「金子差入店」
を観てきました。
ストーリーは、
金子真司は刑務所や拘置所に収容された人への差し入れを代行する「差入屋」を一家で営んでいる。ある日、息子の幼なじみの女の子が殺害されるという凄惨な事件が発生する。そして犯人の母親が「差し入れをしたい」と店を訪れる。差入屋としての仕事をまっとうし犯人と向き合うが、金子は疑問と怒りが日に日に募っていく。
というお話です。
刑務所に女性が面会に来ている。収監されている金子はしばらく面会に来なかった女に悪態をつき、女は耐えられずに席を立つと金子がお腹を見て「生まれたのか!」と叫ぶ。彼女は子供が生まれたことを伝えに来たのだが帰ってしまう。うな垂れた金子は自責の念に駆られ、心を入れ替えようと考える。
しばらくして金子真司は妻の美和子と差入店を営んでいる。差入店とは刑務所や拘置所への差し入れを代行する店のことだ。金子は伯父の星田から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。
ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人の小島の母親から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は差入屋としての仕事を淡々とこなそうとするが、常軌を逸した小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。さらに、小島の母親から息子には話し相手が必要だと思うと再度の差入を頼まれた金子は、小島と話せば話すほど「なぜ、何のために殺したのか」という疑問と怒りに身を焼かれる。
そんな時、毎日にように拘置所を訪れる女子高生と出会う金子。彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を強く求めていた。2つの事件と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、家族の絆を揺るがしていく。後は、映画を観てくださいね。
この映画、思っていたよりも深い内容で感動作になっていました。差入店って聞いた事はありましたが、差入れるモノにこんなに規制があり、専門店に頼まないと難しいということを初めて知りました。ほとんど何でも差し入れられるのかと思っていました。こんなに規制があるでは専門店に頼んだ方がよいですね。
主人公の金子は自分も刑務所に3~4年ほど入っていて、出所してから差入店を継いだようでした。昔は荒っぽくて暴行で刑務所に入ったようですが、現在の金子は子供も出来たからなのか、とても穏やかな人物になっていました。妻と子供と静かに暮らしています。
そんな金子の息子・和真の幼馴染が塾に行って行方不明になり、遺体で見つかるという事件が起こります。犯人は直ぐに捕まりましたが面識は無く、無差別殺人だったようです。なんで花梨ちゃんが殺されなければならなかったのか、金子はどうしても納得が出来ません。運命と言ってしまえばそれまでですが、犯人の小島に差入を頼まれ会話を交わしてからは、もっと納得が出来なくなっていきます。
そりゃ、殺人犯の気持ちなんて解りっこないけど、でも小島の母親の態度や周囲からの悪意、報道関係者などを見て、人間が追い詰められていく気持ちを感じ取っていくんです。そしてもう一つの事件の話を弁護士から聞きながら、人間社会の理不尽さや、この世では簡単に解決出来ない人間の業を感じ取っていくんです。
花梨ちゃんが殺され、和真の小学校では悪意が広がって行ったんじゃないかな。和真の家が差入屋で殺人犯にも差入を持って行くのではという憶測から裏切り者のように思われ、その上金子の前科の事も調べられたようで、和真がいじめに遭い始めるんです。金子は怒って学校に押し入りますが、もちろん問題になってしまいます。いじめられた親が怒るのは当たり前ですが、押し入っちゃだめよ。立川小学校の事件と一緒になっちゃう。
このいじめ、酷いと思いました。和真のノートに”殺人犯”とたくさん書き入れてあるんです。こんな証拠があるのだからいじめと学校は認定しないと。これをいじめじゃなくてふざけていただけというのは間違いです。これ犯罪ですからね。人のモノ=ノートを使えなくしているのですから器物破損です。もし怪我でもしていれば暴行です。学校もしっかりと対応すべきです。
でも、その前にクラスメイトが殺されたというのは子供たちに酷い心の傷とトラウマを与えたと思います。その恐怖はストレスになり残ってしまいます。カウンセリングなどで対処をするか、親がしっかりと説明をして納得させないと壊れてしまうかもしれません。情報が多くなったことは良い事ばかりではないんです。
花梨ちゃんの事件とは別に、もう一つ事件が出てきます。それについてはネタバレになるので書きませんが、事件が起きる背景には色々な事情があり、表から見えるだけじゃないことがあるんだという事が描かれます。その事件に触れ金子は、事件の犯人は最初から悪人で残酷な人間な訳では無く、何か理由があって事件に行きついているのだという事を知っていきます。
花梨ちゃん事件の犯人の小島も、母親がこんな人間じゃなかったら事件は起こしていなかったかもしれないと想像が出来てくるんです。人間ってちゃんと愛されて育たないと壊れていくんですよ。自分だけを愛している人間が子供を育ててはダメなんです。そんな事が良く描かれていました。
そして社会の冷たさや残酷さもよく描かれていたと思います。最後の最後まで金子差入店の植木鉢の花が壊されているんです。どこまでも人の悪意は消えることが無いんだと訴えているようでした。何でそこまで人に悪意をぶつけるのか、私には不思議ですが、こういう人間っているんですよ。いつまでも文句を言って、誰かにそれをぶつけている人。自分の中で処理出来ないというのは知能が低いのだと思いますが哀れですよね。そういう人はいつまでもしあわせな気持ちが味わえないという事です。
とても考えさせられる映画で、良い作品でした。金子を演じている丸山さん、アイドルなのにタイプじゃないなぁ~と感じていて好きでは無かったのですが、今回、初めて演技を見て、上手いなぁと思いました。凄く好感が持てました。年齢を見たら、もういいオッサンなんですね。うん、いいオッサンを演じていました。こういう普通の人の役が出来るって、素晴らしいと思います。調べたら、今までも随分とドラマや舞台に出られているんですね。ごめんなさい、おみそれしました。”ワイルド7”に出てましたっけ?(笑)これからも良い作品に出て欲しいです。
殺人犯・小島の役を北村さんが演じていて、正義の味方も極悪人も演じられる凄い役者になってきたなと思いました。朝ドラに出ているようなので、ここからもしかしたら大河ドラマに飛ぶこともあるかもしれません。楽しみです。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。これは面白くて良い映画だと思いました。人間の汚い部分も美しい部分も描かれていて、人生はそう簡単にはいかないけど、大切な人を愛して守ることによって、しあわせを感じていけるのかもしれないと思わせてくれました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「金子差入店」