「蛇の道」淡々と描かれる復讐の中にもっと深い闇が描かれているのを見逃さないでください。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「蛇の道」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

8歳の愛娘を何者かに惨殺された父親アルベール・バシュレは、偶然知り合った精神科医・新島小夜子の助けを借りながら、犯人を突き止めて復讐を果たすべく殺意を燃やしていた。やがて2人はとある財団の関係者たちを拉致し、次第に真相が明らかになっていくが。

というお話です。

 

 

何者かによって8歳の愛娘を殺された父アルベール・バシュレ。精神科医の新島小夜子と出会い、彼女に協力をして貰って娘の復讐をしようと動き出す。ティポー・ラヴァルという男が関係しているという情報を小夜子が掴み、2人で彼を拉致するために住んでいるマンションへと向かう。ラヴァルが油断した隙にアルベールがスタンガンで気絶させ、死体袋にいれて運び出す。

ラヴァルに子供たちを殺した首謀者は誰でどこにいるかを聞き出すが、彼は詳しく知らず、ある男の名前を言い、彼なら知っているかもと伝える。その男を捕まえに行こうという小夜子の前で、アルベールはラヴァルを殺してしまう。



 

次にラヴァルが言っていた関係者の男を拉致し、やはり情報を聞き出そうとするが、今度は警備主任が知っていると言い、そしてアルベールはまたもこの男を殺してしまう。警備主任だったという男を捕まえ、今度こそと情報を聞き出そうとするが、自分は人違いだがその男がいる場所を知っていると言って、2人を案内するのだが、またしてもアルベールはその男を殺してしまう。

娘の仇を討つためにある財団の関係施設へと訪ねてきた2人。そこには子供の臓器などが標本として置かれ、何人もの警備員が配置されている。財団は子供たちを連れてきて人身売買を行い、残った子供は解体して臓器を売っていたのだ。そしてその解体作業のビデオまでも販売していた。

驚くアルベールだが、何故か小夜子がフッと消えてしまい…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

黒沢監督が以前に撮った映画をセリフリメイクした作品です。内容は殆ど同じでした。キャラクターの変更はあったものの、それ以外は変わらないように思いました。主人公が女性で精神科医という設定になっていて、以前は男性で教師だったので、そこら辺が違うかしら。

 

唐突に二人が男性を拉致しようとするところから始まるんですよね。一瞬、え?と思いますが、笑ってしまいました。拉致する相手がマチュー・アマルリックで、凄く人が良さそうな顔で小夜子に話しかけているのに、いきなりスタンガンでビビッとやられちゃうんです。うーん酷い。

 

そしてその後が笑えるんだけど、マンションのホールで倒されて、それを死体袋に入れて、街中を引きずって車まで入れに行くんです。おいおい、どう考えてもマンション内で誰かに見られているし、道路を引きずってたら監視カメラに引っかかるぞって思いました。まぁ、設定が少し前の時代なのかな。

 

 

以前、「闇の子供たち」という邦画があり、タイで子供たちが売春させられて、使いものにならなくなると臓器売買するために殺されるという実話をベースにしたお話でした。たしか2008年の映画だからもう20年近く前に問題になっていたんです。なので、この映画も20年くらい前の設定でやっているのかな。それならいたるところに監視カメラは無いので、死体袋を引きずってても大丈夫だったかも。(笑)

 

他の人の拉致に関しても、とってもやり方が粗いんです。以前の映画でもそうでしたが、今回もそのまま同じように演出されていました。だって女性の小夜子と、格闘などは一切やっていなさそうなアルベールですから、反撃されたらすぐにやられちゃうんです。ちゃんと作戦を立てずに、行き当たりばったりでスタンガンを当てたり殴ったりするので、やり返されてボロボロになったりして、仕方なくそこにある消火器で殴ったりと、結構無様な戦いが続きます。

 

 

そういう部分が何となくリアルでもあり楽しめました。だけどそれ、どう考えても誰かに見られているから警察に捕まると思うけどなぁ。そしてアルベールは毎回我慢できずに殺してしまうんです。聞き出したんだから逃がせばよいのに許せなかったんでしょうね。小夜子は止めようとする素振りは見せていたけど、実は彼女がアルベールを操って殺さずにはいられないように誘導していたんだろうなと後から思いました。

 

最初、アルベールと小夜子の関係はしっかりと描かれず、アルベールを助けている精神科医で”とても親切な人”くらいなんです。小夜子が情報を集めて、財団関係者を二人で拉致して隠れ家に隠すという展開で、なんで親切でこんなことが出来るのかと疑問でした。アルベールは裏に何かあると考えなかったのかな。アホっぽいなぁと思いました。いくら親切でも、人を拉致して殺人することを手伝う人間なんてどこにいるのよ。(笑)

 

 

映画が進んでいくにつれ、当事者のアルベールが怒り苦しんで財団関係者とやりあっていくので、親切な精神科医の小夜子は一体何なんだろうかと彼女の存在が大きくなっていきます。通常なら復讐するアルベールが復讐者として活躍すべきなのに、なんだかとっても不思議な状況が続くんです。小夜子さん、良い人すぎるんだけどってなるんだけど、実は違うんですよねぇ。

 

そして真実が明かされると、全然映画の観方が違ってくるんです。誰が首謀者だったのか、誰が何をしたかったのか、何の復讐だったのかということが、今まで見ていた世界とは全く違ってくるんです。それまでは何の計画性も無いし無茶な拉致をして殺してしまって、死体はどうするんだよって思っていたけど、実は、綿密に練られた計画があって、既に財団の基地には準備がしてあったのだから驚いてしまいます。

 

 

きっと死体も問題なくかたずけられるのでしょうね。だって、子供を解体していた施設があった場所ですよ。いくらでも死体なんて処理出来るでしょ。心配なのは子供たちだけだけど、そこはきっと警察に保護させたんだろうなと思います。

 

ここまで綿密な計画を立てていたにも関わらず、最後の最後で、また新しいターゲットを見つけてしまうという、恐ろしい展開になっていて、ゾッとしました。それに柴咲さんの目が死んでいてビックリでした。確かにもし自分が彼女の立場なら、もう目なんて死んでますよ。全てをやり遂げるまで希望なんて無いんですから。

 

最後に西島さんの演じた患者の役の意味は、終わらない苦しみを描くだけだったのかなぁ。ウザい患者だった彼を、言葉一つで小夜子が追い詰めたのではないかと私は感じました。彼女は言葉一つで人を操れる追い込めるという能力を持っているという証明だったのではないかしら。

 

 

この映画、よく練られていたし、オオッと思うところも多かったし、子供の人身売買・臓器売買などの内容を知っていると、心に刺さるお話でした。こんなことがフランスで起きていたなんて誰も信じられないと思うけど、世界で行われているようです。色々な国で子供の人身売買についての映画も作られているのですが、あまり話題にはならないですね。もう少し問題を取り上げて欲しいけど、エグいので難しいのかな。

 

観る前に出来れば「闇の子供たち」という映画を観てから観ていただいた方が、よりこの映画の中で子供たちを苦しめていることが酷い事なのだということが解ると思います。この映画では子供たちが何をされたのかは描かれませんが、親からしたら、自分の子供がこんな酷いことをされて、身体をバラバラにされたと思ったら心が死んでしまいます。小夜子の目が死んでいたのも理解出来ると思います。

 

 

私はこの映画、お薦めしたいと思います。以前の映画も観ていますが、私は新しい方が好きかな。このキャスティングの方が、より怖くなっていたと思います。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「蛇の道」