むのと、映像で観るのでは感覚が違うので、解りやすい展開にしないと観客が付いてこれないんです。

 

 

映画では貞一さんが悪魔のように描かれていくのですが、戦争に行かれた方々は当たり前のように悲惨な状況で生き続け、生きることへの執着を持っていたはずです。生きて帰りたいと思うのは当たり前のことですし、日記に火喰鳥を食べてでも生き延びたいと書くのは当たり前なんです。日本に帰りたかったんですから。

 

そんな戦争被害者の方の執着を使って悪いことをしようとする悪魔のような人間もいるというのが怖いんです。なので、私は貞一さんの描き方には不満を持ちました。不気味に写真が笑うとか、そんなこと貞一さんがする訳が無い。家族の元に帰りたかっただけなんです。

 

 

そういうミスリードな部分が嫌でした。あくまで貞一さんは戦争で苦しんで帰りたいと願っていた普通の兵士の一人として描いてくれていれば良かったんじゃないかな。それでも帰れなかったから、その執着が呪いのようになってしまったけど、本人の望んでいたことではないと描いてくれたら、また違った感動も生まれたんじゃないかと思いました。

 

水上さんは良かったです。ぶっきらぼうなところが良い人という感じでした。山下さんはとても綺麗な方なんだけど表情が乏しくて少し残念でした。夕里子はあまり感情を出さない役だからそうなったのかな。北斗役の宮館さんはあまり観たことが無い方ですが、セリフ回しが独特で棒読みに聞こえてしまい、なんだか変な感じでした。水上さんは上手いのでバランスが悪い気がしました。

 

 

私はこの映画、お薦めしたいと思います。但し、万人向けかというと賛否があると思いました。歴史的な戦争映画などをよく観ている方だと太平洋戦争時の悲惨さを知っているので、貞一さんが特別に生に執着している人物とは思わないでしょう。そういう方なら、今生きている人間が怖いのだと理解出来て、この映画の怖さも解るのですが、そうでなく大伯父が呪っていると思ってしまうと辻褄が合わなくなるので難しいです。でもミステリー&ダークファンタジーと思えば楽しめます。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「火喰鳥を、喰う」