【イタリア映画祭2024】
「人生の最初の日」
(8作目)
を観てきました。
ストーリーは、
シングルマザーで娘を育てていたアリアンナは、16歳の娘の突然死から立ち直れずにいる。器械体操の元オリンピック選手エミリアは、競技中に落下し車椅子の生活を送っている。人気ライフ・コーチのナポレオーネは、よりよい生き方を求める人々にやる気を与えつつ、自分自身の人生に刺激を見出せずにいる。大食い系動画でフォロワーを集める少年ダニエーレはいじめを受けているが両親は彼の本音を聞こうともしない。
ある晩、アリアンナは拳銃で、エミリアはホテルの屋上から身を投げ、ナポレオーネは橋から身を投げ、糖尿病を患うダニエーレはドーナツを大量に食べて死のうとする。4人が自殺を図った瞬間、不思議な男が現れる。男は彼らに1週間の猶予を与えると告げて、ホテルに連れていく。
ホテルに集った4人は、生きても死んでもいない状態で、奇妙な共同生活を送ることになる。ホテルに1部屋づつ当てがわれ、食べなくても飲まなくても良く、眠らなくても問題が無いのだ。彼らは男が運転するステーションワゴンに乗って、自分が居なくなった世界で周りの人間たちがどうなっていくのかを目撃することになる。後は、映画を観てくださいね。
キリスト教圏のイタリアには珍しい自殺を描いた映画でした。キリスト教では自殺は罪ですから。本当はお葬式もして貰えないはずなんです。神の教えに背いたのだから神の下には行けないので、教会で葬式は出来ないんです。本当はね。でも、大体は理屈をつけて自殺じゃなかったということで葬式をしています。私の知人の牧師も自殺をしましたが、教会で葬式をしました。
そんなキリスト教圏のイタリアでこの映画を作るのは、ちょっと大変だったようです。監督は「おとなの事情」を作ったパオロ・ジェノヴェーゼさんなので、次は何を作るのかと周りが期待していたようなのですが、自殺の話を撮りたいとプロデューサーに話したら、良い顔をされなかったそうです。
お話は、4人がそれぞれに自殺をするのですが、死の瞬間に暗転となり時が止まり、男が迎えに来ます。皆、言われるがままワゴン車に乗り込み、一体自分はどうなったんだろうと考えながらホテルに着きます。そこで1部屋づつ鍵を渡され、部屋にはいると冷蔵庫には何も入っておらず、食事の用意もありません。どういうことと男に聞くと、君たちは生きても死んでもいない状態なので、何も食べなくても飲まなくても害はないし、そういう欲求もないだろうと言われます。気が付くと確かにお腹も空かないし喉も乾きません。
自分たちの状況を少し理解した4人は、男が案内するまま4人それぞれが関係した場所を周り、自分が死んだ後にどうなるのかということを目撃していくんです。自分が死んだ後の世界を見ていくと、それまで自分が気が付かなかった人の心を知ることとなり、後悔したり、憤ったり、迷ったり、色々な感情が渦巻くんです。
生きているとどこかに欲が出てしまうから素直に話をすることが出来なくなりますよね。カッコ悪くても何でも話が出来れば、もしかしたら孤独に”死んでしまおう”なんて思わなかったかもしれない。
でもね、以前に書いた事があるけど、自殺が出来るという選択肢を持つことは悪い事じゃないと思うんです。逃げることが出来ると思っていればチャレンジする勇気も出るかもしれないし、恥ずかしい事になっても死んでしまえばいいじゃんって思っていることで前に進めることってあるんですよね。
これも前に書いたけど、私は「完全自殺マニュアル」という本を手に入れてから、安心して生きれるようになりました。いつでも死のうと思えば死ねるじゃんと解ったからです。さすがに新幹線に飛び込んだ少女の話は真似できないと思ったけど(ぶつかって身体が粉のように飛散したそうです。)、それ以外は出来そうだなーと思ったら、いつでも死ねるから生きようと思ったんです。
自殺をしたいと思うことはおかしい事ではないです。誰でも考えたことがあるだろうし、反対に考えたことが無い人間は脳を使ってないんです。誰でも上手く行かないことがあって逃げ出したくなるのは当たり前だし、それは悪い事ではありません。キリスト教では罪と言われるけど、日本ではそんな厳しい事言いませんから。
この映画でも自殺を責めている訳ではないんです。自殺をしたなら、それ相当の苦しみがあっただろうし仕方がない事なんだけど、今一度、考える時間を1週間あげるので考えてみませんかという映画です。この1週間って大切な時間だと思うんです。自殺って勢いでするものだから、1週間考える時間が貰えたら、やっぱりという人も出てくると思うんです。
もちろんそれでも逃げたい人はいるだろうし、それは止められないけど、1週間考えての答えなら仕方ないんじゃないの?そういう人は送ってあげましょうよ。という考え方に見えました。
謎の男は案内人なんだけど、彼も色々な経験をしたから案内人になったのだと思うんです。だから彼は、もし自殺を止めてくれるならそうなったら良いなぁと思っているんです。でも、彼の口から誘導するようなことは一切しません。彼は見守るだけなんです。それがお仕事なんですね。
この映画、イタリアでも人気だったようですが、きっと日本の方が、この内容はよく理解して貰えると思います。日本は宗教色も強くないし、逃げたいという人に無理をさせる国民性じゃないと思うんです。どちらかというと、残念と思いながらも楽になれて良かったねと言ってあげられる国民だと思うんです。
だからこの映画は日本で公開して欲しいなぁ。イタリアの一流俳優が揃っているし、それぞれの人物事情も日本人なら理解出来ると思うんですよね。誰もが沢山のプレッシャーなどに押しつぶされそうになっている時、ふと逃げてしまおうと何も考えずに飛び込んでしまうってあるでしょ。もしやり直せるなら止める人もいるだろうし、一度自殺未遂をしていつでも死ねると確認出来たら生きようと思う人も出てくるんじゃないかな。
私はこの映画、超!超!お薦めしたいと思います。私はとても気に入った作品です。これは日本でも公開していただいて、皆さんに観て欲しいです。自殺というものを悪い事として包み隠すより、逃げ道はあるからやってみようという方に転換していけるような映画なので、面白いし感動します。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「人生の最初の日」