【東京国際映画祭】(12作目)
「ダンテ」
(ワールド・フォーカス)
を観ました。
ストーリーは、(今回はネタバレです。ダンテの伝記なので。)
西暦1350年。フィレンツェ市は、約30年前に亡くなったダンテ・アリギエーリに恩赦を与えます。そのため、ジョヴァンニ・ボッカチオは、ラヴェンナのサント・ステファノ・デッリ・ウリヴィ修道院の修道女である、唯一の生き残ったダンテの娘であるシスター・ベアトリーチェへ補償として、オル・サン・ミケーレ商会から10フローリンの金貨を持参するよう依頼されました。旅の途中、ボッカチオはダンテを知る人物や彼の死を目撃した人物と出会い、ダンテの人生をたどります。
幼い頃に母親が亡くなり、孤児となったダンテは、父親と2番目の妻に育てられます。少年時代、彼はベアトリーチェ・ポルティナーリと出会い、ダンテにとって彼女が唯一のミューズとなります。
ダンテは若くして高く評価される詩人となり、グイド・カヴァルカンティを含む多くの知識人と知り合いました。有名になったものの、ベアトリーチェの家はダンテの家よりも地位が高く、ベアトリーチェは地位の高い男性と結婚させられてしまいます。
ダンテはカンパルディーノの戦いを含むフィレンツェの数多くの戦いに兵士として参加し、功績を上げますが、帰ってくると、ベアトリーチェは若くして亡くなり、ダンテは絶望に陥ります。
そんな彼を励ますべく、ダンテの家族はジェマ・ドナティと結婚するように促します、彼は彼女との間に多くの子供を作りますが、ジェマを心から愛することはありませんでした。
経済的に苦しくなったダンテは、議会の一人に立候補することを決意しますが、妻の家族や友人のグイドを裏切ることになってしまいます。それでも社会を変えるために活動をしますが、教皇ボニファティウス8世の敵意を買い、彼が指示した考えは劣勢となり、ダンテはフィレンツェを追放される事となってしまいます。
ボッカチオはダンテの足跡をたどり、追放後の彼の功績を目にし、感動します。そして娘のヴェアトリーチェに約束の補償を渡しますが、彼女はフィレンツェを許さず、受け取りません。しかし、ボッカチオのダンテへの愛を知り、彼に免じて許します。そして、ダンテは「すべての星の本当の名前」を知っていたんですとボッカチオに話します。
後は、映画を観てくださいね。
ごめんなさい。今回は、ダンテの歴史なので、ネタバレになってしまいました。でも、ダンテの歴史を知って、この映画は観て頂いた方が、理解が深まると思います。
ダンテと言えば、叙事詩「神曲」が有名ですが、監督は「新生」を読んで欲しいと仰っていました。彼は詩人であり、哲学者、政治家としても活動をしていました。そのせいで、フィレンツェを追放されたんですけどね。
何となく、ダンテと言われると、難しそうな気持がしちゃって、本なんて、あんまり読みたくないですよね。言葉も難しいし、なんか、何が言いたいんだか何だか、その本を読んでも、結局、解説本を読まないと理解出来ないって感じで、私も、その昔、学校で「神曲」を手に取って、チャレンジしてみたものの、途中でポイッてしちゃったんです。なので、私のような人間からしたら、この映画で、ダンテという人を解かりやすく解説しながら、ボッカチオが旅をしてくれるので、こんな人だったんだなーと理解が出来ました。
最後に娘が、父(ダンテ)は、「すべての星の本当の名前」を知っていたという言葉に全てが詰まっているのですが、星というのは、世界中に生きている人々であり、ダンテと言う人は、最後まで知ることを怠らず、世界を理解して亡くなって行ったのだという事を言っているのだと思いました。それくらい、ダンテと言う人は、沢山の事を考えて、理解して、人のために尽くしていたんでしょうね。
でもね、ダンテさんって、子供の頃に出会った、ご近所さんのヴェアトリーチェを好きになって、それからずーっと彼女だけを見ていたんです。彼女が死んでも、ヴェアトリーチェがダンテのミューズで、妻と結婚しても、一番はヴェアトリーチェだったようです。でも、まぁ、身分が違い過ぎて、結ばれない人だったから、憧れのような感じだったのでしょう。俗に言う”推し”って感じだったのかもしれません。
そんなダンテですが、戦争にも兵士として参加しています。馬にも上手く乗れなかったりするくらい、ちょっと細めで、弱々しい感じだったけど、友達のグイドが助けてくれて、凄く世話になるんだけど、時代が変わると、今度はグイドを裏切って、彼をフィレンツェから追放することに賛成したりするんです。色々と意見が食い違ったりしたのかもしれないけど、友達は裏切らないで欲しかったな。思想の違いがあったとしても、それは、議論して戦うべきだし、この部分は、ダンテが間違えたのではないかなと思いました。
友人との仲違いの事は描かれていますが、政治的にどれくらいマズいことをしてしまったのかという事は、映画では詳しく描かれてはいません。なので、教皇に何故嫌われてしまったのかという事は、この映画では解りませんが、簡単に言うと、教皇だって地獄に落ちるような汚いことをしていると、神曲に書いてしまったので、怒られて、フィレンツェを追放されたんです。それは言っちゃダメでしょって事なんです。
ジョヴァンニ・ボッカチオは、有名な詩人であり作家です。若い頃からダンテの作品を読んでいたようです。ダンテを理解し、賛美していたボッカチオに、フィレンツェは、ダンテに恩赦を与えることを伝えさせて、恩償を届けることを頼んだんです。でも、亡くなってから30年も経っているのに、酷いと思いませんか?せめて、生きている内にフィレンツェに帰してあげたかっただろうなぁ。この時代から、政府のやることは時遅しなんですよねぇ。
ボッカチオとダンテは、年の差が50歳もあり、直接、逢うことは出来なかったようですが、これだけダンテの事を理解して、彼のために出版を手伝うなど、凄い人でした。そんなボッカチオがいてくれたからこそ、今の有名なダンテが、私たちの前にいることになるんです。うーん、深い。
私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。面倒臭そーなダンテという人のお話を、解りやすく、ダラダラと描かずに教えてくれる映画です。この映画を観ておけば、ある程度は、ダンテの事を理解出来るし、楽しむことが出来ると思いました。日本公開が、まだ決まっていないのかしら。これは、日本でも公開して欲しいですね。だって、イタリアの巨匠と言われるプピ・アヴァティ監督による作品なので、公開して欲しいですよね。そうなったら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ダンテ(ワールド・フォーカス)」