「サユリ」
を観てきました。
ストーリーは、
念願の一戸建てに引っ越してきたものの、どこからか聞こえる奇怪な笑い声とともに、家族が一人ずつ死んでいくという異常事態が発生。神木家を襲う恐怖の原因は、この家に棲みつく少女の霊「サユリ」だった。長男・則雄の前にもサユリの影が近づくが、認知症が進んでいるはずの祖母・春枝が突然意識を取り戻し、祖母と2人、家族を奪ったサユリへの復讐戦に挑む。
というお話です。
神木家は、夢のマイホームへと引っ越してきた。父親の昭雄が郊外にある中古の一軒家を購入したのだ。高校に通う快活な長女・径子は自室を持てることを喜び、中学3年の長男・則雄はバルコニーからの景色を眺め、新生活にワクワクした。が、小学5年生で怖がりの弟・俊だけは何かを感じ、不安な気持ちだった。別居していた祖父母、章造と春枝も一緒に暮らせるようになり、認知症の進む春枝も家族みんなで面倒を見れるようになった。
引っ越してから初登校の日、則雄は学校で隣のクラスの女生徒、初対面の住田に突如「気をつけて」と話しかけられ困惑する。住田には霊感があるようだ。すると理不尽な出来事が神木家を襲い始める。弟思いの径子が俊に暴力を振るい、翌日には父の昭雄が径子の部屋で死んでいた。数日後には突然庭を掘っていた章造が心臓発作で死んでしまう。
則雄を心配した住田が「あの家、早く出て行って! 出ていかないとみんな……」と忠告する。彼女の言葉通りに家では則雄の目の前で、弟、姉、母親が次々と怪死を遂げてゆく。追い詰められ、テーブルの下に隠れるも怯えたままパニック状態の則雄。そこへ不気味な笑い声とともに、謎の少女が近づいてきた。
もうダメと思った瞬間、現れたのはすっかりボケていたはずの、春枝ばあちゃんであった。「夢じゃなかったか。すっかり目が覚めてしまったわい。みんな死んだんか?なんやチラチラ見えとったアレが、全部やりおったか?」そして則雄に発破をかけ、ばあちゃんは「残されたワシらに何ができる?」と問い、さらにこう雄叫びを上げたのだ。「いいか。ワシら二人で、さっきのアレを、地獄送りにしてやるんじゃ! 復讐じゃあ!!!!」 後は、映画を観てくださいね。
漫画原作のホラー映画で楽しみにしていました。予告で、突然に痴呆症だったおばあちゃんが元気になって復讐を始めるという内容に凄く興味があったんです。期待して観に行ったら本当に面白くて、観ながらツッコミを入れてしまいました。怖がるから霊も付け入りやすくなるんだろうなぁと思いました。これ原作が「ミスミソウ」の作者と同じなんですね。そりゃ、面白いわよねぇ。
この映画、何が面白いって、霊が無差別に殺していくだけじゃなく、そこにはちゃんとした理由があるという所が今までのホラー映画とは違っているんです。こんな風に、ちゃんと理由を描いてくれれば対処方も解るし、霊が成仏出来るように動けるでしょ。なんかホラー映画って無差別が多いでしょ。理由もなく殺していくっていうのが多くて、そうなると戦う方も意味なく戦うしかないじゃないですか。それって理に合わないんです。
動物だってなんだって、戦う前に威嚇をするでしょ。それは相手と出来れば戦わなくてよいように脅していて、それで相手も逃げてくれればお互いに傷つかなくて済むじゃないですか。それが最良なのに、最近のホラー映画は殺すことが目的だからどうしようもないのよね。
でも、この「サユリ」はちゃんと理屈に合っていて、お互いに戦わなくてよいように最初は威嚇してくるんですよ。そこで家を出て行けば何もないんだけど、居続けようとすると怒って殺しに来るんです。そういう部分はとても人間的な部分が残っている霊で、本当に悔しくて苦しくて憎くて此の世に未練があるという事なのだと思いました。
この家に引っ越してきた時から、一番下の俊だけが何か不穏な空気を感じているんです。そしてお祖母ちゃんの春枝もボケているけど何かを感じるようで見まわしたりしているんです。この家、地下1階地上2階の戸建物件で、はっきり言って生活はしにくそうな物件でした。別荘として建てられたんじゃないかな。だって、今時各階にトイレが無いし、キッチンとダイニングの繋がりも悪そうだなと思いました。
ホラー映画の舞台になる物件だから、別に住みやすく無くても良いんだけど、あまりにも酷い間取りだったので気になりました。やっと戸建物件を買って、嬉しそうに引っ越してきた一家なのに選択間違えてます。住宅に適した物件なら、こんなに人が死に易くはならなかったと思います。簡単に死んでたもんなぁ。
でね、もちろん”サユリ”が住む人住む人を殺していたのには理由がありました。ネタバレは出来ないので書きませんが、正当な理由です。これは復讐しますよ。人が引っ越して来たら、その真実を知って貰いたかったんじゃないかな。私がサユリでもそうすると思うもん。だから春枝お祖母ちゃんが正気に戻って色々と調査をして対処したのは、サユリが望んでいた事だったのだと思いました。
もしかしたら”サユリ”が春枝お祖母ちゃんの意識にアクセスして、その意識を呼び覚ましたのかもしれません。痴呆症と言っても忘れているだけで脳の記憶の箱にはデータが残っているでしょ。それが上手く繋がらなくなっちゃっているだけなんです。PCで言えば、ハードはそこにあるけどアクセスが出来ないだけなのよね。もっと医学が進めば脳の仕組みも解ってきて、痴呆症になったら別の場所からハードにアクセスして繋げるようになるかもしれません。
この映画は、ただのホラー映画ではありません。深く考えさせられる内容の多い作品だったと思います。児童虐待や痴呆症に関しても描いているし、霊とは何なのかと考える作品でもありました。納得がいかないこと、許せないこと、苦しいこと、辛いこと、色々な感情を抱えたままだと死にきれない、成仏出来ないとなって、生きている人間に害を与え始めるという気持ちが伝わってきました。
それにキャストに強者が入ってるでしょ。お祖母ちゃんに根岸季衣さん、お爺ちゃんがきたろうさん、お父さんが梶原善さんですよ。もう絶対に面白いに決まってますよね。お祖母ちゃんの根岸さんが動き出したらすごい勢いで展開が始まって、ホラーでこんなに動いていいのっていうくらい活躍するんです。面白かったなぁ。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。本当は超を2つ付けたいくらいなんだけど、ホラー映画というジャンルなのに笑える作品ではなく真面目に考えてしまう作品なので、少し押さえさせていただきます。でもホラー映画としては良い作品だったと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「サユリ」