「シチリア・サマー」美しい青年二人の恋が、家族を巻き込み周りを巻き込み、悲劇が起きてしまう。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「シチリア・サマー」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1982年、初夏のシチリア島。16歳のニーノと17歳のジャンニは、バイク同士の衝突事故をきっかけに運命的な出会いを果たす。育った環境も性格もまったく異なる彼らはひかれあい、友情は激しい恋へと変化していく。かけがえのない時間を過ごす2人だったが、彼らのまぶしすぎる恋はある日突然の終わりを迎える。

というお話です。

 

 

1982年夏、シチリア島。イタリア全土がスペインでのワールドカップで盛り上がる中、花火作り一家の長男ニノは、素直で明るく、高校を卒業したばかり。両親は喜び、卒業祝いにバイクをプレゼントしてくれます。

ニノは、嬉しくてバイクの試し乗りをしていると、交差点で他のバイクと接触事故を起こしてしまいます。ニノは意識があり、直ぐに起きますが、相手は気絶して息が出来ないようだったので、人工呼吸をして息を吹き返させます。事故の相手はジャンニ。ニノの1歳年上で、彼は更生施設から戻り、母親と義父と暮らしており、義父のバイク修理屋で働いています。バイクを客に届けに行く途中で事故に遭いました。



 

ジャンニの職場の前にあるバーには、ガラの悪い男達がたむろっており、ジャンニをゲイと呼んで虐めていた。バイクを届けに行こうとしていたジャンニをバイクで追いかけ、嫌がらせをしていたところで、ジャンニはニノのバイクと接触したのだ。

ニノは、ジャンニに自分の住所を渡し、自分が悪いから、何かあったら連絡して欲しいと言って別れる。それから数日後、義父の修理屋を辞めたいと思ったジャンニは、ニノの家を訪ね、仕事を紹介してくれないかと頼む。ニノの花火工場は無理だったが、叔父の採掘工場では雇ってくれることになる。ジャンニは、採掘工場に通いながら、ニノと親交を深めていく。
 

友達が出来たと喜ぶニノと家族だったが、ジャンニの母親は、息子がゲイであるということが、相手に害を及ぼすのではないかと心配する。以前も同じような事があったようなのだ。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

とても美しい映画でした。風景も、人物も、全てが美しいのに、ストーリーはとても悲しいものでした。1980年代に起きた、実際の事件を基に作られたお話だそうです。この事件が起きた後、シチリア島では、同性愛者の支援団体のようなものが出来たようです。

 

 主人公のニノとジャンニは、本当に美しくて、性別関係無く、好きになってしまうんじゃないかと思うくらいでした。ニノを演じたガブリエーレ・ピッツーロは、デビュー作のようでしたが、自然体で上手かったです。ジャンニ役のサムエーレ・セグレートは、何度か端役での出演はあるようですが、主演は初めて。ダンスもやっていて、今はニューヨークにダンス留学しているそうです。

 

 

ニノとジャンニはバイク事故で出会います。ジャンニは、仕事場の近くにあるバーの男たちに虐められていますが、その中のボス的な1人は、虐めではなく、ジャンニを狙っているんです。そして、襲われそうになり、バイクで逃げている途中で、ニノと事故るんです。ゲイは病気だという考え方があるにも関わらず、バイセクシャルの人はいて、見境なく襲ってくるというのは、問題ですよね。

 

事故で、ジャンニが気絶し、呼吸困難になっている時、直ぐにニノが人工呼吸をするんです。きっと、学校で教わっていたのでしょう。ニノにとっては人助けだったんだけど、ジャンニは、キスに思えたようでした。で、ニノに”キスしたよね”と言った時から、何となく、ニモも意識し始めたように見えました。それまでは、学校の男友達とかと一緒だったと思うんだけど、突然、愛に目覚めたというか、恋愛対象に見えてきたのかなと思いました。

 

 

2人が恋し始めてからの映像が、ほっんとに美しいんです。2人のしあわせな心の中を映しているようで、木々は青々と光り、日差しも照り付けて、空は真っ青、シチリアって、こんなに綺麗なんだなーって思いました。そんな中で、美少年が2人、楽しそうにじゃれていたら、もう、最高でしょ。ファンタジーの世界よね。

