「TOUCH タッチ」
を観てきました。
ストーリーは、
アイスランドでレストランを営むクリストファーは、初期の認知症との診断を受ける。医師に「やり残したこと」を問われた彼は、旅に出ることを決意。それは、50年前に学生時代を過ごしていたロンドンで出会い、恋に落ちた女性ミコを捜す旅だった。
というお話です。
アイスランドでレストランを営むクリストファーは、コロナウイルスの世界的流行が始まった頃、初期の認知症の診断を受ける。医師に「やり残したこと」を問われた彼は、旅に出ることを決意する。50年前、学生時代を送るロンドンで出会い恋に落ちたミコを探すために。
クリストファーは通っていた大学の学生運動などで勉強への意欲を失くしていた。そんな時、ロンドンの日本料理屋の求人を見つけて働いてみることに。大学に戻るまでという軽い気持ちだったが、日本料理は面白く、段々と大学へ戻るという選択肢を捨てていた。店の店主である高橋は親切に教えてくれ、彼の娘・ミコも店で働いていた。
ミコと愛し合うようになったクリストファー。しかし彼女の父親は娘の交際を何故か決して許さないようだった。クリストファーは真剣に彼女とのことを考え始めていたのだが、店が短期の休暇に入りクリストファーが店に戻ると、突然に店は閉店となり、高橋とミコは日本に帰ったと言われてしまう。
突然に姿を消したミコ。彼女はどこへ行ったのか。薄れゆく記憶と戦いながら、ロンドンを訪れたクリストファーは、高橋の店で共に働いていたヒトミから、一通の手紙を見せられる。その住所をたどり、クリストファーは日本を訪れ、東京を経て広島へと向かう。そして、時を超えた切ない真実が明らかになる。後は、映画を観てくださいね。
この映画、全く内容を知らずに観たら、最初に注意書きが流れてちょっと驚きました。”被爆者”に関しての扱いがあるとのことで、そういう話なんだなと分かってから観ました。2020年にアイルランドで発売されたベストセラー小説の映画化だそうです。良い映画でした。
お爺ちゃんであるクリストファーが認知症ですという診断を受けるんです。ショックではあると思うけど、それよりも解決していないことがあるのに全て忘れてしまうかもという不安の方が大きかったんじゃないかな。既に奥さんは亡くなっているようで、一人で昔の心残りを解決しようと動き出すんです。
1969年にロンドンの大学に通っていたクリストファーは大学側の何かに怒っていて、日本でいう学生運動のようなことをしていたんです。勉強への情熱も無くなったようで、日本料理屋でバイトを始めるんです。きっとこの時代のロンドンでは日本人の店なんて珍しかったんじゃないかな。まぁ、普通の居酒屋のような作りでした。
そこで店主・高橋の娘・ミコに出会います。同年代の設定だと思うけど、やはり日本人は幼く見えますね。ミコは最初は日本人男性と付き合っているんだけど、父親が口を出したようで別れたようでした。そしてクリストファーと付き合い始めます。でも父親には内緒ででした。
ここで、父親が何で娘が付き合うことに神経質になるのかなあと不思議でした。まぁ、大事な娘だからとは思うけど、ここまで付き合うなと言うのは干渉しすぎじゃないかと思ったのですが、そこに大きな理由があったんです。
この時代、まだ被爆者というと怖がられていたのかしら。放射能で身体にどんな影響が出ているのか完全には解っていなかったのかな。原爆投下から25年くらいだと思うけど、色々と差別のようなものがあったのかもしれませんね。それについては、私も知識がないので何とも言えませんが、この父親の高橋が心配するくらい恐ろしい体験をしてきたのでしょう。
娘のミコはお腹の中で被爆したので、その怖さを知らないのだと思います。だから父親のいう事も最初は理解出来ずに反発していたのかなと思いました。でも、きっとしっかりと話をして、放射能の影響の事も知り、父親のいう事に従っていったのだと思いました。どうしようもないですよね。見えないけど、身体の中が放射能で壊されちゃっているかもしれないというのは悲劇だと思います。
これはミコ側の話で、クリストファーはそういう事を全く知りません。可愛くて好きになったのに、突然にいなくなってしまったらショックでしょう。今ならスマホでメールをしたりして連絡が取れるけど昔ですからね。1970年にロンドンで日本料理店を開いていたっていうのが凄いんじゃないかな。人種差別も強かっただろうしね。
クリストファーはいなくなったミコを探しようがないんです。昔はGoogleマップもないし、翻訳機も無いでしょ。彼はどうしようもなく、失意のままアイスランドへ帰ったのだと思います。この時代はそんな別れもあったのでしょうね。今のような情報が沢山溢れている時代じゃないし、かわいそうでした。
そんなクリストファーがミコを探し出すというのが凄いでしょ。きっと70歳超えていたと思うけど、コロナ過の中、アイスランドからロンドンへ飛んで、そこから日本に来るというのは凄いパワーだと思いました。一人でですもん。普通なら娘が付いてきたりするよね。
そしてお爺ちゃんが一人でお祖母ちゃんのミコを探します。年を取ってしまっても、若い頃の想いは消えないんですね。凄いなぁと思いました。そんなに好きだったのに別れなければいけなかったというのが辛いお話でした。
若い頃のミコ役をKokiさんが演じていて、以前のホラー映画の時より格段と演技が上手くなっていました。あの演技だったら嫌だなと思っていたのですが、とっても頑張ったのかな。これから役者として真剣にやるなら成功しそうな気がしました。ご両親はアイドルで成功したけど、役者や歌手としてはダメだったでしょ。役者をやるなら良い先輩や監督と出会って、主役じゃなくても色々な作品に出たらよいんじゃないかな。ブランドのモデルより素朴な役をやっている姿の方が素敵だと思いました。
他にも、本木さんや中村さん、柴田さんなど日本の役者が数人出ていました。やっぱり上手い方々なので画面が絞まって良かったですね。アイスランドの役者さんは初めてなのでよく解りませんでしたが、若い時のクリストファーはイケメンでしたね。
映像もこだわっていて美しかったです。レトロな感じと、ちょっとブレードランナー的な雰囲気の映像があり、日本的なモノを海外で撮影するとSFっぽくなるのかなと思いました。とても良かったですよ。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。あまり話題に出てないけど、私はこの映画好きです。綺麗だったし、被爆者がその時代にどう思われていたのかということも伝わってきて、何となくじーんとしました。日本の映画では原爆や被爆者をこのように描いてくれることは今まで無かったので、とても良いことだと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「TOUCH タッチ」