「ぼくが生きてる、ふたつの世界」コーダの日本版と言ってよいと思います。心温まる素敵な映画でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

耳のきこえない両親のもとで愛情を受けて育った五十嵐大。幼い頃は母の“通訳”をすることも気にならなかったが、成長するとともに周囲からの眼にいら立ちを感じるようになる。複雑な心情を持て余したまま成人した大は逃げるように上京しアルバイト生活を始めるが。

というお話です。

 

 

宮城県の小さな港町、五十嵐家に男の子が生まれた。祖父母、両親は、“大”と名付けて誕生を喜ぶ。ほかの家庭と少しだけ違っていたのは、両親の耳がきこえないこと。大の両親である陽介と明子は聾学校で出会い、大恋愛の末、両親に反対されても結婚したのだった。子供の事も両親に反対されたが、陽介と明子は何も心配せずに大を迎えたのだった。

 

愛情いっぱいに育てられた大。幼い大にとっては、大好きな母の“通訳”をすることは“ふつう”の楽しい日常だった。しかし小学校に通うようになってから、次第に、周りから特別視されることに戸惑い、苛立ち、母の明るささえ疎ましくなる。授業参観の通知さえ母親に渡さなかった。

 

 

高校を卒業し、何をしたいか分からずに役者になるためのオーディションを受けながらバイトをしていたが、20歳になり、逃げるように東京へ旅立ちバイトをしながら仕事を探す。小さな会社だがライターとして雇われ、そこで文章を書き始めることに。

 

それと同時期に手話サークルに入り、そこで自分と同じように耳が聞こえない両親から生まれた子を”コーダ”と呼び、日本にも二万人以上の人がいると知り、自分だけじゃないと感じて気が楽になっていく。色々な人々との交流によって、自分がいかに両親に愛され、母親が素晴らしい人物だという事に気が付いていく。後は、映画を観てくださいね。

 

 

なんか、凄く良い映画でした。最後には随分と泣けてしまいました。この映画は、五十嵐大さんというライター兼エッセイストの方の自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(現在は「ぼくが生きてる、ふたつの世界」に改題したようです。)の映画化です。ほどんど原作通りに映画化していたんじゃないかな。

 

聴覚障碍者の子供”コーダ”は、「コーダ あいのうた」(フランス映画”エール!”のリメイク版)で世界に知られるようになったと思います。私もその映画を観るまで知りませんでした。両親ともに耳が聞こえないと、どうしても子供が手話を覚えて通訳をするようになってしまいますよね。小さい頃は世界が狭いから良いですが、学校に行き始めれば沢山の人と出会うし世界が広がるので、自分の家が特異なことに気が付いてしまうんです。

 

 

五十嵐さんの家は母方の祖父母も一緒に住んでいたので、洋画のコーダほどは大変ではなかったのかなと思いました。コーダは自営業の家族だけでの生活だったので、娘がいつも一緒に出掛けて通訳をしていましたが、五十嵐家はお父さんも働いていたし、お母さんも内職のようなことをしていて祖父母もいたので、大さんがいつも通訳をしなければいけないという環境ではなかったようでした。

 

それでも子供にとっては負担だろうし、他の家と違うことで特別視されるのは嫌だったのでしょうね。思春期には、結構母親に酷いことを言ったりしていました。お母さんはすっごく傷ついたと思うし辛かったと思うけど、それでも大さんを愛して、いつも微笑んているような方でした。お母さんは何も悪くない、たまたま人と違っただけなのに、人間って残酷ですよね。

 

 

そんな思春期も過ぎて大人になり、仕事に就いて、色々な方に知り合う事により、自分が今まで何も知らなかったことに気が付くんです。世界って自分が思っているよりもすんごく大きくて、知らないことが沢山あるんですよね。もちろん同じところだけに留まって世界を知らずに死んでいく方も沢山いるのですが、少しでも外を見てみようと動き出すと、とんでもなく知らないことが山ほどあることに気が付いてくる。

 

人と知り合うこともそうだけど、本を読んで、映画を観て、色々な場所に行ってみる、そんな事が世界を知る一歩になるんです。そして気になったことを追求していく。私は知らないよりも知った方が人生は面白いし色彩豊かになると思うけどな。会社と家の往復だけという方も多いと思うけど、飛び出してみることも大切だと思うよ。

 

 

大さんも仕事を始めて、手話サークルに入って、ふと自分について書いて見ようかと思ったのかなと思います。色々な人との出会いで、人間は失敗するモノだし見栄を張って隠し事をしていても意味が無いという事に気が付いたんじゃないかな。正直に自分のまま生きて行く方が楽でしょ。もしそれで人を傷つけてしまったら謝って許して貰えばよい。それが人間らしいよね。

 

そんな中で、母親に対しての自分の言葉や行為について考え直したのだと思いました。だって、お母さんがいつも微笑んでくれていたのは大さんを元気づけるためだったと思うし、彼を守るためだったんでしょ。お母さんは何を言われても、大さんを愛して守ってくれていたんですよ。それが伝わってくる映画でした。それが解ったところで凄く泣けました。

 

 

大さんのお母さんを演じていた俳優さんは、ご自分もろう者の忍足さんという方でした。とっても美しくて優しそうな俳優さんでした。主演の大さんを吉沢さんが演じていて素晴らしかったです。彼は本当に上手いですね。だって、気持ちがじんわりと伝わってくるんですもん。学生の頃のイライラした大さんと、大人になって落ち着いてきて、お母さんの気持ちも理解出来ている大さんは同じ人物なんだけど、凄く成長したねって解るように演じているので、感動が倍増するんです。

 

凄く良い映画でした。原作者の五十嵐大さんも素晴らしい人なんだろうけど、彼のご両親はもっともっと素晴らしい人なんだろうなという事が伝わってきました。愛情深く育てなければ大さんはご両親の愛に気が付かなかっただろうし、こんなに優しいお話にならなかったと思うんです。家族を大切に思っていれば必ず伝わるし、分かり合えるんじゃないかなと思える映画でした。

 

ま、親子でも自分の事ばかりで家族の事を思いやれない人間もいますけどね。それは本人が学ぼうとしなかったせいでしょ。それじゃ愛しても貰えないし、欲しいモノは手に入らない。人生とはそういうモノです。世界を知って、人を知って、家族を知って、愛を持たなくちゃね。大切な事だと思いました。

 

 

私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。素晴らしい映画で、美しい映像でした。本当に感動したし、泣けたし、気持ちよくなりました。やっぱり世界は美しいと思える映画って、素敵ですよね。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」