「若き見知らぬ者たち」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占〈監督Q&A付き〉試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働く風間彩人。総合格闘技の選手となった弟の壮平も、兄を手伝いながら練習に明け暮れる日々を送っている。彩人は恋人である日向との幸せを掴みたいという思いがかすかな希望だった。しかし、ある日、思いもよらない暴力によって、ささやかな日常がもろくも奪われてしまう。
というお話です。
風間彩人は、亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母、麻美の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働いている。父は元警察官だったようだが脱サラし、このカラオケバーを開いたようだった。しかし経営は思わしくなく、退職金や年金を使い込んだ挙句に借金を残して亡くなってしまったのだった。
彩人の弟・壮平も同居し、同じく、借金返済と介護を手伝いながら、父の背を追って始めた総合格闘技の選手として日々練習に明け暮れていた。チャンピオン戦が近づき、減量のための合宿に入る為に家をしばらく空けることになる。
毎日、息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人の日向との小さな幸せを掴みたいと考えていた。難病の母親は既に色々な事が出来なくなってきており、彩人や壮平のことさえ解らない時がある状態。看護師をしている日向は、そんな母親が居ても嫌がらずに彩人を手伝いに来てくれる。
しかし、彩人の親友の大和の結婚を祝う、つつましくも幸せな宴会の夜、彼らのささやかな日常は、思いもよらない暴力によって奪われてしまう。後は、映画を観てくださいね。
衝撃的な映画でした。私は”怒り”がどんどん自分の中に溜まって、叫びたくなるほどでした。理不尽なことばかり続き、何故なんだと映画に問いかけたくなるのですが、目の前に描かれていることは、現実に今、起きていることだと気が付くんです。少し手を伸ばせば助けられそうなことなんだけど、誰も助けないんです。何故なら誰も彼らを観ていないから。
父親が残した借金を返しながら、難病の母親の介護をしている彩人。弟の壮平も手伝ってはいるのですが、ほとんどは彩人がやっているようでした。このヤングケアラーの問題ですが、病院に診せに行っているのだから、先生が一言、もう自宅で診るのは難しいんじゃないかと言わないんですか?彩人の様子を見れば、もう生活が破城しているの解るでしょ。
母親の難病が何なのかは解りませんが、脳に障害が出ていてもう少しでALSを併発すると言っていたと思います。既に色々な事が解らず、認知症の酷い状態といってよいかと思います。それなのに、彩人が仕事に行っている間は家に一人なので、ガスや水道、電気などが危ないなと思いました。一人にするならガスは元栓で閉めて、水道はトイレ以外の栓を閉めて、電気は重要部分以外のブレーカーを落としておかなきゃ。火事になってからじゃ遅いですからね。
男の子だから母親を施設に入れるのが嫌なのかなと思いました。男性にとって母親は永遠だから、その決断は辛いのだろうと思います。でももし医者が一言、施設に入れるべきだと言ってくれたら彩人だってその気になったかもしれない。病院が行政に繋いでくれたら変わっていたかもしれない。でも誰も彩人たちを見てくれていないんですよね。
そんなギリギリの状態で暮らしている彩人。もし両親が開いたカラオケ店を売れば借金も返せて、暮らしも楽になったかもしれないのに、それもしないんです。こだわりもあっただろうけど、誰かが親身になって売った方が良いと言っていればこんな生活は続けなくて良かったかもしれない。これも相談する人がいないんです。借金を返済していることはみんな知っていても、店を売るべきだとはっきり言ってくれる人がいないんです。これも彩人の状態をよく見ていないでしょ。
彩人は考え方が昭和っぽくて、自分は長男だから、父親が亡くなったなら今度は自分が頑張って家族を養っていかなきゃいけないと思っていたんじゃないかな。だから母親を施設に入れるのもためらっていたし、店を売ることもやめて自分で経営し、弟にも好きに格闘技をさせていたんじゃないかな。正義感が強くて、責任感が強くて、優しい彩人。一番、ダメなヤツですよ。一番貧乏くじを引いてしまう典型です。
だからたまたま職質を受けている人が困っていそうだったから助けに入って、自分が警察に連れていかれたりして、本当に良い人って損をすることばかりなんですよね。だから今の時代、誰も関わろうとしなくなっちゃったんだと思うんです。これ、日本人だけだったらこれほど酷くなっていなかったと思うんです。
日本人って、人を騙すのは悪いことと教えられて育ってきているけど、外国人は自分の欲のためなら人を騙しても良いと教えられてきているから、根本的に考え方が違うんですよね。何たって、自分が手に取ったモノは、人のモノでも自分のモノだという人達ですから。盗むのは盗まれる方が悪いと思っているんです。
そんな時代になってしまったので、誰も人を助けようとせず、見ようとせず、真実を覆い隠すのも平気になっちゃっているんです。怖いですよね。こんな日本に誰がした!って言いたくなります。
観る前に一つヒントを与えておこうと思います。彩人のお父さんは元警察官で、母親が父親の載っている新聞記事を見る場面があります。そこで記事の内容をよく見ておいてください。私は、因果応報、廻り廻って…と想像してしまいました。ある一つの死が、きっとその後も影響を与え続けるだろうと想像が出来ました。人間って、どんなに誤魔化して隠そうとしても神様には隠せないですからね。自分には嘘を付けないので心が壊れていくと思います。
彩人の彼女の日向も友達の大和や治虫も、みんな本当にイイ奴で彼らだけは彩人の事を見ようとしているんだけど、彩人が殻を作っていて、彼らを自分の中にまで入らせない雰囲気がありました。日向はもしかしたら妊娠していたかもしれないけど、それを彩人にも言っていなかったんじゃないかな。どこかで殻を破って関われなかったのかなと凄く思いました。
大和が食い下がって色々と調べようとする場面があるのですが、こういう友達って本当に大切だよなって思いました。沢山の壁があり、目的の達成は出来ないかもしれないけど、それでも彼のような友達がいたことで、種は撒けていると思うんです。きっとどこかでその芽は出るハズなんです。復讐は出来るハズです。
弟の壮平は、そんな色々な事があっても格闘技という自分に自信が持てるモノを手に入れて、一人で進んでいくのだと思いました。1つでも自信が持てるモノを手に入れたら無敵ですからね。きっと彼は、これから色々な決断をしていくと思います。彩人の分も、彼が背負って裁いていくんじゃないかな。見て貰えなかったからじゃない、見せてやるんです。自分を見せて、前に進むんです。そんな風に感じる映画でした。
私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。凄く怒って怒ってクソッと思いながら、絶対にこれで終わらせねーぞ!って思って、こんな世界、変えてやる!と思っちゃうような映画でした。こんな素敵な映画、薦めない訳が無い!細かい伏線が一杯あるので、よく観ていてください。音楽がほとんどありませんが、壮平がリングに上がる時の音楽がとても合っていました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「若き見知らぬ者たち」