「ミッシング」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの独占最速試写会が当選いたしまして観せていただきました。
ストーリーは、
沙織里の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼るのだが、砂田も視聴率の取れないニュースは流せないと言われ、世間の関心を煽るような記事に変えさせられていく。メディアに踊らされ、SNSで中傷されるようになり、沙織里は壊れていく。
というお話です。
とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。
娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫の豊と事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。しかし、必死でビラ配りをしたり、娘の事を訴えても、いつも同じような内容にしかならず、TV局としてもメリットが無いとニュースを流すのに難色を示すようになり、砂田も苦境に立たされる。
砂田は局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。砂田は報道としておかしいと訴えるが聞き入れて貰えない。そして、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが報道されると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。
そして沙織里の弟の圭吾にも取材が入るが、元々口ベタで気持ちを伝えるのが下手な圭吾は、その挙動不審な態度によって、ＳＮＳ上で犯人ではないかと疑われてしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、狂気をはらんでいく。
それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。果たして娘は見つかるのか。沙織里と豊、圭吾の未来はどうなっていくのか。後は、映画を観てくださいね。
これは凄い話でした。以前、吉田監督の「告白」でも同じようなことを書いたと思いますが、今回も凄いです。吉田監督って、最初「純喫茶磯部」を観た時から変わってるなぁ～と思ったのですが、その後も「ヒメアノ～ル」や「愛しのアイリーン」と強烈な映画を連発していて、今回はどう来るかなぁと思っていましたが、今回は題材が失踪という現実にも起こっている事件を扱っているので、笑える場面は少なめで、ツッコみどころは残して、こちらの心に響くような内容になっていました。
沙織里の娘・美羽は圭吾に公園で遊んでもらっていて、そこから家に帰る間300mくらいの間にいなくなってしまうんです。いつもの事なのに、何故かその日だけは圭吾に送って貰わず、失踪してしまったんです。警察にも届けて、自分たちでも情報を集めるのですが、3か月たっても情報は入ってきません。
TVでニュースにして貰えば情報が集まるのではと考えて今まで取材を受けてきましたが、解決には至らず世間も美羽ちゃんの事を忘れ始めています。どんな事件でもそうなのですが、この情報の劣化というか、何度も同じ情報を流されても、またですかと思ってスルーしてしまいます。飽きると言ったら語弊があるかもしれないけど、時間が経てば記憶だって薄れるし新しい事件はどんどん起きてくる。
考えてみれば、北朝鮮の拉致被害者たちだって何十年も経ってから本当だってわかったんでしょ。新潟の小学生誘拐監禁事件だって、10年近く経ってから助け出されたんですよね。信じられないような事件が本当に起こっているのですから、失踪事件も忘れてはいけませんよね。ご両親の苦しみが本当に伝わってきました。
美羽という娘が失踪してしまった母親がが主人公ですが、もう一人の主人公と言って良いのが砂田というＴＶ局に勤める記者です。彼は”TVとは真実を伝える”ものだと考えているんです。でも、局側は視聴率を重視し、真実を報道しながらも内容を湾曲して人々が興味を持つように仕向けろというんです。うーん、確かにお店だって売れる商品を並べなければ潰れちゃいますもんね。マスゴミのそれこそ真実を描いていて、マジでマスゴミだなと思いました。
そして私はもう一人、沙織里の弟・圭吾も準主役と言って良いのではないかと思いました。沙織里と圭吾、姉弟なのですが、あまり仲がよさそうではありません。でもね、よく見ているとこの二人とても似ていて陰と陽なんです。姉は陽でどんどん自分から前に出ていくタイプ、圭吾はいつまでも大人しくて考えていることも言えず思ったことも伝えられないので、どうしても誤解されてしまうんです。でも、沙織里も同じですよね。バンバンと言いすぎて誤解されてしまう。似ているんです。
この表裏のような二人を描くことで、罪悪感が与える恐怖を描いているのかなと思いました。沙織里は美羽を預けてコンサートに行っていた、圭吾は公園で遊んでいたのに送ってやらずに失踪させてしまった。どちらも自分のせいで失踪したんだと思っているんです。本当に可愛そうでした。特に圭吾の気持ちがとても解って観ていられませんでした。ずっと美羽の事を考えているのに、それを伝えられないんです。
夫はいつも沙織里を支えて、喧嘩をしても必ず先に折れて、沙織里の好きなようにさせていました。よく出来た夫だと思います。いくら妻とはいえ、ここまで感情の起伏が激しくなってしまったら、耐えられなくなる夫も多いと思います。じっと我慢していて、大変だなと思いました。私があんな風になったら、すぐに病院に連れていかれてしまうだろうな。
映画の中で、沙織里宛てに匿名の人物たちから嫌がらせのSNSが入ってきます。関係ない人たちが、何故そんな嫌がらせをするんでしょうね。人が苦しんでいる時に、傷口に塩を擦り付けるような行為は断じて許せません。応援してあげるならまだしも、嫌がらせをするなんて、きっと自分が負け犬だから、誰かを批判して自分と同じように貶めたいんでしょう。心が貧困ですよね。そんな人間には絶対になりたく無いと思いました。
私、この映画の内容を聞いた時、アンジェリーナ・ジョリーが主演した「チェンジリング」を思い出しました。同じように子供が失踪してしまい、母親が必死で探し回るというお話です。題名が似ていたので、もしかしてリメイクと思ったけど、まったく違うものでした。こちらは1928年が舞台で、実際に起こった事件を元に描いています。クリント・イーストウッド監督作品で、アカデミー賞にノミネートされた作品です。
同じ誘拐でも米国は恐ろしいなと思うような内容でした。なんたって警察や政治家がグルで子供の失踪を解決したように見せかけようとするんですから、酷い話です。
この失踪事件はご両親とその周りの人間だけが主になっていて、警察が手掛かりを見つけて大掛かりな捜索をするなどの場面は一切ありませんでした。ご両親が中心になり、娘を捜すというお話でした。日本の警察は信用出来るといいなぁと思ったけど、あまり当てにはならないのかな。
米国の対処方法と日本の対処方法、年代が違いますがこの２作を観るとちょっと面白いと思いました。やはり人種の違いもあると思うけど、米国で起きたような事件は日本では起きないだろうなと思うような展開でした。逆に、日本なら取り替えっ子なんて連れてこないと思うけどなぁ。絶対に日本の母親は自分の子として認めないでしょ。
話を戻して、突然に大切な人が目の前から消えたら、どうなってしまうんでしょうね。沙織里役の石原さんの演技が素晴らしくて、私はずーっと泣いてしまいましたよ。母親だったらあんな風になってしまうだろうと思います。辛い映画でした。石原さんがヤンママっぽい設定になっていたので、髪をボディソープで洗ったりして質を悪くして、ヤンママを演じたそうです。すんごい役者魂！
私は、この映画、超！超！お薦めしたいと思います。本当に良い映画だし、面白いし、考えさせられました。素晴らしい映画です。これは観るべき作品だと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ミッシング」
