【東京国際映画祭】「真昼の女(コンペティション)」ドイツでも女性は酷く虐げられていたんです。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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【東京国際映画祭】(4作目)

 

「真昼の女」

 

(コンペティション)

を観ました。

 

ストーリーは、

1920年代のドイツ。地方から医学を志してベルリンに出てきたユダヤ女性ヘレーネは、自由な雰囲気の中で青春を謳歌する。やがてヘレーネは文学を志す青年カールと出会い、結婚する。だがナチスが台頭したことにともない、ヘレーネの運命は大きく変わってゆく。

というお話です。

 

 

あるユダヤ人女性の半生を描いた作品です。家族で暮らしているのですが、父親は戦争へ行き、母親は、3人の子供の一番下の男の子が亡くなり、精神が壊れてしまいます。残った姉妹は、叔母を頼ってベルリンへ行き、妹のヘレ-ネは、医者を目指します。

 

ベルリンで、ヘレーネはカールという青年と出会い、結婚しますが、ナチスが台頭し、戦争が激化し、ユダヤ人迫害が始まります。ユダヤ人のヘレーネや姉とその友人は、家も無くなり、居場所がなくなります。

 

素性を隠して、病院で働いていたヘレーネですが、段々と危険になっていきます。そんな時、病院に来ていたドイツ人将校・ヴィルヘルムに気に入られ、求婚されます。ナチス将校だし、強引なところがあるヴィルヘルムを良く思っていなかったヘレーネは断りますが、アーリア人の証明書を偽造してくれるというので、気が乗らないながらも、求婚を受けて、結婚することにします。そして、アーリア人のアリースとして生活を始めるのですが…。後は、映画を観てくださいね。

 

この映画は、ベストセラー小説の映画化だそうです。ヘレーネという女性が、戦争に翻弄され、大きく人生が変わって行く姿が描かれていました。でも、戦争の描写はほとんど無く、通常の生活をしている一般人の姿を追っているので、夫の制服姿や、移動先などで戦争が動いている事が描かれ、病院に運び込まれた怪我人の姿で、戦況が悪化していることが見て取れました。

 

でも、この映画は、戦争の事を描いているのではなく、この時代には女性の地位が低く、生きるのがとても大変だったという事が描かれていました。まず、人種の証明書が必要で、その後、女性が働くには、夫の許可が必要だったりするんです。勉強をするにしても、簡単に大学に入る事は難しいようでした。

 

ヘレーネは、アーリア人のアリースとしての証明書を偽造して貰い、アリースとして生き始めるんです。そして、ヴィルヘルムの妻となりますが、このヴィルヘルム、酷い男なんです。まず、彼女が処女じゃなかったことに怒り、ベッドでも自分優位でないとイヤだと言うんです。うーん、面倒臭い男でした。

 

アリースは、結婚しても働きたいと言うのですが、ヴィルヘルムは家事が忙しいだろうと言って、許可を出さないんです。いつも家の中が完璧になっている事を望んでいて、家が汚いと言って起こるんです。イライラするでしょ。アリースは不満を持ちながらも、アーリア人として生きなければ強制収容されてしまうので、我慢しているのですが、子供が出来ないように気を付けているんです。でも、レイプまがいの事をされて、妊娠してしまいます。酷いでしょ。

 

この時代の男は、本当に自分本位で、女は自分の召使くらいにしか思っていないんですよ。あまりにも横暴な男で、マジで気分が悪かったです。子供が出来ても、その横暴さは変わらず、アリースは苦労をしているのですが、ある日、いきなり、ヴィルヘルムが家族を養うのは辞めるというんです。はぁ?と思いました。あんた、どういう男だよ。


そしてアリースは、シングルマザーとして働きながら子供を育てていくんです。あまりの展開に、驚いてしまいました。いやぁ、でも、こんな事がドイツでは起こっていたのかもしれません。もう、戦争末期で、ナチスは降伏をしたんですから。ナチスの軍人なんて、追われて殺されたりだったと思います。そういう部分は描かれていませんが、ナチスが降伏をしたという情報は入ってきましたから。

 

 

本当なら、勉強をして大学へ行き、医学の道に進むはずだったヘレーネなのに、希望は一切、叶う事がありませんでした。でも、運命により、なんとか生き延びることは出来たという事です。

 

これ、少しネタバレしてしまいますが、子供が生まれて、男の子なんです。ヘレーネは可愛がってはいるのですが、アーリア人として産んだ子です。なので、ユダヤ人に戻れるとなった時に、駅に置き去りにするんです。これだけは許せないと思いました。人間としてそれはダメだよ。

 

そして、最後の最後に再会をするんです。うーん、息子が母親を許すのですが、私なら、自分を捨てた母親なんて、絶対に許さないけどね。貧困で、どうしようもないとか、そういう理由があれば良いけど、ただ、足手まといだったからだと思いますよ。ユダヤ人として、ヘレーネとして生き直すためだったと思うけど、だからって、小さい息子を捨てるなんて許さないけどね。

 

ただ、ここで思い出されるのが、最初に出てきた時に、ヘレーネの母親はヒステリックで精神的に壊れていて、子供たちを育てるという様子ではありませんでした。なので、ヘレーネは、自分もマトモに育てて貰えなかったので、自分の子供に対しても、責任を持てなかったのかなという思いにもなりました。ま、でも、映画的には、再会を喜んで、ハッピーエンドという事で良かったんじゃないかな。映画としては、良い最後だったと思います。

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。ちょっと、話しが長くて、女性が苦しむ場面が多いので、ムカついたりしますが、映画としての構成や内容は、とても良かったと思います。良い映画でした。日本公開は、まだ決まっていないようですが、歴史的に世界で女性がどれだけ虐げられてきたのかという事を、よく描いているので、歴史を知るためには、良い映画なのかなと思います。もし、日本公開が決まったら、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「真昼の女」