「フォーチュンクッキー」
を観てきました。最速試写会(Fan's Voice枠)が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
カリフォルニア州フリーモントのフォーチュンクッキー工場に勤めるドニヤは、アパートと職場を往復するだけの単調な日々を送っていた。彼女は母国アフガンでの経験から不眠症に悩まされており、軍のPTSDのカウンセリングを受けていた。ある日、ドニヤはフォーチュンクッキーに入れるメッセージに自分の電話番号を書いたメッセージを紛れ込ませる。やがて彼女のもとに、ある男性から会いたいというメッセージが届く。
というお話です。
カリフォルニア州フリーモントにあるフォーチュンクッキー工場で働くドニヤは、アパートと工場を往復する単調な生活を送っている。彼女は母国アフガニスタンの米軍基地で通訳として働いていたが、タリバンが復権したことから母国にいられなくなり内戦の中、運よく米軍輸送機に乗り込むことが出来て助かったのだった。
友人や同僚などで亡くなった人もおり、基地での恐ろしい経験から、慢性的な不眠症に悩まされている。そのため、軍のPTSDのカウンセリングを受けていて、今回も睡眠薬を貰って帰ってきたのだが、薬を飲んでも眠れる気配はない。
そんな彼女の姿を見て、工場の社長がフォーチュンクッキーに入れるメッセージを書いて見るかと提案する。メッセージは良すぎることも無く悪すぎることも無い言葉にすること。「美徳は中庸なり」と言われます。その言葉を守り、言葉を紡ぐドニヤ。
そんな中、寂しさに耐えられなくなり、つい、新たな出会いを求めて、その中の一つに自分の電話番号を書いたものをこっそり紛れ込ませる。すると間もなく1人の男性?から、会いたいとメッセージが届き、ドニヤは期待しながら約束場所へ車を走らせる。後は、映画を観てくださいね。
この映画、設定は現代なんだけど、どこか懐かしいようなそれでいて寂しいような不思議な感じがする映画でした。モノクロだったからなのかな。それだけではないと思うけど、でも何となく主人公のドニヤの寂しさが伝わってきました。
ドニヤはアフガニスタンで米軍の通訳として働いていたので、タリバンが復権した時点で、敵の手伝いをしたという事になり、追われることになるんです。結局、家族とも一緒にいられなくなり、一人アメリカに逃げて来たんです。一緒に働いていた通訳で殺された人もいたようで、彼女の心の中には今も苦しみが続いているのだと思います。
カウンセリングではそういう心の傷を癒すために会話をするのですが、ドニヤはいつも無表情で感情を表に出さないんです。あまりにも酷い戦場などを見てしまうと、感情が追いつかなくなって表現が出来なくなることもあるらしく、もしかしたらドニヤはそんな状態もあるのかもしれません。
一度だけドニヤが感情をむき出しにするときがあるんです。同じようにアフガンから逃げて来た家族だと思うのですが、父親が傲慢で妻をモノのように扱う場面があり、それを見ていたドニヤがその時は見逃すのですが、やっぱり我慢が出来ない!と言わんばかりに、その家族の家に向かって怒るんです。
タリバンの女性蔑視思想から逃げて来たのに、アメリカでも女性蔑視をしている男に対して怒るんです。当たり前よね。イスラム原理主義をやりたいならアフガニスタンに一人で買えればよいのにね。アメリカでは男女平等なんですから。
アフガンから逃げてきてフリーモントに住んでいるドニヤですが、仕事はチャイナタウンのフォーチュンクッキー工場に勤めているんです。この工場、50年くらい前のままなんじゃないかと思うほど古い機械を使ってクッキーを作っており、中に入れるメッセージをPCで作っているのですが、このPC、まだDOSなんじゃないかな。それともワープロなのかな。それで文字を打って、印刷して、カッターで細く切るんですよ。
工場の社長は中国人で一見優しそうに見えるんだけど酷くケチなんだろうな。その妻はもっとケチで性格も酷く悪いんです。今、日本にくる中国人の悪行がニュースになるけど、この映画を観ると、どの国でも中国人はケチでイジワルという性格が悪い人たちだと認識されているようですね。工場でのことも、その後の意地悪な仕打ちも、中国人だからねーって感じで描かれていました。
ドニヤはそんな工場で働きたくないんだろうけど、でも自分のような亡命者に仕事も無いし、このフリーモントから離れたらアフガン人はほとんどいないので寂しいから離れられないんだと思うんですよね。でも、どこかで出会いがあれば、寂しくなくなるのかもって思って、メッセージに電話番号を入れたんですけど、実はそれがある人に渡ってしまい、色々と起こってしまうんです。
酷い状況が起こりもするけれど、でも、何か行動をすればそれなりの出会いもあるし、状況は変わっていきますよね。雨降って地固まるって感じかしら。あ、少しネタバレになっちゃうかな。これ以上は止めておきます。でも悲しい映画ではないので、楽しみにしてくださいね。
ほのぼのと見えるんだけど、実は政治の事、難民のことなど、人間の生き方についてなど、色々な事が深く描かれていて、思い出せば出すほど、書くことが増えて行っちゃうような映画なんです。きっと、2度目を観ると、もっと色々と見つけられるんじゃないかな。
思ったんだけど、自分の生まれた国から出なくてはいけなくなるなんて、可哀そうだなと思いました。出来れば自分の生まれた国で生きたいだろうけど、一度裏切ってしまったり、宗教が対立したりしてしまったら国に残れないんですよね。残ったら拷問されて殺されたりするのかもしれない。本当に哀しいことです。
この映画、雰囲気がジム・ジャームッシュ監督やアキ・カウリスマキ監督の流れをくむ感じでした。なんていうか、淡々とした日常を描きながら、その奥に潜む哀しみや苦しみ、そして時々訪れるしあわせを描いていて、最後にホッとするような映画でした。
私はこの映画、お薦めしたいと思います。但し、万人向けではありません。単館系の映画が好きな方には好まれると思います。でも、王道をいくアクションなどの娯楽作品が好きな方には、ちょっと物足りないかな。深読みしないと良さが解らない作品です。私には素敵な映画でしたよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「フォーチュンクッキー」