「墓泥棒と失われた女神」アーサーが探すと何故か見つかる遺跡。彼は過去に呼ばれていたのかもしれない | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「墓泥棒と失われた女神」

 

を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1980年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。忘れられない恋人の影を追うアーサーには、紀元前に繁栄した遺跡を発見できるという不思議な力があった。アーサーはその能力を利用して墓を暴いては仲間たちと売りさばいて日銭を稼いでいる。ある日、遺跡を見つけ、希少価値を持つ美しい女神像を発見するが、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動へと発展していく。

というお話です。

 

 

さえない男が一人、列車で寝ている。その地方の人間ではない男に興味深々の女性たち。彼はイギリス人だが、刑務所から出てきて家に帰る途中であり機嫌が悪かった。何故なら墓を暴いているところを警察に捕まり、自分一人だけ捕まり仲間は逃げたのだ。

80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町。考古学愛好家のイギリス人・アーサーは、紀元前に繁栄した古代エトルリア人の墓をなぜか発見できる特殊能力を持っていた。その力を使って遺跡を見つけ、墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼ぐ日々。そんなアーサーにはもうひとつ探しているものがある。それは行方知れずの恋人・ベニアミーナだ。



 

ベニアミーナの母フローラもアーサーが彼女を見つけてくれることを期待している。しかし彼女の失踪には何やら事情があるようだ。アーサーは悲しい目をしながらも話を合わせている。

ある日、海辺で仲間と騒いでいると、アーサーは何かを感じて土を掘り始める。すると地下空洞へ降りる穴が見つかり、その中には稀少な価値を持つ美しい女神像が置かれていた。この女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展していく。後は、映画を観てくださいね。

 

 

アリーチェ・ロルバケル監督の新作です。現実の中に存在する不思議な力や出来事を描く監督さんですよね。私は「幸福なラザロ」が好きでしたが、今回も主人公が夢の中なのか現実なのか混乱する場面があり、やっぱり良かったです。日常の中に存在するファンタジーと言って良いのかな。

 

主人公のアーサーはイギリス人で、きっと恋人ベニアミーナと一緒に暮らすために、この地イタリアのトスカーナに来たのだと思います。幸せな時期もあったんだと思いますよ。彼女を思い出す時のアーサーは微笑んでいましたから。そして、何があったのかは解りませんが、ベニアミーナが失踪してしまったらしく、アーサーは一人になってしまいます。

 

 

ベニアミーナの母親フローラがアーサーを可愛がってくれて、何とか過ごしていたんだと思うけど、きっと墓泥棒をして捕まったのが転機だったんじゃないかな。墓泥棒が犯罪なのだということをしっかりと認識したんだと思うんです。解っていたけど友達と一緒だし稼げるし、と思って罪悪感を押し殺していたんだと思うんです。

 

なので、刑務所から出てきた最初の場面の彼の顔はとても沈んでいるんです。そして友人が迎えに来ても車に乗りたがらないんです。もう墓泥棒はしたくなかったんじゃないかな。でも、家に帰れば何もなく、金も無く、仕事も無い。ベニアミーナがいない世界なんてどうでもよかったのかもしれません。

 

 

そして結局、墓泥棒に戻るんだけど、そこで手つかずの遺跡を見つけて大騒ぎになるんです。このアーサーの超能力だけど、いつからあったんですかね。考古学が好きだったのは元々だろうけど、この探せる能力はもしかしたらベニアミーナが居なくなってからなのかもしれません。彼女を求めるアーサーと、ベニアミーナからの思いが重なった時に見つけられているのかもしれない。

 

そうなると、アーサーが何かを見つける時はベニアミーナが彼を呼んでいる時なのかもしれません。この二人に関しては、”オルフェウスとエウリュディケ”がモチーフとなっているんです。ネタバレしたくないけど、観たら理解出来るネタバレだけさせてください。

 

 

アーサーは、ある場所で墓を暴いて穴の中に一人で入っていくのですが、土砂崩れが起きるんです。もうダメかと思うと、上から赤い糸が下がってくるんです。ここ、運命の恋人には赤い糸が繋がっているという伝説と、芥川龍之介の蜘蛛の糸だと思いました。釈迦がカンダタのいる地獄に蜘蛛の糸を垂らすけど、結局、助からないってお話です。

 

アーサーとベニアミーナは赤い糸で繋がっている恋人同士。運命の恋人なんです。なので、アーサーが彼女を地獄から現世に連れ戻そうと糸を引くんですけど、途中で切れてしまう。エウリュディケと同じですよね。やっぱり助けられない。でもね、アーサーは考えたと思うんです。じゃ、自分があっちに行けばいいじゃないかって。彼女がいない人生より、彼女と共にいられるならどこでも良いというほど彼女を愛していたんじゃないかな。

 

 

この出来事がアーサーの夢の中なのか、実際に起きることなのかは映画で観て確認してください。アーサーは、何度も夢を見ていて、列車の乗客に再会して彼らに自分の墓の物を探しているんだと言われたりするんです。驚いて、ハッとすると目覚めるんです。なので、何が現実なのかは観る人が決めること。でもね、私なら愛する人がいない人生を続けるよりも、一緒にいられる世界を選んでしまうかもしれないなって思いました。

 

墓泥棒に関してですが、アーサーにとってはロマンだったんだと思うけど、彼以外の人間にとっては欲望なんです。お金を手に入れるための手段であり、その物の価値なんてどーでも良くて、高く売れればそれで良かったんです。アーサーは友達だからと言われながら、ずっといい様に使われていたんです。異邦人には冷たい世界だと思いました。

 

 

誰もがアーサーを金づるとしか思っていなくて、ベニアミーナやフローラだけがアーサーをそのまま見てくれていたんじゃないかな。そんな彼の前に、イタリアという女性が現れてちょっとイイ感じになるんだけど、やっぱりベニアミーナがアーサーを離さなかったんじゃないかと思いました。

 

私にはとっても素敵な愛の物語に見えました。もし、ベニアミーナがアーサーのそばにいたら、きっと考古学として遺跡を公にしただろうし、盗品を売るなんてことはしなかったんじゃないかな。全てが途中で狂ってしまい、アーサーは選択を強いられることになったのかなと思いました。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。私は好きでした。私には深い愛のお話に見えたし、日本の関係のモノが使われているように思えて感動でした。芥川はいい話を書いているよねぇ。やっぱり日本文学は素晴らしい。海外でも認められ始めているので、これからが楽しみです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「墓泥棒と失われた女神」