「オッペンハイマー」私には彼が壊れた天才に見えました。良心を持っていたのかな。残酷な人物像です。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「オッペンハイマー」

 

を初日に観てきました。あらすじが長いですがすみません。ここまで書かないと伝わらないと思うので書かせていただきました。なので、ネタバレになっています。但し、ネタバレと言っても伝記映画なので誰もが知っている内容です。映画の進み方とは違い、時間経過に沿ってあらすじを書いています。映画では前後が変わっています。

 

ストーリーは、

第2次世界大戦中、物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが。

というお話です。

 

 

1926年、22歳の博士課程の学生J・ロバート・オッペンハイマーは、ケンブリッジ大学のキャベンディッシュ研究所でパトリック・ブラケットの下で量子物理学を学んでいます。不器用なせいで実験が苦手なロバートはブラケットに怒られ、腹を立てたロバートは、青酸カリをリンゴに注射し教卓の上に残します。もちろんブランケットへの復讐ですが、そこへ客員研究員のニールス・ボーアが来て、オッペンハイマーにゲッティンゲン大学で理論物理学を学ぶよう助言し、教卓のリンゴを食べようとしたところをロバートが止めてリンゴを捨てます。

その後、オッペンハイマーは博士号を取得し、イシドール・アイザック・ラビ、ヴェルナー・ハイゼンベルグと出会い、カリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア工科大学で教鞭を執り始めます。そこでキャサリン・キティ・ピューニングと出会い結婚しますが、同じ頃、精神科医のジーン・タトロックと出会い不倫関係になります。

1938年、ドイツが原子の分裂に成功した後、核分裂が発見されたとき、オッペンハイマーはそれが兵器化される可能性があることに気づきます。第2次世界大戦中の1942年、マンハッタン計画の責任者であったアメリカ陸軍大佐レスリー・グローブスは、オッペンハイマーをロスアラモス研究所の所長として採用し、原子爆弾の開発にかからせます。



 

オッペンハイマーは、ラビ、ハンス・ベーテ、エドワード・テラーからなるチームを編成し、シカゴ大学の科学者エンリコ・フェルミ、レオ・シラード、デビッド・L・ヒルと共同研究を行う。テラーの計算によると、原子の爆発が壊滅的な連鎖反応を引き起こし、大気に発火して世界を破壊する可能性があることが明確になる。但し、その確率は”ほぼゼロ”。

 

1945年にドイツが降伏した後、一部の科学者は原爆の妥当性に疑問を呈し始める。オッペンハイマーは、それが進行中の太平洋戦争を終わらせ、連合軍の命を救うと信じ開発を続け、トリニティ・テストが成功する。ハリー・S・トルーマン大統領が広島と長崎への原爆投下を命じ、日本は降伏。オッペンハイマーは公には称賛されているが、罪悪感に苛まれる。オッペンハイマーはトルーマンにさらなる核開発を止めたいと嘆願するが却下される。

 

戦後の1947年に、アルバート・アインシュタインに会ったオッペンハイマーは、彼に原子爆発が連鎖反応で壊滅的な破壊を引き起こすことは解っていたと話すと、アインシュタインは怒り、彼とは決別をする。アインシュタインに決別されてもオッペンハイマーは開発を辞めず、平然と研究を続けたのだった。それが原爆の拡大に繋がっていく。

 


 

米国原子力委員会の顧問として、オッペンハイマーの姿勢は論争を巻き起こし、テラーの水素爆弾が冷戦下で急成長する中で新たな関心を集める。AEC会長のルイス・ストローズは、1947年にオッペンハイマーがアインシュタインと交わした会話の中で、ストローズを中傷したと考え、彼を排除したいと考え始める。

1954年、オッペンハイマーの政治的影響力を排除したいと願ったストローズはオッペンハイマーを赤狩りの対象とし、共産主義に毒されていると公聴会を開く。オッペンハイマーの過去の共産主義者とのつながりを悪用され、彼の仲間の証言は不利にねじ曲げられ、オッペンハイマーは米国の核政策情報のアクセス権を制限されることになる。

1959年、ストローズの上院承認公聴会でオッペンハイマーの失脚が原因となりストローズの指名は否決される。1963年、ジョンソン大統領は、オッペンハイマーにエンリコ・フェルミ賞を授与した。後は映画を観てくださいね。


 

この映画、ロバート・オッペンハイマーの半生が描かれています。確かにある人物の半生を描いた映画とすれば良いのかもしれませんが、オッペンハイマー自身の人格などは酷いですね。監督もそれを解って描いたとしか思えませんでした。

 

まず、問題となるのは学生の時の青酸カリ入りのリンゴを置いておくところ。確かにムカつく教師はいるでしょうが、リンゴに青酸カリを注射するなんて、確実に殺そうとしているでしょ。これ、殺してしまった後のことを何も考えていないんですよ。そして後からそのことに気が付いて、急いでリンゴの回収に向かうんです。完全にサイコパスでしょ。サイコパスって人を殺すのが楽しい人間と、ムカつく相手は殺しても良いと考える人間、どちらもあり外道です。

