「笑いのカイブツ」岡山さんのツチヤはお笑い界に捕獲された野性猫のようでした。面白かったです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「笑いの怪物」

 

を観てきました。公式サイトさんで完成披露試写会に当選し、行かせていただきました。

 

ストーリーは、

不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することを生きがいにし、毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った。実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになるが、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは淘汰されてしまう。失望する彼を救ったのは、ある芸人のラジオ番組だった。ツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになるが…。

というお話です。

 

 

笑いが好きだと気付いたのは中学生の頃。ちょうどその頃、『ケータイ大喜利』というテレビ番組がスタート。出されたお題に視聴者がボケを送信、審査員の評価が高かったものに段があたえられるという、視聴者参加型の大喜利番組。高校1年のツチヤは、ひたすらボケを生産し続け、狂ったように投稿。しかし、高校3年間で1度も読まれることは無かった。

その屈辱をバネに、「1日に500個ボケる」をノルマに突き進み、初めて番組で読まれたのは19歳の時。バイトの合間に、移動の時にもとにかく生活のすべての隙間を、大喜利で埋めていく。ただひたすらボケを生産する工場のように、頭の中はお笑いのことだけ。七段を獲得した頃には、大喜利をしている時にしか、生きている感じがしなくなっていた。そして、21歳を迎えた時。ツチヤは『ケータイ大喜利』のレジェンドに。嬉しいというより安堵のほうが大きいものだった。



 

21歳で「ケータイ大喜利」のレジェンドになった直後、ツチヤは吉本の劇場作家へとなる。笑いを作ることだけ考えようと、ライブの合間には資料室にある単独ライブの台本を読み漁り、寝ずにネタを書き続ける。そんな彼に「お前、構成作家の中で1番イカれてんな」という言葉が。結果、皆に嫌われ退職を余儀なくされる。もうこの世のどこにも自分の居場所はない。すべての想像力を笑いへ等価交換し続け、気付けば、他人と普通にしゃべることが出来ない欠落人間が誕生していた。

ラジオから流れてくる砂嵐の音に自分を重ね合わせ、ツチヤはハガキ職人となる。朝起きて大量のボケを出し切ったあとは、インプットの時間。小説や詩集は図書館、雑誌や漫画は立ち読み、音楽に映画にお笑いビデオ。すべてを笑いにし、ハガキを送り続ける。資金がつきるとバイトをし、クビになるの繰り返し。ラジオや雑誌で採用されたネタも出てくるが、採用数に反比例するかのように私生活はボロボロになっていく。24歳になったツチヤは、ネタが採用されることに何の喜びも感じられなくなっていた。

そんな時、ベーコンズというお笑いコンビの芸人が、単独ライブのネタ作りをやってみないかという話をツチヤに振ってくれる。ベーコンズの西寺を頼り、東京へ出て、劇作家の見習いとして働き始めるが、やはり人間関係で失敗してしまう。西寺にもう少し頑張れと引き留められるのだが…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

強烈な映画でした。こんなに極端な人がいたんだなと初めて知りました。映画では、個人名などは架空の人物になっているのですが、帰ってきて調べたら、西寺ってオードリーの若林さんだったんですね。仲野さん、雰囲気がとても似ていました。うんうん、こんな風だったんだろうなと後から思いました。


ツチヤは、中学の頃からお笑いにハマり、狂ったようにネタを書き始めます。この執着はちょっと異常ですね。でも、好きな事を見つけちゃったんだから仕方がない。私と同じように、ちょっとアスペルガーが入っているのかもしれません。そして何年も何年も、その「ケータイ大喜利」という番組に投稿し続けます。中学の頃から20歳超えるまでこれを続けたんですから、天才を通り越してキチ〇イと思っちゃうけど、こういう人がお笑い界に入って行くんでしょうね。



 

そして吉本に入るんだけど、その異常さで解雇されちゃいます。どんな会社もお笑いをやっているからと言っても、中枢を担っているのはエリートですから、人間関係が築けなければ駄目でしょうね。特に吉本なんて、東大京大卒が沢山いるんでしょ。そりゃ無理ですよ。だって、ツチヤって、挨拶も出来ないんですもん。基本的な人間の生き方と言う部分が欠落しているんです。

 

でもね、捨てる神あれば拾う神ありで、彼の良い部分を解かってくれる人も沢山いるんです。西寺もそうだけど、ピンクやミカコ、オカンだって、みんな不器用なツチヤの事を応援しているんです。ツチヤは、ダメダメだけど、お笑いに関しては必死で取り組んでいるし、彼の書く話は面白いんです。彼の才能を潰してはいけないと思っている人が沢山いるんです。

