「スリープ」日常の中に入り込んだ恐怖がじわじわと大きくなり人間を壊していく姿が生々しかったです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「スリープ」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

ヒョンスと妊娠中の妻スジンは、幸せな結婚生活を送っていた。ある夜、ヒョンスが起き上がり「誰か入ってきた」とつぶやくと家の中に不穏な気配が漂い始める。次の日からヒョンスは眠る度に異常行動を繰り返すようになる。睡眠クリニックを受診するがスジンの母は巫女に相談すべきだとお札を持ってくる。そして。

というお話です。

 

 

ヒョンスと妊娠中の妻スジンは我が子の誕生を控え、幸せな結婚生活を送っていた。ヒョンスは役者としても認められ始め、スジンは何の不安も無く暮らしていたのだ。

ある夜、スジンの隣で眠っていたヒョンスが突然起き上がり「誰か入ってきた」とつぶやくと、それに呼応するかのように家の中に不穏な気配が漂いはじめる。次の朝、何事も無かったようにすべてを忘れているヒョンス。不思議に思いながらもスジンは送り出した。

その日、下階の住人が引っ越しの挨拶に来て、言いにくいのだが明け方の騒音が1週間続いていると苦情を言ってきた。ヒョンスもスジンも身に覚えがない。何だったのだろうとヒョンスと話をして眠りにつく。



 

すると、その夜からヒョンスは眠りにつくたびに異常行動を繰り返すようになる。頬をかきむしったり、生肉を食べ、生魚を丸のみにし、窓から飛び降りようとする。驚いたスジンがヒョンスを止めて事なきを得るが、これは対処をしなくてはと動き出す。

夫婦は睡眠クリニックを受診するが、スジンの母は超自然的な力に頼るべきだと話し、巫女から手に入れたお札を夫婦に渡す。スジンはお札なんてと言って医者に頼るのだが、治療の進展は見られない。ヒョンスの病状はどんどん酷くなっていく。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、じわじわくる怖さと不気味さが観ているこちらを圧迫してくるような感じなんです。最初、被害を受ける妻のスジンに感情移入して息苦しくなっていくんだけど、ある時点から段々と立場が逆転していき、ヒョンスの方が可哀そうに見えてくるんです。スジンはどんどん精神的に追い詰められていき、彼女自身が恐怖を身にまとってしまいヒョンスの恐怖となって行くんです。そこら辺がさすがポン・ジュノ監督の助監督だっただけのことはあるという作品でした。

 

普通の夫婦なんですよ。でも妻が妊娠とかすると、夫は無意識だけどその責任の重圧をストレスに感じて、精神的な負担が大きくなっているハズなんです。別に悪い事じゃなく、誰だって新しい家族が増えれば経済的なこととか色々と不安になるでしょ。だから夢遊病になったのだと思うんですよ。それが、他の色々な事と重なって、おかしな方向に行ってしまうんです。

 

 

おかしな出来事があってから、直ぐに睡眠クリニックに行って夢遊病の診断をされるんです。夢遊病患者が起こす行動と同じことをヒョンスはやっていたんですよ。夢遊病の特徴が書いてあるパンフレットに同じことが書いてあるんです。医者は少しづつ治療を続けていきましょうと言って薬を出してくれるんだけど、薬を飲んでいても夜におかしな行動を続けてしまうんです。

 

まぁ普通は薬を飲み始めたからと言って、直ぐに次の日から夢遊病が完全に治るなんて無いですよね。でも、ヒョンスとスジンは怖がってしまっているので大変なんです。子供はもうすぐ産まれそうだし、精神的に追い詰められていくんです。

 

 

そして、スジンの子供が生まれます。でもヒョンスの夢遊病は治っておらず、家に帰って一緒に暮らしていますがスジンは夜が怖くてたまりません。夜の行動は酷くなっていき、スジンは子供と一緒にお風呂に鍵をかけて寝たりして、ヒョンスは自分だけ車で寝ようとしたりします。こんなになるなら、夢遊病が治るまで夜は別々に暮らせばよいと思うのですが、この夫婦の約束が”困難は夫婦二人で乗り越える”ということみたいで、一緒にいるんですよねぇ。

 

二人で病気を治して幸せになろうと頑張っているところに、スジンの母親がとうとう巫女さんを連れてきちゃいます。それは絶対に何かあるわよって言って、見て貰うために連れてくるんです。いやぁ解るけど、これやっちゃうとどうしても霊とかの方向になって行っちゃいますよねぇ。ぼったくられるだけなんだけどね。

 

 

巫女がまた色々なことをいうので、スジンの不安はどんどん大きくなってしまいます。スジンは自分のせいでヒョンスがこんなことになってしまったと思い、必死でこうなった原因を突き止めようと動き始めます。それまではヒョンスの方が病気を治そうと躍起になって薬を強くして欲しいとか治療に積極的だったのに、少し落ち着いてきたところに、今度はスジンがおかしくなってしまいます。

 

この夫婦間での気持ちのシーソーゲーム的なところが面白いと思いました。病気なのか、それとも心霊的なものなのか、何を信じてよいのか解らなくなって、二人が迷走していく姿が淡々と描かれてとても怖いんです。見えない敵が迫って来る感じが凄いストレスになり、恐怖が大きくなっていくんです。

 

夢遊病は病気だから治療して貰えば良くなるのだけど、いつ良くなるのかは解りませんよね。そして心霊系だったらお祓いをしてというけど、本当に霊なんているのか、見えないものが祓えるのかということなんです。どちらも確実なモノじゃないから、心が追いついていかないんです。

 

 

これ映画だったから良いけど、もしこの立場に置かれたらキツいだろうなぁ。この夫婦、よくもったなと思いました。私なら、もっと初期の段階で別居しましょうとか、気持ち悪いから治るまで帰って来ないでとか言ってしまいそうです。だって生まれたばかりの子を育てながら、こんな環境で生活をしろだなんて無理でしょ。”あんたいい加減にしなさいよ”って言っちゃうだろうな。

 

本当に最後の最後まで怖い映画でした。誰も悪くないのに、追い詰められていってしまう、恐怖に飲み込まれて行ってしまう二人が可哀そうでした。ただ幽霊が出てくるとかの恐怖ではなく、誰かに呪われているんじゃないかとか犯人が近くにいるんじゃないかとか、周りも信じられなくなり、家族も信じられなくなる、そんな人間の恐怖が描かれているホラー映画でした。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。これ、もし自分がこの中の誰かの立場になったらと思うと本当に怖いです。だって悪くない夫を憎みだしたり、近隣の人を疑い出したり、誰も信じられなくなるんですもん。信じるのは自分だけという気持ちになって行き、暴走してしまう姿が何とも言えない恐怖でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「スリープ」