「ジガルタンダ・ダブルX」
を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
1973年のインド南部タミル地方。小心者の新人警察官キルバイは不可解な殺人事件に巻き込まれて投獄される。復職の条件としてギャングの親分シーザーの暗殺を命じられる。クリント・イーストウッドの西部劇が大好きなシーザーに接近するため、キルバイはサタジット・レイ門下の映像作家と身分を偽り、シーザーを主演にした映画の監督に立候補。シーザーはキルバイを抜てきするが、2人の運命は思わぬ方向へと転がり始める。
というお話です。
1973年のマドラス(現在のチェンナイ)。警察官採用試験に受かったキルバイは、血を見ると気を失うような小心者。着任を間近に控えたある日、学生の騒ぎを聞きつけて行ってみると、既に学生が殺されて血が散乱していた。あまりの血にめまいを起こして気を失ったキルバイは目を覚ますと殺人事件に巻き込まれていて、自身が犯人とされて牢に繋がれることになってしまう。
1975年、キルバイは、政界に強いコネクションを持つ悪徳警視ラトナに脅され、無罪放免・復職と引き換えにマドゥライ地方のギャングの親分シーザーを暗殺することを命じられる。ラトナは、西ガーツ山脈のコンバイの森に派遣された特別警察の指揮官で、冷酷非道な男。その兄のジェヤコディは、タミル語映画界のトップスターにして、次期州首相の候補と噂されている。
一方シーザーは、「ジガルタンダ極悪連合」という組織のトップで、地元出身の野心的な有力政治家カールメガムの手足となって象牙の違法取引から殺人まで、あらゆる非合法活動を行っている。シーザーに近づくために、キルバイはサタジット・レイの弟子のレイ・ダースと身分を偽り、シーザーを主演にした映画の監督の公募に名乗りを上げる。クリント・イーストウッドの西部劇が大好きなシーザーは、キルバイを抜擢しレイ先生と呼ぶようになる。そこから2人の運命は思いもよらない方向に転がり始め、西ガーツ山脈を舞台にした森と巨象のウエスタンの幕が上がる。
シーザーが象を大切にする森の部族の血筋で村人は今も象の密猟者に悩まされていることを知る。シーザーが密猟者を倒すヒーローという設定で映画を撮ったらオスカーも夢じゃないと話しその気にさせて、密猟者とシーザーを戦わせることにより自分が手を下さなくてもシーザーを殺せると考えたキルバイはカメラを持ってシーザーを追い撮影を開始する。そして…。後は、映画を観てくださいね。
3時間ほどある、アクション、コメディ、ミュージカル、ヒューマンドラマでした。何度も話のルートが変わっていくので、あれ、こっち目線でいいんだっけ??と観ている自分に問いかけながら観ていました。最初は悪者のギャングを倒す為に映画監督として潜入し、隙をついてギャングのボスを倒すというのが目的なんだけど、敵は誰だっけ?密猟者なんだっけ?となっていき、最後はとんでもない巨大な敵と戦う事になるというお話になって行くんです。
キルバイはヘタレで血を怖がるような男性で、やっと警察官の試験に受かったと喜んでいたのですが、殺人事件の犯人にされて投獄されてしまうんです。いきなりの主人公逮捕で驚きましたが、そこから深い内容が始まります。
インドでは州ごとに首長がいて州首相と呼ばれて政治を全権委任されているようでした。州首相の力が凄く強いので、次の首相になりたい人物が競っているんです。俳優のジェヤコディと政治家のカールメガムが争っていて、ジェヤコディは弟の警察指揮官ラトナを使って、カールメガムの手下であるシーザー他4人を殺させようとするんです。
その殺し屋に選ばれちゃったのがキルバイ。人なんて殺せる訳がないんだけど、シーザーを殺さなければ殺人犯としてずっと投獄されてしまいます。彼女とも結婚したいし、警察官として働きたいキルバイは、その殺人を請け負い、シーザーへ近づく手立てを考えます。そして映画監督のマネをするんです。
このシーザー、あるトラウマがあって悪人になってしまったという過去があります。そしてその昔に西部劇の撮影に来ていたクリント・イーストウッドに出会い、おもちゃの拳銃を貰って名前を付けて貰ってから彼に夢中になったようなんです。このおもちゃの拳銃と思っていたモノは8ミリカメラだったんだけどね。(笑)で、映画館まで建てて、ずっとイーストウッドの映画を流しているという推し活に勤しむギャングなんですよ。
なのでキルバイがシーザーを主役に、ゴッドファーザーのような内容の西部劇を作り、オスカーを狙うと言ったときには大喜び。直ぐに彼を採用し、その日に撮影に入ります。あり得ないけど、無理無理にやってしまうんです。そういう部分がインド映画っぽいというか、無理しても続いていく話が凄いなぁと思いました。
シーザーってギャングのボスで凄い悪役なんだけど、キルバイと一緒に撮影を進めていて人間らしさが見えてくるんです。本当に悪い奴なんだけど、実はっていう事もあり、またシーザー自身も家族との関わり方を考え始めるんです。そうすると何となくシーザーってかわいい奴なのかもしれないなと思い始めちゃうんですよねぇ。それまではギャングで人殺しをしていて、象牙の密輸なんかもしていたんだけど、何となく憎めなくなってくるんです。
一方、警察や政府が悪い事を平気でやっていることが目に付いてきて、あれ?もしかしたらギャングよりもこっちの方が悪いことしてんじゃないかなって感じ始めるんです。インドの1975年って、インディラ=ガンディ首相が非常事態宣言をして言論の弾圧や反政府活動を抑え込んだようで、国民から娯楽が消えてしまった時代のようです。
なのでこの映画の力で悪徳政治を壊すというのは、非常事態宣言が出される前(6月以前)に行われたのかなと思いました。なので、この映画の最後で続編作るのかな?みたいな話は、ちょっと怖い内容になるかもしれません。だって、国全体で非常事態宣言がされちゃったら州も何も無くなって、国民が弾圧されちゃいますもんね。
この映画、私はお薦めしたいと思います。面白いのですが、やはり3時間はちょっとキツいかな。でも内容はとても濃いものでした。話がどんどん切り替わり、人間が映画の中で成長していく姿が観れて面白いですよ。ちゃんと映画の中で考えて、人間が変わっていくんです。ハリウッド映画などのように、悪役は最後まで悪役というのではなく変化が起きていくというのはとても面白い内容だなと思いました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S:この映画、前作もあるようなのですが、話は繋がっていないので前作を観ていなくても問題はありません。この作品だけで1本の映画になっています。
「ジガルタンダ・ダブルX」