「ベートーヴェン捏造」
を観てきました。
ストーリーは、
難聴というハンディキャップを抱えながらも、数々の歴史的名曲を遺した天才音楽家ベートーヴェン。しかし実際のベートーヴェンは下品で小汚いおじさんだった。ベートーヴェンを熱烈に敬愛するシンドラーは、彼の死後、そのイメージを“聖なる天才音楽家”へと仕立て上げる。
というお話です。
放課後、ある中学校で忘れ物をした生徒が音楽室を訪ねると、そこでは音楽教師がまったりとピアノを弾いていた。入ってきた生徒に話しかけ、ピアノを聴いていくかと話しかけコーヒーを入れ、そしてベートーベンという人物の解説を始める。
耳が聞こえないという難病に打ち克ち、歴史に刻まれる数多くの名曲を遺した、聖なる孤高の天才・ベートーヴェン。しかし、実際の彼は下品で小汚いおじさんだった!?世の中に伝わる崇高なイメージを“捏造”したのは、彼の忠実なる秘書・シンドラー。
シンドラーは音楽大学を卒業し、しがない音楽家をしていたが、ある時ベートーヴェンと出会い秘書として雇われる。憧れのベートーヴェンの秘書になれたシンドラーは何から何まで必死でベートーヴェンの為に働いていた。何故なら、彼は癇癪持ちで性格の悪い下品で小汚いおっさんだったからだ。そのままの姿を晒したのでは名声に傷がつく。
そして彼の死後、見事“下品で小汚いおじさん”から“聖なる天才音楽家”に仕立て上げていく。しかし、そんなシンドラーの姿は周囲に波紋を呼び、「我こそが真実のベートーヴェンを知っている」、という男たちの熾烈な情報戦が勃発。
さらにはシンドラーの嘘に気づき始めた若きジャーナリスト・セイヤーも現れ、真実を追求しようとする。シンドラーはどうやって真実を嘘で塗り替えたのか? 果たしてその嘘はバレるのかバレないのか。後は、映画を観てくださいね。
面白い映画だと思うし、実際にこういう話が歴史上にあったんだということに驚きました。癇癪持ちで下品で小汚いオッサンだという話なんですが、まぁ、誰でもがオッサンになる訳だし、癇癪持ちというのは気に入らないことがあるから癇癪を起すんでしょ。それって誰でも年を取ればそうなるんじゃないの?癇癪持ちは性格の問題だからそんなに隠す必要もないような気がするんですけどね。
中学校の音楽室で黒田先生がピアノを弾いており野村君が筆箱を取りに来て、そこでベートーヴェンの話になるんです。なので、この映画に描かれるベートーヴェンの姿が現実だと言っているのではなく、二人の会話の中で黒田先生が話したベートーヴェンの姿がこの映画の話なんです。歴史とも違う、現実とも違う黒田先生の思ったベートーヴェンがこの映画のベートーヴェンってことです。
シンドラーがベートーヴェンと出会い、秘書になったことでそれまでのベートーヴェン像が変わって行きます。周りのみんなは本当のベートーヴェンを知っていますが、逢ったことも無い人は彼を書いた本を信じますよね。シンドラーは理想とするベートーヴェンを本に書いていくんです。通常なら怒られますが、本人が死んでしまってからなら解りません。ズルいでしょ。
もちろん彼以外の人も本当のベートーヴェンを知っているのですからシンドラーの本は嘘ばかりだというのです。でも本って書いたもん勝ちでしょ。当時はベートーヴェンを知っている人が色々な本を書いて論争になったんだと思うけど、何故かシンドラーは勝ち残るんですよねぇ。その理由は、映画で確認してください。
このシンドラー、ベートーヴェンの秘書だったというけど、大体2年くらいしかやってないらしいんです。まるで彼が死ぬまでずっと面倒を見ていたと言わんばかりですが、あまりにも面倒臭い性格なのでベートーヴェンも嫌になっちゃって直ぐに解雇したんです。なのに誰よりもベートーヴェンを知っていると豪語して彼の本をずっと書いていくんです。
本当は秘書のホルツがベートーヴェンの自伝を書くはずだったようなんだけど、シンドラーが勝手に先に出版したようなんです。マジでシンドラーはベートーヴェンおたくで、まるで信者のようでした。ベートーヴェンの秘書をしている時、どこまでも彼の威厳を保とうとするのでベートーヴェン自身もシンドラーがウザくなっていくんです。いくら秘書でも口出しして良い境界線のようなところってあるでしょ。それを平気で飛び越えてくるから面倒になるよね。
何故、シンドラーがそんなにベートーヴェンにこだわったのかは解りません。ただファンだった推しだったとは思うのですが、本を出版してそんなに儲かったとは思えないし、彼の名誉のために嘘まででっち上げて、その人気を不動のものにしたのは何故なのか。私は、シンドラーは本当のベートーヴェンを自分だけのモノにしたかったのかなと思いました。
誰もがシンドラーが考えた理想の音楽家ベートーヴェンを本物だと思っていて、実際のベートーヴェンを知っているのは自分だけだと思いたかったのかな。うーん、キモい。でもその気持ち、ちょっと解るような気がします。推しを自分だけのモノにしたいって誰でもあるでしょ。まぁ、そう思っても実行する人はいないと思うけどね。
誰がどんな本を書こうと、ベートーヴェンの曲は彼自身が書いた曲だし、その才能は揺るぎないものです。性格がどうとか容姿がどうとか、小汚いオッサンだろうが音楽は変わりません。素晴らしい交響曲は他の誰にも書けないんです。なのでシンドラーが嘘をついてまで、後世に良い人だと知らしめる必要なんて無かったんです。それでも、嘘の本なんて誰も喜ばないけど、それでもシンドラーはベートーヴェンに良い人でいて欲しかったんでしょう。それが推しってもんなんでしょうね。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。コメディ映画なのですが、思っていたよりも真剣にベートーヴェンについて描いていて楽しめました。でも、もう少し内容が軽い感じだと良かったな。思っていたよりもシンドラーが暗いおたくだったので、ちょっとゾッとしてしまいました。面白かったんですけどね。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ベートーヴェン捏造」