 

でも、2人を見る周りの目は、まるで汚いモノを見るような、異端者を見るような、そんな目つきなんです。そして、噂をし始める。「ニノくん、大丈夫?男の子と一緒に、楽しそうに遊んでいるけど。」「確か、あのジャンニって子、ゲイっていう噂で更生施設に入ってたんじゃなかったかしら。」なんて声が、ニノの親の耳に入ってくるんです。

 

この時代のシチリアでは、同性愛なんて以ての外。ニノは、高校を卒業したばかりで、両親はこれからを期待して大切に育ててきたのに、仲良くなった友達にゲイにされたりしたら、たまったもんじゃない!と怒り、ジャンニとは、もう付き合うなと言われてしまいます。現代だと、認めてあげればという気持ちになりますが、この時代は許されません。とても可哀想でした。愛し合う2人が、無理に引き裂かれるなんて。

 

 

観ていて、考えました。ニノは、まだ恋もしたこと無かったんじゃないかな。シチリアの田舎だし、まだまだ子供みたいで、自分の美しさにも気が付いていなかったんです。だから、もし、周りに女の子がいて、先に付き合ったのなら、ゲイにはならなかったんじゃないか。ジャンニとは、良い男友達でいられたのかもしれないんです。元々、ゲイの人だと、男性が好きになると思うけど、ニノは、そうではなさそうに見えました。ジャンニという人間が好きだったように思います。

 

一方、ジャンニは、本当にゲイだったんじゃないかな。なんとなく、雰囲気や、仕草などが、そう見えました。ジャンニの母親は、自分の息子の事を解かっていて、だからニノの家に電話をしたんだと思うんです。難しいですよね。

 

この映画、まず、狩猟の場面から始まり、ウサギを狩るんです。そして、話が佳境に入る前、また、ニノと叔父と甥っ子で狩りに出て、甥っ子が初めて兎を狩るんです。これが、最後の二人の死に関わってきていると思いました。最後、銃声の音が聞こえて、終わるのですが、2人が殺されたのか、自殺したのか、それとも関係無い人が狩りで撃ったのか、解らないんです。そして、エンディングに入る前、2人の男性が殺された事件があって、それが、この映画の基になっているという解説が入るんです。

 

 

観た後に、翻訳をされている山本太郎さんが解説をしてくださって、実際の事件は、犯人は捕まっていないらしいのですが、どーも未成年が撃ったと出頭してきたらしいんです。でも、証拠不十分だったのか、逮捕されなかったようです。この甥っ子と重なるでしょ。いつも、ニノを不思議そうに見つめていた甥っ子。あれは、憧れだったのか、嫌悪だったのか、何だったんでしょう。

 

この事件が大きく広がったのは、2人は殺された時、手を繋いで死んでいたそうです。実際は、25歳と15歳の男性だったそうです。観た後に、その解説を聞いて、また涙が出てしまいました。ただ、好きだっただけなのに、なんで病気とか、汚いとか言われなきゃいけないのか。あんなにも美しい二人だったから、妬みや嫉妬で、周りから疎まれたのかもしれません。

 

この映画、もしBL好きで、「風と木の詩」などを知っている方がいたら、あの話と重なるかもしれません。ニノがふわふわの金髪で、ジャンニが黒髪なんです。まるでジルベールとセルジュでしょ。まぁ、性格は違いますが、見た目がピッタリなのよ。この二人なら、あの漫画の実写版が出来るかもしれません。そうなるとオーギュストが問題ね。(笑)

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。悲しくも美しい、夏の恋愛を描いています。こんなにも愛し合ったのなら、もしかして二人で逝けてしあわせだったかもしれない。いや、やっぱり一緒に生きて行きたかっただろうなぁ。本当に悲しい映画でした。性差別はダメです。誰が誰を好きでも、尊重すべきだし、見守ってあげないと。そんな映画でした。面白いです。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「シチリア・サマー」