「12日の殺人」
を観てきました。
ストーリーは、
10月12日の夜、女子大学生クララが焼死体となって発見された。捜査を担当するのは刑事ヨアンとベテラン刑事マルソー。2人はクララの周囲の関係者に聞き込みをするが、男たちは全員クララと関係を持っていた。殺害は明らかに計画的な犯行であるが容疑者を特定することができない。捜査が行き詰まるなか、ヨアンは事件の闇へと飲み込まれていく。
というお話です。
2016年の10月12日の夜、グルノーブル署で、引退する殺人捜査班の班長の壮行会が開かれていた頃、山あいのサン・ジャン・ド・モーリエンヌの町で、21歳の女性クララが、友人たちとのパーティの帰り道、突如何者かにガソリンをかけられ火を放たれた。そして、無残にも彼女は翌朝焼死体で発見される。
すぐに後任の班長ヨアン率いる新たな捜査チームが現場に駆けつける。クララが所持していたスマートフォンから彼女の素性はすぐに明らかになった。
クララの親友のナニーの協力などもあり、クララと交際歴のあったバイト先のウェズリー、ボルダリングジムで知り合ったジュール、そしてあろうことか彼女を「燃やしてやる」というラップを自作していた元カレのギャビなどが捜査線に上がってくる。クララと関係を持っていた男たちは、一様にして彼女が奔放な女性だったことを示唆していた。懸命な捜査が続いたが、事件を解決まで導く確信的な証拠もないまま捜査班は解散となってしまう。
それから3年後。ヨアンは女性判事に呼び出され、新たなチームを作り再捜査に乗り出すことになった。今度は女性捜査官のナディアも加わり、クララの三周忌に彼女の墓で張り込みをすることになった。果たして、仕掛けていた隠しカメラに写っていたのは。後は、映画を観てくださいね。
この映画、春に観たのに感想を書くのを忘れていました。良い映画だったんだけど何で忘れちゃったのかしら。刑事もので推理サスペンスなのかと思ったらヒューマンドラマで、犯人は捕まりません。私、これ完璧なネタバレなんだけど、この映画、犯人捜しを優先して観ていると何を訴えているのか全く分かりません。最初っから犯人の方ではなく刑事の言動を注意して聞いていないと、何故犯人が捕まらないのかという事が解って来ないんです。
それを前提にこの映画を観ると、クララという女性が殺され捜査を始めると何人もの男性のと関係を持っていたらしく、その男性たちが容疑者となります。クララは奔放な性格で、誰とでも寝る女と定義づけされ捜査をされるんです。そして男性ばかりの捜査員の中には、誰とでも寝る女だったから殺されたんじゃないかっていう印象が頭に残ってしまうんです。
それっておかしいでしょ。元彼や軽いセフレなどがいたってクララは普通の女性だし、親にとっては可愛い娘だし、何も悪いことはしていないんです。何が要因だったか解りませんが、恨まれたのか妬まれたのか、ただムカつくという簡単な理由で殺されたのかもしれない。でもそれはクララが奔放だったから悪いわけではないですよね。男側から見た偏見だけで捜査をしたのでは、本当の事は見えてこない。
クララが殺されて親友のナニーは刑事のヨアンに「なぜ殺されたのか、それは女の子だからよ。」と言うんです。それこそ警察がクララ側にも問題があったんじゃないかという偏見を持って捜査をしていることを指摘しているんです。全面的に犯罪を犯した人間が悪いんです。被害者は一切悪くない。何を考えているんだという事です。
ホント、日本でも事件が起きるとマスゴミが被害者にも落ち度があったんじゃないかと書きますが、被害者は被害者です。何の落ち度もありません。犯罪者が全面的に悪いんです。そこを間違えてはいけません。いじめでも虐められる方にも問題があるというけど問題はありません。いじめる方に問題があるんです。
捜査をするヨアンとマルソーの日常生活の問題も巻き込みながら容疑者を追っていくことになり、色々と問題も起きます。最初の5人の容疑者の中に犯人がいると思われるんだけど、どうしても絞り込めないんです。一番怪しいDV男は恋人が一緒にいたとアリバイを証明しているのでそれを崩すことが出来ません。
ここで思ったんだけど、DV男の恋人はきっと警察に助けを求めていたと思うんだけど男ばかりの警察はそれに気が付かないのよね。そして捜査が打ち切りになり3年後に再会されるんだけど、その時には女性捜査官が入り違った展開を見せます。
男性ばかりだとどうしても偏った見方がはいってしまうけれど、女性目線だと自分と同じ女性が殺されたという目線になるので、可哀相とか弱いとかいう名詞が出てきません。何故殺されたのか、誰が殺したのかという事に直接目線が行くんです。
男社会の警察が捜査をすることに問題があるということが描かれ、男たちがそれに気が付いていないということも描かれています。男社会が消えていない世界は今でも沢山ありますよね。そこに女性が入り始めている。警察のような場所には女性の考え方が必要だと思いますよ。
だって、捜査対象は男性だけじゃなく女性もいるんですから。このクララの殺人だって、男性が加害者と言っているけど、もしかしたらクララに男を寝取られた女がやったかもしれない。ガソリンをかけて火を点けるだけなら女でも出来ますからね。でも捜査上には彼女と関係のあった男しか容疑者に上がってこない。それもおかしいでしょ。
この映画、考えれば考えるほど男だけが捜査しているからこそ目が行かない部分が見えてくるんです。ヨアンは”男全員が容疑者”といっていたけど、そうじゃなくて全員が容疑者なのよ。”女は弱くて強い男が殺すもの”という考えがそもそも間違っているんです。
色々と考えさせられる映画でした。この映画、ヨーロッパの映画祭でいくつもの賞を取っている作品です。カンヌ国際映画祭や釜山国際映画祭でも上映され話題になった作品です。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。推理サスペンスと見せておきながら、ヒューマンドラマとして描かれる作品なので、最初はちょっと驚きましたがとても楽しめました。これはきっと観た後に思い返して味わう映画なのだろうと思います。私も観た後に間を置いたおかげで、とても考えさせられました。単館系映画なので、もしかしたら小さな映画館でまだ上映されるところもあるかもしれませんが、大手は既に上映が終わっているので、配信を待って、ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。
「12日の殺人」