「けものがいる」獣とは何なのか。感情があるからこそ恐怖を感じ身を守ることが出来るのではないか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「けものがいる」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

2044年、AI中心の社会において人間の感情は不要とされ、重要な仕事を得るためには感情を消去しなければならなかった。ガブリエルは感情の消去に疑問を抱きながらも、仕事に就くため消去を決意する。彼女は、前世のトラウマを形成した1910年と2014年へさかのぼり、それぞれの時代でルイという青年に出会うが。

というお話です。

 

 

AIが国家の社会システム全般を管理し、人間の感情が不要と見なされている2044年のパリ。孤独な女性ガブリエルは有意義な職に就きたいと望んでいるが、それを叶えるにはDNAの浄化によって「感情の消去」をするセッションを受けなくてはならない。

 

人間らしい感情を失うことに恐れを感じながらも、AIの指導に従って1910年と2014年の前世へとさかのぼったガブリエルは、それぞれの時代でルイという青年と出会い、激しく惹かれ合っていく。しかしこの時空を超越したセッションは、ガブリエルの潜在意識に植えつけられたトラウマの恐怖と向き合う旅でもあった。

 

 

1910年、ガブリエルはピアニストで人形工場の夫を持つ女性であり、晩餐会でルイと出会う。二人は惹かれ合うがガブリエルは何かに怯えていた。パリが水に沈むという話があるが大した影響はないだろうと楽観視していたのだが。

 

2014年、ガブリエルはモデルの仕事をしながら金持ちの屋敷の留守番をするバイトもしていた。そんな彼女に近づく影が現れる。ルイはサンタバーバラの大学2年でガブリエルをストーキングしていた。ある目的のために。

 

はたして、3つの時代で転生を繰り返すガブリエルとルイの愛は成就するのか。そして過酷な宿命を背負ったガブリエルが、最後に突きあたる衝撃的な真実とは。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、「フランス映画祭 2024」で観たのですが、何となくぼやけた感じで理解していて、どうしてももう一度観たかったんです。そして今回、試写会で観せていただき、理解が出来ました。今回は結構、スッキリしたかな。うん、最後のQRコードの占い師のメッセージも解りました。

 

この映画は「ヘンリー・ジェームズ」の1903年原作「密林の獣」を原作に、大胆にアレンジした作品です。私は原作を読んでいませんが、試写会のアフタートークで大森先生(書評家翻訳家)がおっしゃるには、ぼんやりしていて何も起きない小説だとのこと。随分とアレンジしていたのだと思います。

 

2044年の未来。AIに依存している世界では人間の感情は不要とされて、「浄化」と呼ばれるDNA操作により”感情の消去”をした人間はより上級の職に就けるという社会になっています。モデルをしているガブリエルはもっと頭脳労働のような良い職に就きたいと思い、DNAの浄化を受けようか考えています。

 

 

友人たちはみんな受けて行政などの有意義な職に就いており、ガブリエルにも薦めてきます。でも、感情が無くなっているので、怒りも無いけど悲しみも喜びも無いんです。ある場面で飼い猫の首を絞めてゴキッという音がする場面がありました。表情は変わらないんです。感情が無いので愛情を感じず、邪魔になったのかもしれません。恐ろしいです。

 

そんな世界でガブリエルは浄化を受けるために”部屋”に入ります。そして彼女の転生の分岐点となる1910年と2014年の前世の記憶を辿ります。部屋には浴槽のようなモノが置いてあり、そこの液体にスーツを着て横たわると過去に意識を飛ばせるようでした。この描写はSFにはよくありますよね。

 

 

1910年のフランスでピアニストとして活躍しているガブリエル。夫も人形工場を経営しており裕福な家庭のようでした。そのガブリエルがルイと出会います。惹かれていきますがルイとの関係を深めることに恐怖を感じるガブリエル。何かが心にストッパーをかけているんです。そしてその恐怖は悲劇を予感していたのかもしれません。

 

2014年のロサンゼルスでモデルをしながら留守番のアルバイトもしています。そんな彼女をストーカーするルイ。この年にカリフォルニアで銃乱射事件があり、それをモデルにしているようでした。女性を目の敵にした22歳の学生が無差別殺人をしたようです。このルイもその類と一緒で女性に対しての恨みで美しいガブリエルを標的に選んだようでした。この時代のガブリエルも何かに怯えていて、目に見えない憎しみを恐れていたようでした。

 

 

どの時代のガブリエルも何かに怯えて過ごしていて、2044年の現代でもやはり怯えているんです。その恐怖は自分の心の中にあって、外敵ではないので消すことが出来ません。この恐怖を感情を消す浄化ということに対しても感じていて、受け入れることが出来ずに、人口の0.7%の浄化失敗になったんじゃないかな。

 

感情を消すという事は、自分もロボットになるという事でしょ。そんなの恐怖でしかないと思うけど、でも、現代だと感情を押し殺せない人って増えているようだから、良い仕事に就かせるには感情を消すという作業も必要なのかもしれませんね。でも、それなら人間じゃなく、何でもAIに頼んじゃうと一緒になると思いませんか?

 

 

感情があるからこそ人間なんじゃないの?情を感じると書くのが感情だから、人に対して優しく出来るのが人間なんだと思うんです。人だけじゃなく動物にも植物にも、何に対しても情を感じることが大切だし、それが必要ない仕事ならAIにやって貰えばいいんです。行政とか法律の仕事はAIに情報を入れ込んでやらせて、最後の最後で情を入れた判断をするのが人間であるべきでしょ。だから感情を無くすDNAの浄化なんて、やるべきじゃないんです。間違っていると思いました。

 

今回2度目の鑑賞で、より深く理解が出来ました。うん、凄いお話でした。どこまで行ってもガブリエルはルイと相容れることが出来ないし、何を信じて何を信じないのか、その判断の難しさと自分をどこまで信じるべきなのかを感じました。

 

 

そうそう、エンドロールをQRコードで観てねというメッセージが出るので、スマホで観てください。実はその中に2014年の占い師ジーナからのメッセージが入っています。彼女は2014年に既に未来を予測してあるメッセージをガブリエルに送っていたんです。内容は自分で確認してね。”241”がキーポイントです。

 

うーん、よく出来た話だった。1回観ただけでは理解が出来ていませんでした。2回目、面白かった。これ観れば観るほど味が出る作品なのかもしれません。スルメかっ!(笑)

 

先日、ジョージ・マッケイさんのゲイの作品「FEMME フェム」を観たところだったので、その変化が楽しめました。レア・セドゥさんは本当に美しく満足出来ました。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。但し、1回観ただけでは深く理解が出来ないかもしれません。私は2回目だったのでより深く理解が出来て楽しめましたが、もしかしたら1回目でもう嫌になる方もいるかもしれません。賛否が分かれる作品だと思います。150分くらいある作品なのでちょっと眠くなるかもしれませんが、それに耐えて観て欲しい。理解出来ると世界が広がります。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「けものがいる」