 

このオッペンハイマーもその素質を持っており、ただ想像力が無いのではなく、きっと沢山死ぬだろうなーと思っても、そこに感情が付いてきてないんです。そして後から現実を目にして、恐怖を覚えるというタイプですね。でも、殺すことに関しては、そんなに罪悪感を覚えていないんじゃないかな。

 

 

リンゴの件が最初で、重要なのはアインシュタインと会った時に交わす言葉です。原子爆弾が大量殺戮兵器になると解っているのに開発を進めるんです。アインシュタインはその恐ろしさに怒り、その場を去りますが、オッペンハイマーはアインシュタインが怒っていても何も気にしていないんです。この映画の重要な部分はこの2つ。オッペンハイマーの人となりが一番描かれています。

 

それ以外に、愛人のジーンが自殺しても一瞬悲しんだような顔をしますが、その後は何事もなかったように過ごします。最後にジーンに会った時に自殺しそうな雰囲気があっても、平気でもう会わないと言い放つその冷血な態度に驚いてしまいます。彼は解っていてあの時点で別れたんです。酷いでしょ。

 

クリストファー・ノーランは、決して英雄を描いているのではなく、酷く人間性を欠落した人物としてオッペンハイマーを描いているんです。確かに天才だったかもしれない。でも、人間として大切な良心をほとんど持っていなかったのではないかということです。私はそんな風に受け取りました。

 

 

戦時中、ドイツやソ連との競争の中で、そんな人間に開発を任せたグローヴスやストローズは己の利益を追求し、国の勝利のみを望んでいたと思います。確かに戦争とはそういうもので、日本も同じことをしていたのだから文句は言えません。でも、相手を全滅させるような兵器を開発したのなら、それを抑止力として使うのみで実際に使う必要は無かったんじゃないかと思います。その脅威は使わなくても十分に伝えることは出来たと思うんです。

 

あの時代、凄い兵器を作ったからどうしても使ってみたかったというのが米国の本心だと私は思います。その為だけに広島と長崎は被害にあったのだと思っています。ただ、威力を見せつけるためだけなら広島だけで良いでしょ。実験の映像を流すだけでも十分だったはずです。でも長崎にも落とした。実験としか考えられません。

 

後半でストローズに疎まれて、オッペンハイマーは赤狩りの標的となりますが大して困っていないように見えます。原発を開発し、実験も成功して満足していたんじゃないかな。水爆を反対していたのは原発の被害に驚いたこともあるかもしれないけど、自分が中心となれないことに興味が持てなかったのかもしれません。

 

 

原爆は核分裂して放射能を放出しますが、水爆は核融合しての爆発なので放射能を放出しないように見えますが、水爆を起動させるのに原爆を使うのでそちらから放射能が放出され被爆します。いくら水爆が原爆よりもクリーンで破壊力が大きいと宣伝しても、結局は原爆を使っての爆弾ですし、破壊兵器としては変わりないので、原爆を作ったオッペンハイマーとしては蛇足に思えたのかもしれません。

 

私の解釈は皆さんの解釈とは違うかもしれません。でも、私にはオッペンハイマーは天才とキチ〇イは紙一重という感じで、ただのサイコパスに見えました。戦争って、こういうサイコパスが中心に集まってしまった時に起こるのかもしれません。良心が見えないんです。全く持っていないとは言いませんが、罪を悔いていると言いながら、本心から言っているとは思えないんです。悪いと思うならエンリコ・フェルミ賞を貰って喜ばないんじゃないの?

 

 

と、この映画の感想を書いてきましたが、実際のオッペンハイマー博士はもう少し違う人物だったように思えます。原爆の開発を後悔していないという発言がありましたが、それは物理学者としては素晴らしい発見なので後悔が無いのは当たり前でしょ。でも、それを人間相手に使うのが間違っているんです。

 

FBIに監視されて、あまり自由な発言は出来なかったようですが、人に使わせてしまったことに対しては悪いと感じていたような記述もあります。実際は物理を追求するオタクで、好きなモノが人殺しに使われたことには心を痛めていたんじゃないかな。

 

私が思うに、この映画は広島・長崎をないがしろにした映画ではなく、こんな人物が原爆を作り、それを戦争屋が新しい兵器を使いたくて使っちゃったと描いていて、戦争は人間を狂わせると伝えたかったんじゃないかしら。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。色々な観方が出来て、観る度に新しいオッペンハイマーが見えてくるかもという映画です。私の1回目は、こいつサイコパスでオタクだなという感じかな。IMAXで観る必要は無いように感じました。通常上映で十分です。3時間の映画なので体調管理をしてから行ってください。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

P.S:デイン・デハーンが良い役で出てました!嬉しい!

 

 

「オッペンハイマー」