「本心」
を観てきました。
ストーリーは、
石川朔也は母・秋子から「大切な話をしたい」という電話を受けて帰宅を急ぐが、豪雨で氾濫する川べりに立つ母を助けようと川に飛び込んで昏睡状態に。1年後に目を覚ました彼は、母が“自由死”を選択して他界したことを知る。同時に「VF(バーチャル・フィギュア)」の存在を知った朔也は、母の本心を知るため、開発者の野崎に母を作ってほしいと依頼する。
というお話です。
「大事な話があるの」そう朔也に電話をした母・秋子。朔也は気になり急いで仕事場から家に帰ると豪雨の中、母が河べりに立っていた。朔也は母を呼ぶのだが豪雨で聞こえているのか解らない。すると母はあっという間に濁流に飲まれてしまう。驚いた朔也は母を助けるため自らも川に飛び込む。それから1年以上の間、朔也は昏睡状態となり、母は亡くなっていた。
朔也が目覚めると警察が訪ねてきて、母・秋子が実は”自由死”を選んでいたと告げられる。まさか幸”自由死”を選んでいたなんて。信じられない朔也は、母と住んでいた自宅に戻り理由を探すが解らない。どうしても母の本心が知りたい朔也は、1年経ち以前とは段違いに進んだテクノロジー技術を使い、母親が生きていたころのデータをAIに集約させ、VF(ヴァーチャル・フィギュア)を作成し、母の気持ちを聞いてみようと考える。
開発している野崎が告げた「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安を覚えつつ、VF制作に伴うデータ収集のため母の親友だったという女性・三好に接触。彼女が知っている母親のデータも集約し、“母”は完成する。朔也はVFゴーグルを装着すればいつでも会える母親、そしてひょんなことから同居することになった三好と、他愛もない日常を取り戻していくが、VFは徐々に“知らない母の一面”をさらけ出していく。朔也は自分が知らなかった母親を見ることになり動揺していく。そして三好との関係も段々と変わって行き…。後は、映画を観てくださいね。
この映画、前半は母親が突然に亡くなってしまい、母親とは解りあっていたと思っていた息子が、母親の本心を聞きたかったと言ってVFで母親を作るというお話です。そして後半はそれが他に派生していき、自分の本心も解らなくなっていくという感じでした。
大体、自分の本心でさえよく解らないのに、人の気持ちが全て解るはずがないんです。人間とは、今はイエスと思っていても、明日にはノーになっているかもしれない。そんな生き物ですから。AIを使って母親と同じ人間を作ると言っても同じではありません。
どんなにデータを集めても、朔也の偏った印象が入っているし、彩花の印象も彼女の見た秋子の姿だけです。心の奥底を除いてはいないので、二人にとって見たい秋子が作られるはずなんです。もし、本物のVFを作りたいのなら、生きているうちに本人が記憶を保存しておいて、それを死んだ後に再生して貰うのなら同じになりますけどね。
朔也もそのことに気が付いたんじゃないかな。「本物以上のお母さま」という言葉はその通りで、自分の見たい母親を自分は作っているだけなんじゃないかと。自分の出生の秘密などは秋子が彩花に話していたからか真実を知ったけど、最後に母が話したかったことはどうしても解らないんです。
VFの母親に聞くんだけど、朔也も彩花も知らないんだから解りませんよね。色々な記録を集約していたとしても、本当のことは解らない。確かに朔也に言葉を言うけど、それが本当に母親が言いたかった言葉なのか、それとも違うのか。それは永遠に解らないんです。そのことに気が付いた朔也は、生きて、自分の目の前にいる人に対してのことに誠実になろうと考え始めたんじゃないかな。
彩花と一緒に暮らし始めて、母を亡くした寂しさを段々と癒された朔也。仕事も見つかり、これから幸せになれるかなと思い始めたころに、ある問題が起きてしまいます。彩花のことを思いながらも本心を語らずに相手のしあわせを考えて、朔也は遠慮してしまうんです。ここで本心を言わないことが相手を思ってのことだということに気が付いた朔也。本心を言いたくても、相手を傷つけたり、相手のしあわせを思ったりすることで本心を抑えてしまう苦しみを知ったんじゃないかな。
人との関係は簡単に割り切れるもんじゃなくて、自分中心でいつも生きているならいいけど、人のことを思えば好き勝手なことは出来ないでしょ。そうなると本心だけでは生きられませんよね。それなりの配慮と遠慮が必要となるし、例えば欲しいものがあっても我慢しなければならないことだって出てくると思うんです。それは本心ではないけれど、そうすることで社会は丸く収まっていくし、みんながしあわせになることなのかもしれない。
でも、ある場面では本心が大切なんだよということも、この映画は描いていたような気がします。少しネタバレになるけど、最後には本心によって、しあわせになれたんじゃないかな。私は、そう考えました。母の本心は解らないけど、きっと朔也は本心によってしあわせになれるんじゃないかな。そんな風に思いました。
たとえ真実を語らなくても、目が語っていたのかもしれない。実物がいると言うことは、言葉が語る事ではなくその人物が全身で表現していることを読み取ることが出来るということ。人は言葉だけではない、そんなこともこの映画では描かれていたんじゃないかな。
池松さんと三好さんの演技が絶妙でした。そして二人を結ぶ田中さんが良かった。VFの田中さんは、やっぱり人間とは違って見えましたもん。他の方々も良かったなぁ。妻夫木さんと仲野さんなんて、もしかしてVFなのかもと思わせる雰囲気で楽しめました。本当に現実味がないんです。彼らはデジタル世界で暮らしていて現実世界には生きていないのかもと思えるほどのでした。
唯一人間らしい水上さんは人間の貪欲さを表していて、他の方とのギャップも良かったです。彼との世界だけは現実で、リアルアバターという仕事をしているのですが、現実の人間の残酷さをこちら側では描いていたと思います。未来の現実はこんな風に酷い世界になるのかもしれません。怖かったです。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。表面だけ観ていると、あれ??という場面がいくつかありますが、人の真実=本心とは、を深く追っていくと、なんとなく伝わってくるものがいくつもありました。私は最後にジーンとしました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「本心」