「まる」唯の〇(まる)なのに何か気になる。突然有名になったさわだが辿る道はどうなるのか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「まる」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

美大を卒業したものの成功できず、現代美術家のアシスタントとして働く沢田。ある日、通勤途中の坂道で自転車事故に遭い右腕にケガをし、仕事を解雇されてしまう。部屋に帰ると床には1匹の蟻。その蟻に導かれるように描いた○(まる)が知らぬ間に評価され、正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名人になるが、徐々に○にとらわれ始め…。

というお話です。

 

 

美大卒だがアートで身を立てられず、人気現代美術家のアシスタントをしている男・沢田。独立する気配もなければ、そんな気力さえも失って、言われたことを淡々とこなしている。同僚の女性にアイディアを盗まれているのに黙っているんですかと言われても仕方ないと諦めていました。


ある日、通勤途中によそ見をしていて事故に遭い、右腕にの怪我をしてしまう。利き腕が右なので美術家に仕事が出来ないじゃないかと怒られ、解雇されてしまう。部屋に帰ると床には蟻が1匹。その蟻に導かれるように描いた○(まる)。とりあえずのお金が無いので近所の古道具屋?らしき店に雑貨と一緒に描いた〇(まる)の絵も預けてみた。

 

 

すると知らぬ間にその絵がSNSで拡散され、正体不明のアーティスト「さわだ」として一躍有名になる。そして沢田の家にツチヤという謎のアートディーラーが訪ねてきて、〇(まる)を描いてくれたら100万円払いますという。もちろんツチヤが認めた〇だけなのだがあまりの突然のことに沢田は驚いてしまう。

 

突然、誰もが知る存在となった「さわだ」だったが、いざ〇を描いてみようとするとあの時のような〇が描けない。無心で描いた〇は認められたが、今、欲を持ってしまった自分にあの〇は描けない。そして沢田の周りに欲に目がくらんだ人々がたくさん湧いてくる。段々と平常心を保てず〇に囚われはじめ、息苦しくなっていく。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

荻上監督の最新作、面白かったです。今回は堂本剛さんを主演に迎え、綾野さん、小林さんなど上手い出演者もそろっていてよく出来ていました。私はこういう作品好きです。それに価値のつく”さわだ”の”〇”の絵、やっぱりイイですよ。これ、堂本さんが描いたらしいのですが、さすが天才ですね。唯の〇なんだけどかすれ具合がちょうど良くて、何とも言えないバランスが落ち着くんです。この〇を一発で描くなんて本当に素晴らしい。

 

沢田は美術系大学によくいるタイプの人物です。私もそうだったからなんとなくわかりますが、絵を描くことは好きだけど、先の事を考えてないんですよね。だから絵を仕事にするなんてことが出来ず、結局アシスタントとしてアルバイトをすることになるんです。でも有名現代美術家のアトリエにアルバイトに入れるなんて凄いんですよ。通常、ここで勉強をして育てて貰ってデビューするんだろうけど、この美術家さんは後輩を育てるような気は無かったようですね。

 

 

そこで安い給料で雇われていたようで、こんなところでいつまでやっているんですかと後輩の女性に怒られて、そういうもんかなと考え始めたころにちょうど事故にあったんじゃないかと思うんですよね。だから美術家に辞めろと言われて素直に辞めちゃったんじゃないかなと思うんです。きっと自分でもこのままじゃ、何も変わらないと感じたんじゃないかな。

 

そして家で絵を描こうと思った時にキャンバスに蟻がいて、その蟻を囲むように〇を描いたことが始まりなんです。蟻って、〇描くとそこから何故か出れないんです。不思議ですよね。何で?って聞きたいけど意思の疎通が出来ないから解らないんだけど、〇から出れないんですよね。そしてその〇の絵が、とんでもない価値になっていくんです。

 

 

そうそう、この出来事の前に池でおじさん(先生)に出会い、鯉に餌の食パンをやっていて、その1枚を沢田が貰うんです。その時に円周率の事とある日付を聞いて何だろうと不思議に思いながら家に帰るんです。何故か未来を予言する先生との出会いがキーになって〇を描き始めたのだと思います。何故先生と呼ぶのかは解りませんが、初めて会った時は偉い先生のようで、お迎えが来ていました。

 

〇の絵が話題になり、素晴らしい現代芸術だと評価されてしまいツチヤというアートディーラーが訪ねてくるんですけど、この人がまた謎なんです。胡散臭いんだけど、若草画廊に〇の絵が飾ってあったので沢田が訪ねていくと全く相手にされないんだけどツチヤの名刺を出すと沢田を信じてくれるんです。アートの世界では有名な人のようでした。

 

ツチヤは胡散臭いけど、見る目はあったんじゃないかな。最初の〇は認めていたけど、後から描いた〇は買えないと突き返しました。確かにごちゃごちゃしている〇の絵で、その絵の中に何も見えないんです。それこそ欲が出てしまっているというか、ほら凄いだろというような傲慢な考えが見えるんです。驚いたんだけど最初の〇にはそういう考えが見えないんですよねぇ。なんかすごかったです。

 

 

沢田は〇が描けなくなっていき追い詰められ、隣に住む横山は沢田が有名になって焦りだしておかしな行動をし始めるんです。沢田と横山は部屋がお隣同士で、横山が騒いだりするので沢田はちょっと迷惑がっているんですけど、それでも仲良くやっていたのですが、さわだの〇が有名になってから横山は妬みが出てきてしまい二人の仲はおかしくなっていくんです。

 

そこら辺の人間関係がそれぞれの人間性をよく表していて、面白いと思いました。堂本さん、10年間(銀魂は別にして)も演技をしていなかったそうなんですが、やっぱり持っている人は持っているんですね。そこにぼんやり佇んでいるだけで気持ちが伝わってくるんです。静かに考えたり、苦しんだり、イラついていたりするのが、大きな表現ではないけど伝わってくる表情をするんですよね。

 

 

それに対して綾野さんは大きな表現で相手をイラつかせる役を演じていて、この対比が面白いし上手いなと思いました。どちらも無言でいがみ合うのではなく、暴れる綾野さんに対して静かに拒絶する堂本さんの姿がなんとも面白いし、殴り合うよりも激しいなと思いました。良かったです。

 

なんだか良かったなぁ。この現代アートの痛いところを突いたような作品で本当に面白かったです。現代アートは屑でもなんでも、その絵を高値で買う人が現れれば芸術ですからね。アートを感じてではなく、価値の上がる資産だと思っている人ばかりですよね。こんな風に〇の価値が上がってから〇の理由付けをする人ばかり。あの〇には、きっと蟻の命が込まれていたからこその芸術だったんだと思いますよ。

 

 

私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。でも、ゆったりして掴みどころのない単館系の映画が好きでない方には、ちょっと合わないかもしれません。この映画は淡々とした日常に波が立ち慌てたけど、またゆっくりとした時間が流れ始めるという荻上監督っぽい映画だったと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「まる」