「ぼくとパパ、約束の週末」
を観てきました。
ストーリーは、
幼い頃に自閉症と診断された10歳のジェイソン。ある日、クラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれ答えることができなかった彼は、ドイツ国内の56チームを全て見てから決めたいと家族に話し、父ミルコは息子の夢をかなえるべく、ドイツ中のスタジアムを一緒に巡ることを約束する。
というお話です。
特別な感性を持つジェイソンは、幼い頃から自閉症と診断されていた。生活に独自のルーティンとルールがあり、それらが守られないとパニックを起こしてしまう。
ある日、クラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれたのに答えることができなかったジェイソン。お腹の中にいる時から決まっていることなのになと言われたジェイソンは、その冗談を真に受けて何故自分は決まらなかったのか不思議に思い、それは決めなくてはと思ったのか、56チームぜんぶを自分の目で見て好きなチームを決めたいと家族の前で言い出す。TVでもビデオでもなく、現地のスタジアムで観戦し、総合評価した上で決めたいというのだ。
父親のミルコは、それまで仕事に逃げて息子と向き合ってこなかったこともあり、週末にドイツ中のスタジアムをジェイソンと共に巡る約束をする。強いこだわりを持つジェイソンは、果たして推しチームを見つけることが出来るのか?
ただでさえルールとルーティンが守られないとパニックになり、人に触られるのも極端に嫌がるジェイソンがサッカースタジアムの観客席に入れるのか。いくつもの困難が待ち受ける週末、ジェイソンとミルコは未知の世界に踏み込み始める。後は、映画を観てくださいね。
この映画、横浜では遅れて公開だったので内容を知らずに観に行ったら、凄く良い映画で驚きました。よく見たら、文部科学省やら何やらの推薦映画で、自閉症と診断された子どもと家族のお話が描かれていて、この映画を観て改めて自閉症の子供との付き合い方を勉強させていただきました。
子どもが生まれて喜ぶミルコとファティメですが、ある日、子供の反応がちょっとおかしいかなと感じて病院へ連れて行くと自閉症スペクトラム障害と診断されるんです。両親は子供とどう接したらよいのか解らず、そこから障害に向き合い始めます。
ジェイソンは成長し10歳となり、通常の学校に通っています。しかし障害の影響で人の気持ちを汲むなどのことが出来ず、思ったことをストレートに言ってしまうので、クラスメイトには虐められ、教師も授業を止めなければならずで問題児扱いされてしまいます。そして学校から改善されなければ特殊学校に行くようにと通告されてしまいます。
これどちらの気持ちも解るので難しいよなと思いました。障害だから仕方ないけど、他の生徒の迷惑になってしまうようなら一緒に勉強は出来ませんよね。どちらにも人権はあるので一方だけを特別扱いは出来ないと思うんです。自閉症だと人との付き合い方が上手く出来ないので、どうしても酷い言葉を相手に投げかけてしまうんですよね。酷いことを言われればどんなに障害だからと言われていても我慢が出来ないこともありますよ。
父親のミルコは、家族のために仕事を必死でしていますが、どこか仕事に逃げて息子と向き合おうとしていなかった自分に気が付きます。父親って母親よりも障害に向き合ったりが下手だと思うんですよね。私の夫も障害児は苦手で、私がボランティア的なお手伝いに行くというと嫌な顔をします。何で?と聞くと”関わるのが怖いから”というんです。確かに行動が読めないから怖いというのは理解出来るので関わりを強要は出来ません。
この映画を観ていても、ジェイソンが次にどんな行動をするか全く読めないし、自分で決めたルールを決して曲げないので、このクソガキ、イライラするぅ~!と思いました。自閉症の影響だと解っていても我慢が出来なくなるんです。
一番許せなかったのが、パスタがソースに付いているとどうしても許せないという場面でした。パスタはソースに絡んでいるのが当たり前なのに、パスタとソースは別々にして、混ざらないようにというのがジェイソンのルールなんです。でも一つの皿に盛り付けたら少しパスタにソースが付いてしまったりするでしょ。それを見て大騒ぎになるんです。さすがに酷いなと思いました。
実は、以前の記事にも書いたことがありますが、私も軽いアスペルガーを持っていたようなんです。子供の頃は何で人と仲良くしなきゃいけないのか、人と同じことをしなければいけないのか、理解が出来ませんでした。言葉をストレートに言ってしまい困惑させることも多かったようなんです。
全て真っ直ぐに並んでないと嫌だし、分けるなら均等でないと許せないなどがありましたが、祖父母と両親に強く矯正されまして、色々なことを”ほどほど”と許せるようになりました。自閉症というのは重い軽いがあるようですが、私のように矯正することが出来る程度もあるようです。というか私が子供の頃は自閉症だからなんて診断はされず、問題児として矯正されたのだと思います。
映画の中でも「しつけをしなさい。」と言われることが何度もありますが一般の人から見ればそう見えるのは当たり前なのでしょう。でも、自閉症の重い人には矯正は出来ないのだろうと思います。無理にやらせると壊れちゃうんじゃないかな。パニックになって頭の中がぐちゃぐちゃで戻ってこれなくなるんじゃないかと思います。
だから両親はジェイソンにこうしなさいとは決して言いません。ルールを作って、これをするならこちらをするようにと交換条件を出したりしながら少しづつ譲歩することを教えていくんです。根気のいることだなと思いましたが、息子がこれから生きていくことを考えての教育だったと思うんです。凄い事だなと思いました。
ミルコはジェイソンが好きなサッカーチームを見つけるまで、一緒にサッカースタジアムに通うこととし、困難な旅行を始めることになります。人が大勢いる中に入っていくなど、それまでのジェイソンには難しかったと思うけど、推しのサッカーチームを見つけるという目的のために出来るようになっていくんです。
それでも人に触られるのは出来るだけ嫌だし、食べ物のシェアは許せないし、咳をする人からは病原菌が飛ぶので離れたいし、自分のルールは決して変わっていないんですよ。少しだけ譲歩出来るように進歩し、父親とも打ち解けていきます。それだけでも凄い事だと思いました。
私、なんとなく自閉症の子はこんな感じということしか解っていませんでしたが、この映画はその特性をよく描いていたと思います。今「ライオンの隠れ家」で自閉症の美路人役を坂東さんが演じていて、素晴らしく上手いと思っているのですが、このジェイソンも上手く演じているなぁと思いました。
この映画を観ると、重度の自閉症の特徴はこんなことがあるんだと解って、障害児と関わる怖さが随分と薄れたような気がします。理解出来ると「あ、あれだな。」と分かるので怖くなくなるんですよね。今までも障害児の方々と関わりを持っていましたが、根本にあった怖さが減って、無理に気を使って合わせたりすることはしなくていいんだなと思いました。彼らはそんなにこちらを気にしていないと言うことと、自分の決めたルールは絶対だと言うことが解ったんです。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。とても良い映画だと思いました。障害があってもそれに向き合って、出来る事と出来ない事を理解していくことが大切なんだなと思いました。但し、やっぱり向き合いたくない方もいらっしゃると思うので、強要は出来ません。障害を知りたいと思う方は、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ぼくとパパ、約束の週末」