「HERE 時を越えて」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
地球に生物が誕生し、恐竜が駆け抜け、やがてその場所に家が建てられ、いくつもの家族が入居しては出ていく。1945年、戦地から帰還したアルと妻ローズがその家を購入し、息子リチャードが誕生する。そしてその家は、成長したリチャードが家族と住む家となっていく。その場所は人間関係を紡ぐ場所となる。
というお話です。
時は流れ、緑が芽吹き、オークの木が育ち、ハチドリが羽ばたき、先住民族の男女が出会う。さらに時を越えて、オークの木が伐採され、土地がならされ、1907年に一軒の家が建つ。そう、この物語の舞台となるのが、この家のリビングだ。
最初にこの家を買ったのは、ジョンとポーリーンの夫婦。やがて女の子が生まれるが、予期せぬ運命に見舞われ引っ越してゆく。次にレオとステラというアーティスティックなカップルが入居し、個性的なインテリアで部屋を生まれ変わらせる。約20年間、仲良く暮らした2人は、ある“発明”に成功し、新たな世界を求めて旅立ってゆく。
そして第2次世界大戦が終結を迎えようとしていた1945年、この物語の主人公となる男の両親が登場する。戦地から負傷して帰還したアルと妻のローズだ。ローズから妊娠したと知らされたアルは、予算を上回っていたが、思い切って家を購入する。やがて長男のリチャードが生まれ、続いて長女のエリザベス、次男のジミーが誕生する。
高校生になったリチャードは、絵描きになることを夢見ていた。そんな中、別の高校に通うマーガレットと出会い、2人は恋におちる。マーガレットは、高校卒業後は大学に進学し、弁護士になることを目指していた。だが、マーガレットの妊娠が発覚し、リチャードと10代で結婚することになる。
感謝祭、クリスマス、家族のバースデイ。楽しい時が過ぎてゆく。ヴァネッサの反抗期、夫婦げんか、家族の病気、悲しい時も過ぎてゆく。そしてマーガレットが50歳を迎えたその日、2人の人生は思いもかけない時へと迷い込んでゆく。(公式HPより)後は、映画を観てくださいね。
この映画、普通の映画とは一味違う面白い映画でした。何というのか、画面の中にいくつもの時間を表現していくという感じかしら。そしてその画面は1つのリビングをずっと映しており、カメラは人物や風景を追ったりせずに、定点カメラにして撮影しているんです。
なので一瞬、紙芝居のように思えるんだけど、その画面の中にいくつもの時間軸が組み込まれていくんです。ビッグバンが起きて地球が誕生し、火山爆発や雨によって命の種がまかれ、進化した恐竜たちが地上を走り回る。その3つの時代が1枚の画面の中に納まったりするんです。どうなるのかというと、画面の中に窓が開き、その窓の中だけ時間が進んでいたり、後退していたりするんです。
映画のアフタートークにライターの野中モモさんがいらして、その画面の中に窓が開くという表現を、昔のMAC(PC)のような考え方とおっしゃっていたのですが、的を得ているなぁと感心しました。MACもWINも、画面の上にそれぞれのソフトが開いていくじゃないですか。そんな感じなんです。
この作品の原作が「HERE」というグラフィックノベルでリチャード・マクガイアさんが描かれているものです。漫画みたいな言われ方をしていますが、私が見るにこれは現代アートです。アンディ・ウォーホルとかバスキア、キース・ヘリングなどと同類のアーティストだと思います。原作の本を見ていただくと解るんです。
リチャード・マクガイア「HERE」↓
ここにHEREの原作本の内容が少しだけ載っているのですが、そこを見ると、同じ画面に違う時間軸がいくつか乗っているんです。それが映画となっているのですから、とても面白い体験が出来るんです。原作では、映画のようなストーリー仕立てにはなっていませんが、映画に当たって書かれた脚本はよく出来ていたと思います。ホントに感動しましたもん。
最初は地球創生から恐竜が誕生して~となり、木々が育ち、土地の整地を進めて家が建ち始めます。いきなり穴を掘り始めて、その中にレンガを積んで地下室を作り、その上に木造の家を建てているんです。日本でこの建て方したらちょっとの地震であっという間に倒壊ですね。
昔はビックリするほど建築のやり方がゆるくて構造なんて考えていないから普通のレンガブロックを積み重ねてモルタルで貼っていくだけなんです。”殺す気かぁ~!”ってツッコんでしまいました。これ竜巻が来たらイッパツで飛んでしまいます。まぁ、その後に補強をしただろうと思いますけどね。そんな家に100年以上、リフォームを重ねたりしながら住み続けていくんです。
アメリカは日本と違い、古い家をリフォームをして長い間住み続けるというのが基本ですよね。日本の木造住宅は耐用年数が30年と言われていますがそんな事はありません。何もせずにほおっておけば材料が劣化してボロボロになるのが30年ですが、ちゃんとリフォームを続けて大切に住めば100年だって全然平気なんですよ。アメリカのようにリフォームをして100年以上住み続けることは出来るんです。日本人がやらないだけ。そこまで家に愛着を持って住んでいる人が少ないのも事実じゃないかな。
映画のこの家も、随分と長い間色々な人が住み続け、たくさんの思い出を宿したお家です。家にも意識があって、大切に住んでくれる人には愛情を持って接していて、温かく包み込んでくれているのだと思いますよ。でももしかしたら包み込んでくれているのは家自体ではなくてその”場所”、その”土地”なのかもしれません。太古の昔からその場所に関わってきた動物や植物、そして人間の意識をくみ取って、地熱のように守ってきてくれてるのかもですね。
この映画には、そんな不思議な力がその空間にあるような気持ちにさせてくれるやさしさがありました。トム・ハンクスとロビン・ライトという”フォレスト・ガンプ”の時のキャストでロバート・ゼメキス監督という温かそうな人たちが揃って作られたそうです。
そうそう、トム・ハンクスさんとロビン・ライトさんが10代から70代までの年代を演じているのですが、CGとAIを使い昔の顔写真などを読み込ませて、今の彼らに演じて貰って、その顔の表情や姿かたちなどをCGで加工したそうです。なので映画を観ると、本当に若い頃のトムとライトがいて、成長してよぼよぼしている感じの2人も観ることが出来ます。最初は凄く不思議な感じがしましたが、段々と慣れていきました。
この映画、私は超!お薦めしたいと思います。映像を観るだけでも価値のある映画です。今までにない現代アート系作品を堪能してください。アートというと解らないから面白くないと言う方がいますが、しっかりした脚本によりとっても解りやすい作品となっているので楽しめますよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「HERE 時を越えて」