「Polar Night」吸血鬼伝説に惑わされ行き場を見失う人々を描いています。良作でした。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「Polar Night」

 

を観てきました。完成披露試写会がFan’s Voiceさんで当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

12歳の少女・真琴は、絵画教室の教師である衣良に心を奪われる。しかし、あるトラブルをきっかけに、衣良は街から姿を消す。それから6年の時を経て、真琴は美大生となり、ある展覧会で衣良と再会する。衣良はあの時と何も変わっていなかったが、ある秘密があった。衣良は生身の人間でありながら、血を吸わなければ生きていけない宿命を背負っていたのだ。

というお話です。

 

 

12歳の少女・真琴は、絵画教室に通い始め、先生である衣良の不思議な魅力に心を奪われる。先生に近づき、かまって貰おうとする子が多く、真琴もその一人だった。

 

ある日、先生に呼ばれ行ってみると、先生は指先をナイフで切り”なめて”と言う。拒む真琴の唇に指を付け、今度は真琴に指を切ってなめさせてと言う。真琴も指を切って差し出す。そんな出来事があり、もっと衣良に惹かれた真琴だったが、あるトラブルをきっかけに、衣良は街を去ってしまう。

 

6年後、美大生になった真琴は、友人たちとアトリエを借り、そこで絵画の制作を続けていた。絵を続けたのは、ただ一人、衣良先生に褒めて欲しかったから。でも、あれ以来、衣良の行方は解らなかった。

 

 

ある日、大学の友人に誘われた展示会で、”指を切った自分が描かれた絵”を見つける。これは衣良先生が描いた絵だと解った真琴は、主催者に頼み、衣良のマネージャーだという桐島を紹介してもらう。桐島と話をして、衣良の居所を聞いた真琴は彼女の家を尋ねていく。

 

衣良と再会した真琴は、先生の絵を描かせて欲しいと頼み、交流が始まる。昔と全く変わらない衣良は、自分が血を吸わなければ生きていけない人間だと真琴に説明する。日の光を浴びると火傷のようになり、まるで吸血鬼のようなのだ。しかし、血を吸わなければもしかして…と考え、血に飢えた世界から衣良を救いだそうとするのだが。後は、映画を観てくださいね。

 

 

吸血鬼伝説について新しい解釈を取り入れて、物語に組み込んだ内容の映画でした。磯谷渚監督の長編映画デビュー作です。粗削りで強引かなと思う部分もありますが、デビュー作とは思えないほど、まとまりがあり、一つのテーマをしっかりと描いてくださっていました。映画としては、とても観やすかったと思います。デビュー作でここまで持ってくるとは、素晴らしいと思いました。

 

衣良という不思議な女性が現れるのですが、最初は、なんだか不気味で気持ちが悪いほどの存在なんです。でも、真琴が惹かれ始め、段々と彼女を見る目が変わって行くと、映画を観ているこちらも、何となく衣良が美しい女王のように見えてくるんです。映像の持っていき方の上手さだと思うんですけど、一つの映画を観ていて、こんな風に人物の印象が変わって行くのは面白いなと思いました。

 

 

オーラを纏った衣良を、沢山の人々が取り合い手に入れようとしていくのですが、衣良自身は、ただ血が吸いたいだけなんですね。でも、真琴に対してだけは血の魅力だけではなく、人間として相対していくんです。自分の教え子であった真琴は、生徒であり、自分を助けてくれる救済者に見えていたんじゃないかな。

 

ネタバレになるからあまり書けないけど、衣良は、壮絶な過去を持っていて、吸血鬼のように血を吸うという行為も、彼女の母親がやっていたことを見て、彼女もやるようになったようなんです。なので、話を聞いた限りでは、生まれつき血を吸っていた訳ではないので、もしかしたら止めさせる手立てがあるのかもしれないと思い始めるんです。

 

 

この考え方が斬新でした。吸血鬼は、吸血鬼に血を吸われて身体が変化してしまうというのが定説だったので、吸うようになってしまったけど止められるという考えが、全くありませんでした。この考え方なのですが、試写会で観た後に脚本の高橋先生が、吸血鬼を実際に検証したらしい本が出ていて面白かったので、それを監督に渡したと仰っていて、その本にこんな感じの血を吸う人が出ていたそうです。

 

真琴は、思春期前にあまりにも印象的な衣良に出会ってしまい、彼女のことが頭から離れなくなってしまったようでした。そんな出会いをしてしまったら、人生が変わってしまいますよね。というか、衣良に出会った人、みんな、人生が変わってしまっていたように見えました。衣良に関わったばかりに離れられなくなり、おかしな道に踏み込んでしまうという、本当に吸血鬼に魅入られたような状態になってしまうんです。吸血鬼じゃないのに、面白いですよね。

 

 

特に可哀想だなぁと思ったのは、カトウシンスケさんが演じている河本という医者なんですが、衣良と関わったばかりに離れられなくなり、それをネタに脅されて、仕方なく衣良を差し出しちゃおうとすると大変なことになるという、自業自得ではあるんだけど、でも、衣良じゃなければ、こんな事にならなかったんじゃないかなと思いました。

 

衝撃的な結末を迎えることになるのですが、どうなるかはお楽しみにしてください。結構、痺れました。こうなることは解っていたような気がするけど、出来たら、こうなって欲しく無かったという思いもあり、複雑な気持ちになりました。衣良という女性がどんな運命を背負って生きて来て、これからどこへ行くのか、ぜひ楽しみにしてください。

 

完成披露試写会のトークショー後撮影です。

磯谷渚監督さん・河野さん・高橋さん

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。超!を付けても良いくらい、内容は良かったです。ただ、デビュー作ということで、粗削りな部分があり、ん?あれ?と場面が切り替わるところがあるので、細かい部分を気にしないで観た方が良いかもしれません。でも、面白かったですよ。出来れば沢山の人に観て頂いて、一緒に話し合いたいくらいの作品でした。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「Polar Night」