「ゴッドランド GODLAND」神の教えを布教しに行くのにこんな高飛車な牧師はダメだと思います。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ゴッドランド GODLAND」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

デンマークの若き牧師ルーカスは、植民地アイスランドの辺境の村に教会を建てるため布教の旅に出る。アイスランドの浜辺から馬に乗って遠い目的地を目指すが、その道程は想像を絶する厳しさだった。デンマークを嫌うガイドのラグナルと対立する中、アクシデントに見舞われたルーカスは瀕死の状態でようやく村にたどり着くが…。

というお話です。

 

 

19世紀末、プロテスタント・ルター派に属する教会のデンマーク人の若い牧師ルーカスは、アイスランドの僻地に教会を建て、布教をするために派遣される。途中で出会った人々の写真を撮ることも仕事の一部だった。司祭は地域に順応するようにと助言を与え送り出す。

旅が始まり、船でデンマークからアイスランドの浜辺に到着し、そこから馬に乗って陸路ではるか遠い目的地を目指す。陸路は厳しい道のりで、川の流れは激しく渡り切れるかも怪しい。川が渡れたとしても今度は山を登らなければならず、それは想像を絶する厳しさだった。



 

デンマーク嫌いでアイルランド人の年老いたガイド・ラグナルはアイルランド語しか話さず、ルーカスは聞き取ることが出来ずに意思の疎通が図れない。それでも彼に道案内を頼まなければ何らず、ルーカスの精神は追い詰められていく。アイルランドの美しい風景の中、孤立感を深めるルーカスは自分自身の現実と自分の使命、そして義務を果たす道徳観を失っていく。

やっとの思いでたどり着いた村で、カールというデンマーク人商人とその2人の娘が住む家で介抱され、回復したルーカスは、教会の建設に取り掛かるが、彼の信仰と正直さが深刻な試練にさらされる。そして…。後は、映画を観てくださいね。


 

難しい映画でしたが、デンマークとアイスランドの歴史を教えていただき、よく理解が出来ました。まず、19世紀後半にデンマーク人がアイスランドに布教しに行くところから始まります。アイスランドは19世紀末まではデンマークの植民地的な立場でした。アイスランド人はバイキングの血を引いている歴史的な民族だというプライドを持っていたので、デンマーク人に支配されることを嫌がっていたんです。今の中国とチベットのような感じですかね。

 

なのでアイスランド人はデンマーク人を良く思っていない人が多かったんです。でもデンマーク人は自治を行ってあげているし、自分たちが世話をしてあげているんだという高飛車な態度でアイスランド人に接していて、言葉もデンマーク語を勉強しろという態度なんです。

 

 

主人公のルーカスは、通訳がアイスランド語を少し教えようとしてもまったく覚える気が無く、案内役のラグナルがアイスランド語で話しても、まったく解らないと言い放ち、理解しようという態度を取らないんです。これじゃ、牧師のくせに地域に布教なんて出来ませんよね。

 

見ていて、ルーカスは聖職者には相応しくないような人物でした。好き嫌いが顔に出るし、誰にでも慈悲を与えるという態度が取れないし、地域の人々と同じ立場に立つことが出来ません。自分は聖職者なので優遇されるのは当たり前だと思っており、誰に対しても感謝をすることをしないんです。アイスランド人に対してのデンマーク人だからってことだけではなく、個人の性格に難があると思いました。

 

 

道案内のラグナルは荒っぽいし頑固なんだけど、それなりに愛情を持っているし、正しい判断の出来る人物でした。でも歴史的にどうしてもデンマーク人を素直に受け入れることが出来ず(征服者だからです。)、頑なにデンマーク語を話さずにアイスランド語を話します。なのでルーカスと何度も衝突を繰り返します。

 

もしルーカスが聖職者として素晴らしい人物なら、ラグナルが頑なにアイスランド語を話すなら、それに合わせて自分もアイスランド語を勉強していけばよいし、何かして貰ったら感謝の言葉を言えば良かったんです。でもルーカスはデンマーク人で、アイスランド人よりも高い位置にいると思い込んでいるというか、それが当たり前と思っているので、感謝も無く、態度が大きいんです。酷いでしょ。

 

 

神の下では人間は皆平等であり、嘘はつけないのだということが、何故かルーカスは聖職者なのに身についていないんです。若いからというだけじゃないと思います。確か14世紀位にデンマークによって強制的にキリスト教ルター派に改宗させられてキリスト教が国教会となったので、その時代から教会が絶大な力を持っていて、人々に文句を言わせなかったのかもしれません。

 

ルーカスはこの時代のカメラを背負って旅をしているのですが、旅の記録を残すためだったとしても、美しいものだけを映していて、世界の真実を映そうとは思っていなかったのかな。カメラは表面の美しい面しか残さず、内面に隠された汚い部分は決して表すことが無いんです。カメラはルーカスが見たいものだけを映し、見たくないモノ汚いモノは残さなかったんです。まるで宗教の真実ですよね。美しい言葉を並べて見た目は良いけど、裏ではドロドロの争いをしているという感じ。だから宗教戦争は終わらないんです。

 

 

この映画、人間の本質を描いていて怖いお話でした。誰もが平等という綺麗ごとを並べながらいつも周りの人間を見下している聖職者とそれを見抜いていながら強くは言えない人々。支配者側と植民地の原住民の立場が宗教と絡まり、微妙な世界観を醸し出していました。うーん、考えれば考えるほど怖いです。人類は皆平等で、汝の隣人を愛せよって言われているのに、それが出来ないなら聖職者にはなっちゃいけませんよ。かわいい犬が出てくるのですが、きっと彼は神の目を持った犬だったのだと思います。彼がすべてを観ていたんです。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。但し、デンマークとアイスランドの歴史を知ってから観ないと、イマイチ理解が深まらないかもしれません。私はアフタートークで北欧研究者の小澤教授のお話を聞かせていただいたので、とてもよく理解が出来ました。ありがたかったです。観る前にちょっと調べてみてください。理解が深まります。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ゴッドランド GODLAND」