「PERFECT DAYS」今を生きたい平山と過去未来に縛られる人たち。時が止まれば良いのにね。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「PERFECT DAYS」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

というお話です。

 

 

東京渋谷の公衆トイレの清掃員、平山は押上の古いアパートで一人暮らしている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しのなかに身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた。

夜が明ける前に近所の老女が掃除する竹ぼうきの音が響く。それが聞こえると男はすっと目をあける。少しのあいだ天井をみつめる。おもむろに起きあがると薄い布団を畳み、歯を磨き、髭を整え、清掃のユニフォームに身をつつむ。車のキーと小銭とガラケーをいつものようにポケットにしまい部屋をでる。



 

ドアをあけて空をみる。スカイツリーをみているのか。光を見ているのかはわからない。缶コーヒーを買うと手作りの掃除道具をぎっしり積んだ青い軽にのって仕事へむかう。いつもの角でカセットテープを押し込む。カーステレオから流れてくるのは、The AnimalsのThe House of Rising Sun。

いくつもの風変わりなトイレを掃除してまわる。その日はひょっとすると声をひとつも出していないかもしれない。掃除を終えると夕方にはあのアパートに戻る。自転車に乗り換えて銭湯へゆき、いつもの地下の居酒屋でいつものメニューを頼み、そして寝落ちするまで本を読む。そしてまた竹ぼうきの音で目をさます。男の人生は木のようだった。いつも同じ場所にいて動かない。

 


 

同僚のタカシのいい加減さをどうして憎めないのか。いつものホームレスの男が気になる。清掃のあいまに見つける木漏れ日が好きだ。フィルムを現像してくれるこの店はいつまであるだろうか。
銭湯で出会う老人が愛おしい。古本屋の女性の的確な書評を聞くのも悪くない。日曜だけ通う居酒屋のママの呟きが気になる。今日はあいにくの雨だ。それでも予定は変えない。

そんな彼の日々に思いがけない出来事が起きる。そしてそれは彼の今を小さく揺らした。後は、映画を観てくださいね。

 

素晴らしく素敵な映画でした。この雰囲気はヴィム・ヴェンダース監督だからこそと言っても良いんじゃないかしら。本当に観ていて気持ち良くなりながらも、人間の業というか、逃れられない縁のようなモノを感じて感動しておりました。

 

 

平山はトイレの清掃員をしながら、日々、自分の日課を淡々と繰り返している。私から見ると、本当に羨ましい生活に思えました。同じことを繰り返すことは退屈ではなく、やることが決まっていて、それで生活が成り立っているということなんです。その時々によって、やることを変えなければならないのは、結構しんどいでしょ。それが無いのは羨ましいです。

 

変化が無いということは、他人との関わりが極端に少ないということでしょ。他人と関わっていたら必ず変化が起きますから、変化が無いということは孤独なんです。でもね、孤独って、悪い事でも何でもなくて、私も一人だったらどんなに楽だろうと思うことがあります。人との関わりを全て切って一人で生きていたら、今、その時を生きれるので、心は平穏になります。過去も未来も考えず、ただ、その時を生きている。それが許されるなら、そんなに幸せなことは無い。

 

 

平山の生活はそんな風に見えるのですが、実は、周りで沢山の変化が起こっていて、彼は左右されないように生きているように見えるけど、心の中で葛藤を抱えていたと思いました。自分の捨てて来た過去を思いだし、悩み悲しむこともあることが、描かれていました。

 

セリフも少なく、淡々と生活をしているように見えても、彼の中では、色々な事が起こっていたのだと思うし、あれだけ本を読んでいれば、1冊読む度に旅に出ているようなものだから、心の中は活発に活動していたんじゃないかな。そして、いつも持っているモノクロカメラで木々と光りを撮影していたけど、その時に美しいと思った一瞬一瞬を写真に収めていたんでしょうね。もう二度と同じ光は無いから、それを留めておきたかったんでしょう。

 

 

カセットテープや古本屋、カメラなど、平山が若い頃に知ったモノを、そのまま自分の中に収めて、決して手放さないと決めていたのかな。時を止めたかったのだと思います。でも、日々変化は起こり、姪っ子は成長して高校生くらいになっているし、昔、上手く関係を築けなかった父親も今は年を取ったようだし、そして自分も周りの人々も年を重ねて、同じようには生きていられなくなる。止めたい時間と動いてしまう時間、それを平山は悲しんでいるように見えました。

 

住んでいたアパートが素敵でしたね。木造でメゾネットになっているアパートなんて、今でもあるんですね。セットだったのかな。今だと危なくて、あんな建物は建てられません。古き良き時代の建物です。お風呂も無かったし、トイレはどうだったんだろう。でも、素敵でしたね。

 

 

そうそう、The Tokyo Toilet とのコラボということでなのか、平山はトイレ清掃員という仕事を持っていて、東京都の公共トイレの清掃をしているのですが、このトイレたち、色々な建築デザイナーが考えたらしく、お金がかかってましたね。ファースト・リテイリングの柳井さんが、このトイレプロジェクトの発案者らしく、資金は豊富にあったのかしら。

 

いつも思うのだけど、最初は予算があるので、綺麗に使って清掃もしてくれるけど長く続かないので、寂れて汚くなっていくんですよねぇ。他の公共施設なども同じでしょ。作るまでは話題にして騒ぐけど、終わってしまえば見捨てられる建物ばかりなので、建築屋としては悲しく思っています。どんな施設もメンテナンスをしていれば長く使えるのに、全くせずにあっという間に老朽化して、汚くなって建替えの予算がかかる。メンテナンスした方がよっぽどお金がかからないのに、誰かが儲けるために、直ぐに建て替えようとするんです。

 

 

日本はダメですね。政治家や起業家が儲ける為だけに、色々なモノが犠牲になっている。そんな強欲な人間ばかりが日本には生き残ってしまい、この平山のように、静かに穏やかに暮らしたいと思っている人間は、古いモノとして排除されていってしまう。嫌な世界です。古いモノを大切にして、その価値を理解して欲しい。ちょっとそんな部分も映画の中に盛り込まれていて、考えてしまいました。

 

ああー、本当に素敵な映画でした。セリフがこんなに少ないのに、全く気にならず、平山の表情から言葉が読み取れて、一緒になって穏やかに木漏れ日を感じられて、懐かしい音楽を聞く。こんな日々が続くならどんなに幸せなんだろう。でも時間は止まってくれないし、変化は常に起こっている。そこに留まりたくても、留まらせてくれない。悔しいけど、自分は生きているんだなということを感じさせられました。

 

 

私は、この映画、超!超!超!お薦めしたいと思います。この映画、ずっと流していたいような映画です。好きな映画が、また一つ増えました。役所さん素敵でしたし、田中さんが時を止めてくれる妖精のように見えました。うーん、本当に良かった。この良さを上手く伝えられない自分が悲しいけど、でも、この映画は嬉しい。(笑) ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「PERFECT DAYS」