「市子」1枚の書類なのに人間の価値を変えてしまうなんて婚姻制度の基本が間違っているんじゃないの? | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「市子」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。市子の行方を追う長谷川は、彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知る。

というお話です。

 

 

川辺市子は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪してしまう。途⽅に暮れる⻑⾕川の元に訪れたのは、市⼦を捜しているという刑事・後藤だった。

後藤は、⻑⾕川の⽬の前に市子の写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか。」と尋ねる。川辺市子という女性は存在しないというのだ。調べたところ、市子の戸籍は出てこなかったらしい。



 

市子の行方を追って、昔の友人や幼馴染、高校時代の同級生と、これまで彼女と関わりがあった人々から証言を得ていく。そして長谷川は、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。

そんな中、長谷川は彼女の荷物の中に一枚の写真を発見し、その裏に書かれた住所を訪ねることに。捜索を続けるうちに長谷川は、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を知ることになる。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、少し前から問題になっている無戸籍児童の問題を描いていました。戸籍というものがあるのは日本だけなのかな?戸籍は、日本以外には韓国と台湾にのみあるようです。自分の出生記録と自分の家族の記録がされていて、海外では、通常、個人単位による身分登録制度があるだけのようです。

 

そんな日本で、妊娠中に離婚し、既に前夫からDVなどで逃げていた女性が出産した場合、戸籍上、前夫の子供になってしまうため、出生届が出せないという場合があるようなんです。そして、この主人公の市子は、その無戸籍児童のようでした。ですが、何故か、小学校中学校と通い、高校にも進学していたようです。何故、そんなことが出来たのか。それが、この映画のカギになるのかな。

 

市子は長谷川と出会い3年、プロポーズをされて喜びます。でも、そのプロポーズは受けられないことを自分で分かっていました。自分には戸籍が無かったからです。それでも、高校は卒業出来ているし、義務教育も受けてきています。それはどうして出来たのか。ある理由があったんです。

 

 

長谷川の前から突然に姿を消した市子。長谷川のことは好きでも、結婚は戸籍が無いから出来ないんです。もちろん、長谷川は納得が出来ません。そして市子を探し始めます。でも、失踪届などは出せません。親族でもないし、婚姻もしていないからです。それでも探し続けていると、ある日、警察が市子の写真を持って訪ねてきます。この人物は誰なのかと。

 

はぁ?市子ですけどというと、違う名前ではないかと聞かれます。市子は、長谷川と出会う前には違う名前で生きていたようなんです。そして、ある場所で見つかった白骨遺体が、違う名前の市子ではないかというのですが、つい先日まで一緒にいた市子のはずがないと長谷川はいうんです。

 

普通に生きてきた人間からしてみると、戸籍が無いというのは理解の範囲を超えていて、何を言っているのかわかりませんよね。自分の名前じゃない名前で生きてきたなんて、理解の範疇を超えています。ですが、市子はそんな人生を生きてきたようなんです。少し理解出来てきた長谷川は、刑事の後藤に付いていき、市子を探し始めます。

 

 

市子を探すために彼女の過去を追っていくと、その壮絶な過去が見えてきます。生まれて市子という名前を貰ったのに、途中で小学校、中学校と突然に名前を変えなければならなかった市子。そして、友達ともおかしな関係になってしまい、ほとんど友達も作れずに生きてきた彼女。高校に入れても彼氏が出来ても、心が休まることはなく、母の交際相手との関係もあり、苦しんでいたようでした。

 

長谷川は市子のことを考え、後藤とは別に自分の意志で市子のことを探します。そして彼女の真実を真実を見つけるのですが、市子の姿を見つけることは出来ません。彼女はどこへ行ったのか。うーん、仕方ないとは思うけど、辛いお話でした。

 

市子が行政に戸籍が無いと相談に行ったという事実も出てくるのですが、色々と証明しなければならないこともあり、相談に来る半分以上の人が挫折してしまうという話が出てきます。確かに自分であるという証明も大変だろうし、自分のプライドも傷つくようなこともあると思うんです。でも、今まで苦労して生きてきたことに比べたら、一瞬、我慢をしてもらえたら生きるのが楽になるのにと思いました。今の日本で生きるためには、戸籍は必要だと思います。

 

 

日本は戸籍だけど、米国などはグリーンカードが無ければ働くことも出来ないし、住み続けることも出来ないでしょ。まだ、日本の方がましなんじゃないのかな。ごまかし続けることが出来てしまっているのだから。

 

いやぁ、だけど、もし自分に戸籍が無かったらと思うと、どうやって生きていけば良いのかわかりません。学校も受験出来ないし、それに付随して仕事に就くのも大変だし、資格試験などは取れないでしょ。運転免許だって取れないんじゃないかな。いやぁ、無戸籍児童については、日本政府も考えなければいけない問題だと思います。まず、DVなどで夫と別れて出産する女性を保護し、戸籍を夫とは別に作るべきなんです。そんな日本の問題をよく描いていたと思います。

 

 

市子の苦しみが、日本の法制度の間違いを訴えていました。でもね、一度決めてしまった制度は、そう簡単に変えることが出来ません。それに対応していくしかないんです。未来に変えていくとしても、今は人がそれに対応するしかありません。

 

市子を演じた杉咲さん、やはり上手いですね。恐ろしい人生を受け入れて貪欲に未来を掴んでいく。そんな彼女を美しく演じていました。市子を探す長谷川役の若葉さん、やっぱりイイですねぇ。彼の演技、大好きなんです。彼女を思いながら、きっともう探さないんだろうな。そんな長谷川の未来が見えました。

 

 

私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。私は好きな映画です。気持ちがじんわり伝わってきて、いつまでも考えてしまうような映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「市子」