「夜明けのすべて」
を観てきました。
ストーリーは、
PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢は、会社の同僚・山添のある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。やる気がなさそうに見える山添だったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。
というお話です。
大学を出て就職先を探していた藤沢さん。ある会社に受かり入社をするのだが、月に一度、PMS(月経前症候群)のせいでイライラを抑えられなくなり会社で失敗を繰り返してしまう。その会社に居られなくなり辞表を提出。自分でもどうしようも出来ないので、諸事情を理解してくれる会社を探すしか無かった。
そして5年後。栗田化学という会社に勤務している藤沢さん。周りも理解がありイライラが始まってしまうと周りがフォローをしてくれる。ある日、同僚・山添くんの”とある”小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう藤沢さん。周りのフォローで事なきを得るが、山添くんは転職してきたばかりだというのにやる気が無さそうに見えていて、藤沢さんは我慢がならなかったのだ。しかし山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。
職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。 後は、映画を観てくださいね。
PMSとパニック障害という精神疾患を抱えた二人のお話でした。そして、彼らを取り巻く周りの人々がそれを受け止めて、助けてくれているという様子が良かったです。良い映画なんだけど、この映画を他人事のように良い映画だなぁで終わってしまって良いのか考えてしまいました。
きっと誰もが少しの精神疾患を抱えていると思うんです。それを診断されるかどうかだけの違いだと思います。だって誰一人同じ人はおらず個人それぞれに考え方があって、自分と違う人が周りにいればストレスになるし不安も大きくなる。女性なら生理前後に精神が不安定になるし、それを我慢し続ければ鬱病になることだってありますよね。
自分にも辛い時があるのだから、精神疾患が強く出てしまう人がいれば、少し待ってあげたり、その場所から遠ざけてあげたり、出来ることをしてあげるでしょ。その辛さを感じてあげられない人って、ただ鈍感なのかなと思います。自分中心で人の事を観察せず、相手の気持ちも考えなければ気がつきませんよね。そして、私の経験から言って50%の人は気がつきません。鈍いんです。
この二人が、同志のようになりお互いに助け合えるのかもと思ったのも、この考え方と同じだと思うんです。自分も辛いから、きっとあの人も辛いんだろうと理解出来たのだと思います。でもね、それを全くの他人に求めてはいけません。鈍い人もいるし、キツイ言い方だけど頭の悪い人もいるんです。そういう人に理解してくれと望んでも無理なんですよ。だから大きな会社や人が沢山集まる場所なのでは、自分が身を引くしかありません。
この映画で二人ともが理解のある会社に入社します。社長はある事件があり、不安を抱える人を助けてあげたいと思った人なのかなと思いました。他の人たちも、障がいを抱える二人の扱い方がとても上手くて、今までにも経験してきた方々なのだろうなと思いました。皆さん、優しい方々で、当人たちよりも周りの人たちの優しさに感動しました。
当人たちは頭の中がパニックになってしまうと、周りが全然見えていなくて、迷惑がられているよと言ったとしても理解出来ないのだと思います。本当のことを言って、とても迷惑ですよね。集中して仕事をしているのに横でこんな風に騒がれたら、仕事の手を止めなければいけないし、後から謝られても時間は帰ってこないです。藤沢さんが最初に勤めていた会社で失敗をした時、これは辞めて欲しいだろうなと思いました。私が雇うとしても、これでは困ってしまいます。
仕事は時間が決まっていて、もし出来ないなら相手方に説明をしなければいけません。毎回出来ないと言ったのでは、仕事を切られてしまいます。そういう世界で障害を持ちながら仕事をするのは難しいです。辞めた方が良いと思いました。私も仕事のストレスで左顔面が麻痺し今も後遺症が残っており、その病気が出てからは以前のような仕事のやり方は出来ませんし、ストレスを感じたらすぐに仕事を断るようにしています。無理して人に迷惑をかける恐れがあるのなら、自分から身を引く選択をするべきなんです。
そういう病気との向き合い方を本人たちが知り、上手く付き合いながら生きていく術を学んでいくしかないという映画なのかなと思いました。病院に行って早く治したい、薬を出してくれと言ってもそう簡単には治りません。特に精神疾患となると、一生付き合っていくくらいの気持ちでないと無理だと思います。なので完治を考えず、上手く付き合っていく、上手くあしらって行くという術を身に着けるべきなんです。
そして藤沢さんも山添くんも、お互いの病気を見つめることによって、理解して行ったんじゃないかな。自分の居場所、自分の居て良い場所、生きていける場所を見つけることが出来るまでが、この映画に描かれていたような気がします。
上白石さんと松村さんがダブル主演だったのかな。この二人なので、まさか恋愛要素が入って来てしまうのではと思っていたけど、恋愛要素が入ってこなかったので良かったです。男女がいるからって、何でも恋愛になることは無いんです。ノーマルでも恋愛に興味が無い人も多いし、病気を抱えていたら恋愛なんて考えられない、脳が回らないと思いました。不安や恐怖が一杯なのに、誰が好きなんて考えていられませんよ。自分で精一杯です。
主役のお二人は良かったです。松村さんってあまり見たことが無かったので、最初、東出さんの演技のように上手いんだか下手なんだか判断が出来ませんでした。松村さんはまるで感情が無いような感じでしたのでなんなんだろうと思いましたが、パニック障害で薬を飲んでいるという設定だったからなのかと後から解りました。上白石さんはイライラしてちょっと卑屈な感じがよく出ていて、PMSという病気がこんな風になるのかとよく理解が出来ました。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。精神疾患の苦しみをよく描いていて、こんな風になるのだということが、よく理解出来ました。パニック障害はよく聞くし、知り合いにもこの病気の方がいたので改めて向き合えたし、生理前のイライラなどがPMSという病気だと診断されるようになったんだなと驚きました。私が若い頃なんて、そんなもの我慢しろと言われ頭痛薬を飲むだけでしたから。タバコを辞められないのも病気だと言われるし、今どき何でも病気なんですね。うーん、良い時代なんだか悪い時代なんだかよく解りません。良い映画なので、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「夜明けのすべて」