「ブラックドッグ」
を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
2008年、北京オリンピック前の中国。過失致死で服役していたランは仮出所をし、ゴビ砂漠の端に位置するさびれた街に帰郷する。廃墟が目立つ街には、捨てられた犬たちが野犬化し群れをなしていた。地元の野犬狩り隊で働くことになったランは、ある日、単独行動している黒い犬と出会う。ランと黒犬には奇妙な絆が芽生えはじめる。
というお話です。
2008年、北京オリンピック開催間近の中国。ある理由で友人を誤って死なせたランは、仮出所でゴビ砂漠の端にある故郷に戻って来る。区画整理で人の流出が止まらず廃墟が目立つ街は、捨てられた犬たちが野生化して群れとなっていた。
実家はもぬけの殻で知り合いに聞くと、父親は動物園に住み込んで世話をしているという。ランが戻ったことを知った被害者の親族からは「絶対に許さない」と執拗に付きまとわれる。そんなランを気に掛ける警官が、街で野犬対策の捕獲隊が結成されるのでそれに参加しろと言われる。
捕獲隊に参加することにして給料を貰えるようになったランだが、犬を捕まえることに違和感がありどうしても上手く行かない。結局、運搬係とされてしまう。すると犬の中に一匹で行動している黒い犬に気が付く。決して捕まらず賞金を懸けられた黒い犬とランの間に、いつしか奇妙な友情が芽生えていく。
ランは犬の隠れ家を探り犬を追い続け、とうとう触れることに成功。家に連れて帰り、黒い犬を飼い犬として登録する。バイクにサイドカーを取り付け、犬と一緒にバイクで出かけたりという日々を過ごすが、被害者親族からの嫌がらせは続き…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、凄く良かった。やはり動物が出てくるとどうしても肩入れしてしまい、つい動物の気持ちまで考えてしまうので目が離せなくなってしまいます。特に、このランと黒犬の関係は素晴らしいなと思ってしまいました。どうやって訓練したのかしら。ちゃんと最初の頃は敵対しているように見えていて、段々と距離が近づき、信頼を持ち始めるという関係が描かれていました。
ランという青年は元々歌手をやっていて、大人気だったらしいんです。でもある時、コンサートのお金を持ち逃げした友人を追いかけて、殺す気なんて無かったのに友人が崖から落ちて死んでしまうんです。詳細は描かれませんでしたが、ランと被害者家族の話ではそのような感じでした。なのでランが恨まれる筋合いは無いと思うんです。
でも被害者家族は納得いきませんよね。自分の甥っ子が悪いと解っていても、誰かを憎まなきゃやっていられないのでランを憎んでいたと思うんです。ランは刑期を終えたというか、仮出所の書類を持っていたので、模範囚で早く出て来たんじゃないかな。だから街から出ないようにと警察の知り合いが言っていたんだと思います。
元々、ランは悪い人間ではなく、どちらかというと歌手もやっていて有名だったので、周りの人たちも可哀想だったなと思っていたんじゃないかな。そんな事件が無ければ順風満帆で、オリンピックに合わせて北京などに呼ばれていたかもしれない。なのに事件に遭ってしまったせいでこんなことになって、街で燻ぶらなければいけなくなってしまったんです。
そんな事情もあり、周りの人々はどちらかというとランに好意的なのですが、被害者家族のこともあり、そう簡単にはいきません。ランはそんな状況も考えて、何も言い訳はせずにほとんど言葉を話しません。彼が会話をするのは黒犬だけなんです。言葉じゃなくて態度や口笛で会話をしていました。
黒犬もランを信頼し、彼の言うことはよく聞いていました。時には一緒にシャワーを浴び、一緒にベッドで寝転んで、その時は幸せそうに見えました。周りの人間と群れることが出来ないランと、野良犬たちと群れることをしない黒犬。とても似ていたんです。
その街は区画整理の為に沢山の人が流出してしまい、廃屋が広がっています。でも区画整理するのですから、直ぐに沢山の工事業者が入ってきて新居を立て直し、新しい人、新しい街が出来上がるのでしょう。今までの暗く汚い街は一掃され、野良犬たちもいなくなります。誰もがそれを解っているのでどこか寂しげな空気が漂っているんです。きっと居場所が無くなるんだと思っているんじゃないかな。
時代の変化についていけない人々の何とも言えない気持ちが描かれていて、世界はそんなんでいいのかなぁと考えてしまいました。何でも新しくすればよいという考えは間違っているような気がします。元々ある人々の繋がりを全て断ち切ってしまう、国を挙げての改革って正しいのかなと感じました。中国はそれでいいの?2008年頃に無理やりな事をしたのが、今の経済崩壊につながってきているのかなと思いました。
そんな未来を2008年に感じたのかは解りませんが、ランは街の状況を俯瞰して見ていて、自らの道を模索していきます。街のこと、家族のこと、そして自分の未来を考えたのだと思いました。黒犬との友情が、彼の沈んでいた心を解放させたんじゃないかと思いました。
黒犬、可愛いんですよ。雑種かなとは思うけどグレーハウンドっぽいんです。そして凄く賢いんです。ビックリするほど人間の言葉がよく解っていて。ビシッとお座りしたり凄いのよ。きっとドッグトレーナーの方がしっかり躾けたんだと思うけど、こんなに解ってくれていたら可愛いよなぁ。アフタートークでグァン・フー監督が、このシンちゃんという犬を主演のエディ・ポンさんが引き取って飼っていると教えてくださいました。映画の中で息がぴったりでしたからね。
この映画、本当に素晴らしい内容でした。カンヌ国際映画祭のある視点部門でグランプリを獲得し、犬のシンちゃんもカンヌでドッグ賞をいただいたようですよ。ま、納得ですね。ここまで演技をしてくれたなら、犬でも賞をあげなくちゃ。
私はこの映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。私は大好きな映画の1本に入れたいと思いました。これは誰が観ても良い映画だなと思うだろうし、特にペットを飼っていたりする方には犬の気持ちが伝わってきて、何とも切ない気持ちになると思います。シンちゃん可愛いです。主演のエディ・ポンさんも素敵な方です。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ブラックドッグ」