 

 

一番の応援者はオカンよね。自分の息子を愛しているからこそ、中学からずっとアホみたいにお笑いを書いている息子を見守ってくれていたんでしょ。普通なら、いい加減にせぇよって言われて終わりですよ。それをずっと見守って、出て行ったと思ったら突然に戻って来たりしても、直ぐに受け入れてくれる。こんな凄い愛ってないでしょ。

 

沢山の人の愛の上に、ツチヤのお笑いは成り立っていたのだと思いました。必死になっている時って周りが見えないから、それに気がつかないんだろうと思うけど、ふと立ち止まると理解出来ると思うのよ。自分一人でやってきたんじゃないってことが。

 

 

もう、映画の最初から、トンデモナイ勢いで紙にネタを書きなぐっているのでビックリしました。こんなに書いていたんですね。ネタって、そんなに出てくるもんなの?私、あまりお笑いが解らないから、そんなに面白いことが次々と出てくるというのがとても不思議でした。だって、ふと思いつくというのではなく、紙をじーっと見ながら絞り出しているって感じなんです。そんなに努力して創り出すものって面白いのかしら。うーん、不思議です。
 

途中でツチヤは、もちろん行き詰ったりするし、死にたくなったりするんです。でもね、お笑いをやってなくても、みーんな死にたくなったり、人と会いたくなくなったり、話をしたくなくなったり、引き籠ったりと、色々とあるんですよ。あなただけじゃないんです。みーんな、それぞれに苦しんでいて、それを乗り越えて生きているんです。まぁ、乗り越えられなかった人は自殺をしちゃってるんだけどね。

 

 

だから、死にたくなるのは特別じゃないし、逃げ出したくなるのも当たり前。それを乗り越えた人が生き続けているだけ。どうしても自殺したければすればいいんです。誰も逃げたい人を引き留めません。だけど、自分に声をかけてくれる人がいたり、受け入れてくれる人がいるなら、その人たちの為に少し生きてみるのも、またいいんじゃないの?自分は自分のためだけに生きているんじゃなくて、オカンや友達を寂しくさせないために生きているっていうのもまた、理由になるんじゃない。

 


そんな風に思える映画でした。ツチヤって、籠って籠って内へ内へと向かっている人物だけど、反転すると、彼の周りには守ってくれている人が沢山いるんですよね。それは彼がお笑いに真摯に向き合っているからだし、周りが彼の才能を認めているからこその事なんです。しあわせな人なのに気が付いてないってところが、お笑いなのかもしれません。

 

 

岡山さんのツチヤ、トゲトゲしくて近づけないようなんだけど、凄く寂しがりみたいに見えるんです。それがツチヤにピッタリきていて、良かったです。部屋でパンツ一丁でネタを書いている姿はヤバすぎて、マジで怪物みたいでした。生きる苦しさが伝わってきて、観ていて辛かったけど、自分も同じように苦しい時期もあったから、何となく懐かしい気持ちもしました。

 

ツチヤの事を心配する西寺役の仲野さんは、誠実な性格をよく表していて優しい人なんだろうなと感じました。菅田さんのピンクはめちゃくちゃだけどツチヤのことを友達として大切に思っているんだろうなという気持ちが伝わってきました。ミカコ役の松本さんも優しさが伝わりました。

 

 

そして、片岡さんのオカンは、だらしないけど息子を全力で愛しているんだろうということが伝わってきました。気になったのは氏家役の前原さん。ちょっとした役なんだけど、西寺と同じようにツチヤの才能を買っているけど、立場上何も言えない様子が、よく描かれていました。うーん、好きです。

 

周りの俳優さんたちが素晴らしく、それぞれに主役を張れるほどの人たちなので、内容も厚くいや熱くなったと思います。面白かっ田です。ただ一つ気になったのは、長い時間を描いているので何年後というのが突然に飛ぶので、あれ?何年経ったの?と思い、集中が途切れてしまうところです。没頭しているのが現実に引き戻されるので、そこがちょっと気になったかな。ただ、この映画はツチヤの半生を描いているので、途切れるのは仕方ないんですよね。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。いや、もう、岡山さんのツチヤを観ているだけで、何て人生なんだよって思ってビックリしますが、その魅力に取りつかれた人が何人もいて、ツチヤの周りを守っているというのに驚きました。人間関係が苦手といいながら人間を惹き付けてしまうツチヤの魅力を堪能出来ます。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。公開は1月5日です。カメ

 

 

「笑いのカイブツ」