「We Live in Time この時を生きて」
を観てきました。
ストーリーは、
シェフであるアルムートと、離婚して失意の底にいたトビアスは、運命的な出会いを果たし恋に落ちる。やがて一緒に暮らしはじめ、娘が生まれ、家族としての絆を深めていく。そんなある日、自分の余命がわずかであることを知ったアルムートは、トビアスに驚きの決意を告げる。
というお話です。
トビアスは離婚の手続きで落ち込んでいるところを車に轢かれます。病院で目を覚ますとアルムートという女性が傍で見守っており、自分が轢いてしまったことを詫びて、自分がコックをしているレストランに、ぜひご夫婦でどうぞと誘われる。数日後、トビアスはアルムートのレストランを訪ね、一人で来たことを告げて、アルムートに実は離婚したことを告白する。
お互いに何か感じていた二人はそのままアルムートの家に転がり込み、翌朝アルムートは朝食用の卵の割り方をトビアスに教えて一緒に暮らし始めます。しばらく付き合っていた二人ですが、アルムートが子供を持つことは選択肢にないと言い、トビアスはアルムートと家族を持ちたいと言ったことで決裂し、トビアスは家を出ていきます。
彼女を忘れられないトビアスはもう一度アルムートの家を訪ね、もう一度告白をして今の自分たちも大切だけど未来も君と一緒に見たいといい、お互いの気持ちを確認し、また一緒に暮らすことになります。
ある日、腹痛を訴えたアルムートは病院で検査をし、卵巣がんが見つかります。治療をしますが卵巣の全摘出は止めて、半分は残して子供の可能性を残します。卵巣がん治療後に子供を持つための治療を重ね、とうとう妊娠!大喜びの二人。大晦日に陣痛を感じたアルムートは車で渋滞にハマってしまい、途中のガソリンスタンドのトイレで女児を出産します。
念願の子どもを授かった二人ですが、アルムートのガンが再発します。娘が大きくなり、アルムートもコックとして頂点を目指しつつある時のガン再発。トビアスは治療に専念させたいと思いますが、彼女の考えは…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、凄く良かったです。私は何度も泣いてしまいました。この映画、時間通りに話が進んでいく訳では無く、過去に行ったり未来に行ったり、行ったり来たりしながら進んでいきます。出会いの場面は最初にありますが、そこから突然に子供がいる未来に行ったりと、一瞬、あれ?と思いますが、そのまま進むと、全てが繋がり始めます。
二人は一般的な普通のカップルです。このお話は、誰もが経験するかもしれない出来事を描いていて、たまたま起こるか起こらないかの違いだけなんです。子どもを産むべきか産まないべきか、仕事を優先するのか、病気になったら治療に専念すべきか、好きな事を諦めるべきなのか、人生では選択すべき時が何度もめぐってきますよね。その時々で考えて決定していくのですが、決められるときと決められないとき、どちらもあると思います。そんな選択の軌跡が描かれていると思いました。
私はアルムートの気持ちに寄ってしまいましたが、観終わってからトビアスの気持ちも考えてみたら、彼は本当に辛い選択をしていたんですよね。愛する人を助けたいけど彼女の気持ちも痛いほど理解出来ていて、娘のことも考えてアルムートに寄り添っていくという、一番辛い選択だったと思います。
アルムートは本当に全力で生き切った女性だと思いました。子どもの頃は父親が望んでいたスケート選手として頑張っていて、父親のためにトップになったのに父親の死によって、全て辞めてしまうんです。そして自分の望みであるコックの道を歩き、またトップに上り詰めてきたのに病気になってしまう。運命は残酷だと思いました。
そこで彼女は自分の最高な生き方を娘に見せようと思ったんじゃないかな。病院のベッドで命を少しでも長引かせるよりも、彼女の好きな場所で好きな景色を、愛する人と一緒に分かち合って喜んで、覚えていて貰おうと思ったんだと思います。私ももし同じ立場ならそうすると思います。ま、彼女のような才能は私には無いけど、もし若くして別れなければならないと解ったら、子どもにも愛する人にも、自分の精一杯の姿を憶えていて欲しい。
そんなアルムートの気持ちが痛いほど伝わってきて、なんて強い人なんだろうと感動しました。でも、これは誰にでも起こる事です。明日は我が身なんですよね。人間はいつどうなるか判らない。交通事故で怪我をしたけど運命の人と出会えることもあるし、しあわせの絶頂にいるのに病気が襲ってくることもある。かと思えば、ガソリンスタンドで赤ちゃんを産んだりと、人生は何があるか判らない。だからこそ、いつも精一杯、誠実に生きていくことが大切なんだろうなと思いました。
この誠実ということが一番大切なのかなと思うのですが、聖人でいろとは誰も言わないけど、誠実でというのは自分に嘘をつかないで生きるという事だと思うんです。嘘も方便があるので人を傷つけないための嘘はあると思うんです。でもね、自分に嘘をついたら悔いが残るでしょ。
犯罪をしてないと言ったとしても、自分は解ってますよね。どこまでも自分を騙してその場逃れをしていたら、最後にはそのせいで不幸になったと思うじゃないですか。自分のせいで死ぬのかと思うより、嘘は無かったけどここまでか、ちょっと残念だけど仕方ないねって最後に思えれば、それで幸せだと思うんですよね。
アルムートはそんな風に見えたんです。そして彼女を守り尊重していたトビアスは、素晴らしかったと思います。普通ならコンテストなんてやめさせて入院させただろうけど、彼女の気持ちを優先した彼は、心から彼女を愛していたし大切に思っていたのでしょうね。結婚式の招待状を捨てている姿は泣けました。自分が彼女にしてあげられることはこれじゃないと悟った姿は何とも言えなかったです。
子どものことも、産む選択肢はないと言っていたアルムートがトビアスとの子供を望んだのは、彼の愛を信じられたからだと思うし、きっと彼との生活の中で子どもを持つ未来が見えたのだろうと思いました。
少子化とか騒いでいるけど、好きな人との子どもを持つ未来が見えれば誰だって子どもを産みますよ。未来が見えないから子どもを持たないんでしょ。給料が上がって、治安が良くなって、経済も上向きだと認識出来れば子どもは増えますよ。不良外国人のせいで治安が悪くなり、給料が上がらないんじゃ子どもは何をしても増えません。政治が悪いんです。
この映画を観て、そんな事も考えてしまいました。いい映画だったなぁ。私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。私は感動でしたが、この映画の構成だと上手く整理が出来ない人もいるかもしれないので、万人にお薦めとは言えないかな。でもとても良い映画です。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「We Live in Time この時を生きて」