「Winter boy」
を観ました。Fan’s Voiceさんの、独占最速オンライン試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
冬のある夜。寄宿舎で暮らす17歳の少年リュカは父が事故死したとの連絡を受け、アルプス山麓の実家に帰る。愛する父の死に直面し、大きな悲しみと喪失感にさいなまれるリュカ。葬儀の後、兄に連れられて初めてパリを訪れたリュカは、兄の同居人である年上のアーティスト、リリオと出会う。優しいリリオに心惹かれるリュカだったが、リリオにはある秘密があった。
というお話です。
田舎道を走る車の中、父親に寄宿舎に送って貰っているリュカは、父親が大好きなんです。そんな時、突然に後ろから追い越しをかけられ、父親は車を道路から外して停めます。無事に停車させられた父親は、安全にリュカを寄宿舎に送り届けてくれます。
事故により嫌な予感がしたルーカスは、数日後、学校の授業中に教師に呼び出され、父親が交通事故に遭ったと言われ、兄に連れられ、直ぐに自宅へ帰ります。自宅に着くと、沢山の親族が集まっており、父親が死んだと伝えられます。
愛する父の死に直面し、大きな悲しみと喪失感にさいなまれるリュカ。葬儀の後、兄の住むパリに一緒に行くことにする。兄の家には、同居人であるリリオがいた。彼は兄の同級生であり、アーティストです。リリオは大人で優しく、リュカの心も癒してくれ、リリオに惹かれていくリュカ。
父親は、リュカがゲイであることを6~8歳位の時に気がついていたらしく、リュカは父を残念がらせてしまったと思っていた。しかし、その事についても、何も話すこと無く亡くなってしまい、その事もリュカの傷となっていたのです。
パリでの数日後、出かけて来いと言われたリュカですが、兄の家に戻ると、リリオが、ある男性を呼び入れていて…。リュカはリリオの秘密を知り、段々と壊れていきます。そして、兄に実家に帰れと言われ、自宅へと帰りますが…。後は、映画を観てくださいね。
ある青年が思春期に父親を亡くし、その悲しみ、苦しみを昇華出来ずに、爆発してしまうというお話でした。10代で父親が亡くなるのは、辛いと思います。まだまだ、父親が必要な時期ですもんね。それに、亡くなる前に、一度、父親の車に同乗していて事故があり、その後、事故で亡くなったというので、リュカは、何か理由があるのではと思ってしまったんです。父親は運転している時、難しい顔をしていましたしね。
何も話を出来ずに、父親がいなくなってしまったので、リュカの中には、喪失感以上に、沢山の消化しきれない出来事が溜まってしまったのだと思います。母親には相談出来ないし、兄も、自分のことで手一杯のようだし、パリへ行っても、誰にも相談出来ず、話し相手もおらず、寂しそうでした。そんなリュカの相手になってくれたのが、リリオだったんです。
性的マイノリティの話とか、これからの未来のこととか、家族の事とか、唯一、自分の味方になってくれそうだったのがリリオだったのだと思います。だけど、彼は彼で問題を抱えていて、彼のことが好きだけど、でも、やっぱり父親とは違う事を感じて、はけ口を失くして、自宅へ帰るんです。
そして、とうとう爆発をしてしまうんです。うーん、でも、これ、どうしようもないと思いました。だって、母親も、突然に夫を亡くして気持ちも苦しいし、生活の事に関しても経済的な心配もしなければいけないし、息子の面倒をしっかり見る事なんて、出来ないと思います。もう、自分が壊れそうなんですから。兄も、ちょうどアーティストとして売れ始めていて、今を逃してはというところなので、弟の面倒を見るのは無理ですよね。アーティストとして認められれば、経済的に母親も助けられるし、逃すことは出来ません。
なので、やっぱり病院とかで、医者の助けを求めることが正解だと思いました。家族だけで何とかというのは、無理ですよ。そこは、割り切って、しっかりと落ち着くまで面倒をみてもらうようにすることが、最善策なのだと思いました。よく、日本では体裁が悪いからなのか、自宅で見ることが多いように見受けられるけど、専門家の意見は聞くべきだし、本人だって、落ち着いて考える時間が必要でしょ。家にいたのでは出来ないと思います。なので、紆余曲折あったけど、リュカは、よい方向に行くことが出来て、良かったんじゃないかと思いました。
最初しか出てきませんが、父親役を、監督のクリストフ・オノレさんが演じているんです。とっても難しい顔をして、息子が楽しそうなのに、悩んでいる様子の顔なんですよ。だから、リュカが不安になるのも解るんです。父親が、一体、何を悩んでいたのか。ただ、ぼんやりしていただけなのか、それとも人生について考えていたのか、それとも…。
そんな顔を最後に見たのですから、リュカは不安になりますよ。誰だってそうでしょ。もしかして、事故じゃないんじゃないかと疑ってしまうのも無理はなかったと思います。
リュカは苦しんで、考えて、そして周りの優しさに触れて、自分を取り戻して行ったのだと思いました。リリオの優しさが伝わって来たなぁ。お母さんもお兄さんも優しいんですよ。それが、やっと伝わったという感じなんです。リュカも、一つ大人になったんじゃないかな。人の気持ちを理解出来るようになってきたんです。その成長が、表現されていました。
内容も良いのですが、キャストが素晴らしかったです。特に主演のポール・キルシェさんは、お母さんが大女優のイレーヌ・ジャコブさん。その遺伝子を継いでいるからなのか、とても印象的で表現が豊かでした。プロデューサーの方がアフタートークで、家族の仕事を子供の頃から見ていたからなのか、現場での理解度が高く、撮影がとてもスムーズだったそうです。
やはり”蛙の子は蛙”と言うけど、そうなんでしょうね。”親の七光り”と言う方がいるけど、子供の頃から自然に身についている事が撮影の助けになるのだから、最初から教える人よりも優遇されるのは当たり前でしょ。でも、このポールさんは、オーディションで決まったそうです。母親のコネとかではありません。
母親役にジュリエット・ビノシュさんで、素晴らしかったです。やっぱり素敵ですよねぇ。文句のつけようがないです。そして、兄役のヴァンサン・ラコストさん。「幻滅」でも良い演技をしていたし、今回も良かったです。お兄ちゃんって、こんな感じですよ。うん、兄弟って難しいですよね。
クリストフ・オノレ監督の最新作は、父親を亡くしたことで揺れる青年の姿を感情豊かに描いていました。音楽は、日本人の半野喜弘さんです。映像に合っていました。良かったです。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。キャストが素晴らしい事と、とても現実的な話だったので、気に入りました。もう一つ、超を付けたいかなぁと思ったのですが、これ、やっぱり大画面で観たいです。フランスの田舎の風景が美しいので、オンラインだとちょっと寂しかったかな。大画面だと、もっと壮大で感動的だと思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「Winter boy」