「怪物の木こり」
を観てきました。
ストーリーは、
「怪物の木こり」という絵本に出てくる怪物の仮面を被った犯人が斧で相手の頭を割り、脳を奪い去るという連続猟奇殺人事件が発生。犯人は次のターゲットに弁護士の二宮彰を定めた。しかし二宮の本性は、犯人をも上回るほどの冷血非情なサイコパスだった。さまざまな人物の思惑が複雑に絡み合い、事態は次第に混迷していく。
というお話です。
子供を狙った連続誘拐事件が発生する。警察の捜査で、犯人が見つかるが、既に15人の子供はバラバラにされて殺されており、最後の男の子が一人残っていた。
あの連続誘拐殺人事件から31年後、弁護士の二宮は山道を車で走っていると、後ろから追ってくる車がいる。スピードを調整して誘導し、一気に目の前に現れると、相手は横転事故を起こしてしまう。相手はある病院の事務長で、二宮の弱みを握り脅そうとしていたらしいが、二宮は横転した車に近づき、彼の首を一気に切り裂く。この二宮という弁護士、サイコパスらしい。
絵本「怪物の木こり」の怪物の仮面を被り、人間を斧で襲い頭蓋骨を割り、脳を奪って行くという連続猟奇殺人事件が発生する。警察はプロファイリングを使い犯人を追おうとするが、あまりにも情報が少なすぎる。その捜査線上に、弁護士・二宮彰という名前が浮上する。
彼は猟奇殺人と同時期、建物の地下駐車場で強盗に襲われ、頭を殴られたらしい。大事には至らなかったが、同時期に頭を狙われたということで、警察は関連を調べていく。しかし二宮は、後ろから襲われたので凶器は解らないし、普通の強盗ではないかと答える。しかしプロファイラーの戸城は、二宮に違和感を抱き追い始める。
二宮は怪物の木こりに襲われたのだが、必ず復讐してやるという思いから、警察に情報を漏らさず、奴が警察に捕まる前に自分が反撃してやると情報を集め始めていた。サイコパス仲間?の杉谷の協力もあり、段々と犯人に近づいて行く。そして。後は、映画を観てくださいね。
この映画、賛否あるだろうけど、私は気に入ったなぁ。とても好きなタイプの映画なんだけど、原作とラストは違っていたようなんです。というか、このラスト、私が望んでいた感じとちょっと違うなぁと思い、ネットで原作のネタバレラストを読んでみたら、私が希望した通りの終わり方でスッキリしました。何で変えちゃったんだろう。まぁ、あのラストなら、観る人によっていくらでも考えられるから、それで良かったのかしら。
「正欲」の稲垣さんみたいに、”悪魔のような奴っているんだよ”なんですよね。本当に、現実によくそんなことが出来るなってことをする奴っているんです。それは”多様性”で解決しちゃいけないと思うけど、猟奇的な事で欲情する人間もいるんです。あのね、どんな性質を持っていても良いけど、人を傷つけるとか、人に迷惑をかけるなら、いくら多様性とはいえ許されません。犯罪です。
「怪物の木こり」という絵本に描かれた怪物のマスクをし、斧を持って人を次々と殺す連続殺人が起こります。頭を割って脳を取り出して行くという、何とも気持ち悪い殺人事件なんです。警察関係者はゾッとしているんだけど、二宮や杉谷はふーんって感じ。うん、解る解かる、サイコパスなら、頭の割り方とか、脳を何に使うんだろうというのは気になるけど、殺人の動機とかどうでもいいもんね。
そんな2方向のギャップが面白くて、どうなるんだろうとワクワクドキドキで、お話は進んで行きました。いやぁ、亀梨さん、サイコパスの役、合ってますねぇ。顔は笑ってるんだけど目が笑ってないところがマジで似合っていて、こういうイケメンは貴重だなぁと思いました。妖怪人間ベムの時も、上手いなと思ったんだけど、今回も良かったです。
この事件の元凶は、31年前の子供連続誘拐事件が関係していて、最初にその事件が描かれているんだけど、それが、どうして怪物の木こりに繋がるのかが中盤以降に解ってくるので、それまでは二宮のサイコパスっぷりが全開で、ちょっと気持ちイイんです。私も、ちょっとハズれているので、スマホをアルミホイルで包んで凶器にするって、あー、イイ考えだなーって思ったりして、一緒に楽しみました。
私、いつも思うんだけど、こういうサイコパス映画をずーっと観ていると、それが怖くなくなり、普段はそういう”壊したい”という衝動を抑えているんだけど、そのストッパーが外れてしまいそうになるんです。だから、警察とかがビデオ屋のレンタル履歴とか、観ている映画の傾向を調べるというのって、的を得てると思うんです。きっと、こういうのを観続けると、そのストッパーが外れてしまうことがあるんじゃないかな。それこそ、正気が無くなり狂気になってしまうのかなって。
でもね、程々に観るのだと、そういう”壊したい”という衝動が映像の中で昇華されて、自分ではやらなくてもスッとするんです。弱い動物や女性を殺すのはムカつくんだけど、強い奴や嫌な奴を倒すとかだと、スッキリして自分の代わりにやってくれたという気持ちで、衝動が無くなるんですよね。そのイイ塩梅で、サイコパス映画は観るべきなのかなと思いました。
話を映画に戻して、怪物の木こりは、ちゃんと目的があって殺しているんです。サイコパスではなく、この人物を殺さなければという意志でやっています。そこには深い理由があるのですが、それを追って行くのが、この映画です。その理由は、とても悲しい話でした。
子供に罪は無いのに、勝手な大人たちのせいで、いつも犠牲になるのは子どもたち。大人はやったらやりっぱなしで、何の責任も取らない。酷い話なんです。そんな大人の犠牲者だった子どもたちが大人になったのが、今の時代。そりゃ、サイコパスにもなりますよ。(笑)いや、サイコパスになった理由は別なんだけど、でも、現代の若者が、結婚もせず、子供も作らないのは、自分が見てきた大人に幻滅してるからじゃないのかしら。そんな風に感じました。
色々な事を考えさせられる映画でした。亀梨さんの好演もあり、私はこの映画好きになりましたが、やっぱりラストが原作の方が好きかなと思います。私は、悪が存在し続けることで、善が生きられると思うんです。ヒーローがいればヴィランがいるということです。対峙するモノが無ければ、存在意義が無い。巨悪ではなく、誰もが自分の中に持つ悪魔も必要だということです。そうしないと、いつか壊れてしまうでしょ。善悪があって、バランスが取れているんです。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。私は気に入りました。美しい悪は必要です。三池監督、このキャストで作って下さってありがとう。私、三池監督作品、好きなんですよ。ゼブラーマンからクローズZEROときて、十三人の刺客、悪の教典で最高だったのに、最近ちょっと優しい作品が多くて、ガツッとくるのを待っていたんです。久しぶりに気持ち良かったです。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「怪物の木こり」