「本日公休」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
台中にある昔ながらの理髪店。店主アールイは40年に渡ってこの店に立ち続け、常連客を相手にハサミの音を響かせている。彼女がひとりで育て上げた3人の子どもたちは既に独立しており、頼りになるのは近所で自動車修理店を営む次女の元夫チュアンだけ。ある日、離れた町から通い続けてくれる常連客の“先生”が病に倒れたことを知ったアールイは、店に「本日公休」の札を掲げ、古びた愛車に乗り込んで先生のもとへ向かう。
というお話です。
台中の下町で40年にわたり理髪店を営む店主のアールイ。今日もいつものように店に立ち、常連客を相手にハサミの音を響かせている。息子の卒業式に出席するために整髪にやって来る紳士、夢枕に立った亡き妻に「髪は黒いほうが良い」と言われ、初めて白髪染めにやって来る老人、親に内緒で流行りのヘアスタイルにして欲しいと懇願する中学生、時が止まったように見える店も、泣いたり笑ったり忙しい。
3人の子どもたちは、すでにそれぞれの道を歩んでいるが、アールイの心配は尽きない。台北でスタイリストをする長女シン、街のヘアサロンで美容師をする次女リン、一攫千金を夢見て定職に就かぬままの長男ナン。皆、実家の店にはなかなか顔を見せず、頼りになるのは、近くで自動車修理店を営む次女の別れた夫チュアンだけ。
そんなある日、アールイは店に「本日公休」の札を掲げ、愛用の理容道具を携えて、古びた愛車で出発する。偶然実家を訪れたシンは、母が店を休んでいる理由をナンやリンに聞くが、誰も知らない。スマホは食卓に置きっぱなしで連絡も取れず、3人は母を案じていた。その頃アールイは、遠くの町に住む常連客が病床にあると聞き、出張散髪に向かっている途中で…。(公式HPより)後は、映画を観てくださいね。
なんだか、ほっこりした懐かしいようなお話でした。昔ながらの理髪店って、日本でもほとんど無くなりましたよね。カッコいい美容室になっちゃったり、チェーン展開の床屋になっちゃったり、昔からの床屋のおばちゃんやおじちゃんは見なくなりました。まぁ、髪型も多様になり、技術も変わったのだと思います。
そんな懐かしい理髪店を営むアールイが主人公です。40年間、一人で理髪店を営みながら3人の子供を育ててきたんです。今は既に3人とも独り立ちして、実家の理髪店にはほとんど寄り付きません。一番下の長男・ナンだけは、今もふらふらしていて胡散臭い儲け話があるとお金をせびりにやってくるくらいなんです。
ただ一人、次女・リンの元夫だけが近所で自動車修理工場を営んでいて、ことあるごとに尋ねてきてくれます。孫の散髪にも連れてきてくれてとても良い男性です。でも、リンとは合わず離婚したんです。アールイの娘は2人とも美容師になり、都会の美容室に勤めています。それぞれ苦労はあるようですが、母親の店に帰ってくる気は無いようでした。
アールイは常連さんに電話をかけて「そろそろ床屋に来る頃ですよ。」と営業しているのですが、”先生”と呼んでいた常連さんが病に倒れたようで、出来たら出張散髪をして欲しいと言われるんです。先生の家は遠くて、電車とバスを乗り継いでいくしかないので、車で行ってみようと準備を始めます。家族には頼めそうになく、娘は散髪代以外に交通費を請求しろと言い始める始末。
この時、アールイの気持ちがとてもよく解りました。いままでずっと遠くても通ってくれていた常連さんに、行くのは遠いから交通費をくれなんて言えませんよね。これ、自分で商売をしている人にしか解らないと思うんです。
確かに経費なんですよ。でもね今まではお客様が通ってくれていたんです。自分の家の近くで行けばよいのに、わざわざ通ってくれていたんです。病に倒れた時くらい、行ってあげるのが優しさだし今まで通ってくださったお礼でしょ。それが商売ってもんでしょ。カスハラというけど、お客と店の関係が良ければ、無理な要求も聞いてあげるべき時だってあるんです。簡単になんでも切れば良いってもんじゃないんですよね。そこら辺が娘には解らないんでしょうね。
アールイはこういう商売をしてきたから40年も仕事を続けられたし、今も常連さんが来てくれているんです。時代は変わっても、彼女の店だけは今も変わらない。だけど彼女がいなくなったら、もうこんな理髪店は無くなっちゃうんでしょうね。寂しいけど時代の流れは止められません。
子供たちの気持ちも解るんです。今の時代に合わせた人気の仕事をしたい、お金も儲けたいと思うのは当たり前で、今頑張らないとと思っているからお母さんの所に帰ってこれないんですよね。お母さんのことはちゃんと気にしていて、お母さんを養えるようになったら一緒に暮らそうと思ってるんじゃないかな。上手く伝わってないけど、そう思っているように見えました。じゃなかったら、いなくなったお母さんを必死で探さないでしょ。本当は優しい家族なんです。
ゆっくりと時間の流れる映画で、日本でいえば昭和っぽい雰囲気でした。懐かしい優しい時間が流れていて、心地よい映画でした。邦画にも、こんな風な理髪店の映画が何作かあります。「バーバー吉野」「パーマネント野ばら」「向田理髪店」など、外国映画だと「バーバー」「大統領の理髪師」「ガザの美容室」などかな。どの映画も良い作品ですが、私は「バーバー吉野」と「パーマネント野ばら」が印象強くて、今でも良い映画だったなぁと思い出します。
台北が舞台の台湾映画で、監督の母親の思い出を映画にしたようでした。アールイ役を名優ルー・シャオフェンが24年ぶりに演じてくださったそうで素晴らしい作品になっています。アールイの気持ちが痛いほど伝わってくるんです。やっぱり上手い方が演じるとこんな風に共感してしまうんですね。うーん、凄いと思いました。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。静かでゆっくりした映画なので、単館系の映画が好きな方に特にお薦めかなと思います。ちょっと寂しくて、懐かしい気持ちになる映画でした。時代は移っていくし自分も年を取っていく。懐かしがっても、もうあの時代には戻れない。それでも自分は今幸せだという気持ちになりました。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「本日公休」