「キリエのうた」
を観てきました。
ストーリーは、
石巻、大阪、帯広、東京を舞台に、歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエ、行方のわからなくなった婚約者を捜す青年・夏彦、傷ついた人々に寄り添う小学校教師・フミ、過去と名前を捨ててキリエのマネージャーとなる謎めいた女性・イッコら、降りかかる苦難に翻弄されながら出逢いと別れを繰り返す男女4人の13年間にわたる愛の物語を、切なくもドラマティックに描き出す。
というお話です。
5月の夕方、 新宿駅南口路上でシンガーソングライターのキリエは生声とギターで弾き語りを始める。彼女は歌う以外はほとんど声が出せない。だが、その歌声は歩行者を惹きつける。ある夜、キリエの前にイッコと名乗る女性が立ち止まり、リクエストし、拍手とともに多額の投げ銭をする。
その後、キリエはイッコと食事をし、彼女の家に泊る。翌朝、化粧を落としたイッコの顔を見て驚く。彼女が帯広の高校で出会った、先輩であり、友人の広澤真緒里だったのだ。イッコはキリエのマネージャーを買って出て、マイクやアンプなど機材や衣装を揃え、少しずつ規模の大きな路上ライブを仕掛けていくようになる。
真緒里(イッコ)は高校時代に潮見夏彦に大学受験のための家庭教師をしてもらっていた。その時に夏彦は真緒里と同じ高校の小塚路花(キリエ)を自分の妹だと言い、話しかけてやってほしいと頼んだことが真緒里と路花が知り合うきっかけとなっていた。
しばらくして、イッコは突然、キリエに、旅行に行ってくるからと言い残し、いなくなってしまう。キリエはイッコが住んでいると思っていた家に、彼女が帰ってくるまで住み続けているのだが…。
夏彦は仙台市の高校時代に路花の姉・希(きりえ)と交際しており、結婚の約束をしていた。そんな時、東日本大震災が発生し、石巻にいた希と希の母・呼子は津波に巻き込まれ行方不明となってしまう。夏彦は大阪の阪神大学医学部に合格していたが、進学は一旦諦め、石巻でボランティア活動をしていた。
キリエの音楽活動に協力してくれている松坂珈琲たちが企画した「路上主義・新宿中央公園フェス」は、いろんなバンドやボーカリストが参加し11月の連休に開催された。イッコはしばらく行方不明になっており、フェスの前にはキリエの所に帰り、直前までキリエに連絡をしていたが、当日会場に現れることはなかった。そして…。後は、映画を観てくださいね。
岩井監督の新作、ちょっと長かったけど、良かったです。イッコ役の広瀬さんが良かったなぁ。キリエさんは、ちょっと私の苦手なタイプで、観ていて、イライラする場面もありました。歌は、チャラさん系のカスレ声で、とても良かったので好きになりました。
この映画、3時間ほど上映時間があるんです。その中に、キリエと呼ばれる少女の13年間が描かれていきます。彼女の本当の名前は路花といい、少女の頃に、東日本大震災で家族を亡くします。その描写は、結構、後の方に描かれていて、それまでは、何故彼女が、本名の路花という名前ではなく、キリエという名前で路上ライブをしているのか、どうして東京にいるのかなど、彼女の現在の姿から追って行くんです。
最初は、キリエという女性が、東京で路上ライブをしているんです。そこへ、歩いていた逸子(イッコ)という女性が声をかけて、リクエストをして、そしてホームレスというので、自分の家に誘うんです。翌朝、目が覚めると、昨日のイッコが、実は、キリエが知っている真緒里だった事に気が付きます。昔は、路花と真緒里だったのに、今は、キリエとイッコとなって、再会するんです。
そこから、彼女たちが知り合った過去の故郷での出来事などが描かれ、また、現代に戻って、キリエを有名にするために、イッコがマネージャーとなり、路上での演出をしていきながら、仲間も増えていきます。この映画、キリエが中心にはいるのですが、パートパートによって、主人公が変わり、イッコのお話や、夏彦のお話、風美のお話が描かれて行きます。それぞれが、バラバラに生きているのに、キリエで繋がっていたという事なんです。
私は、イッコのお話が一番好きなんだけど、母親も祖母も水商売をしていて、父親はいないんです。高校で進学はどうするという話になったとき、母親が、「家は3代続く水商売だから、あの子はちょっとバイトでもして、その後、私の店を継げばいい。」と言うんです。いやぁ、可哀想だなぁと思いました。娘を家に縛り付けるという事でしょ。そりゃ、娘は未来が見えなくなるし、絶望的になりますよ。酷い母親だなと思いました。
そこで、進学出来るということになり、イッコは勉強をするんです。そして、大学に受かるんだけど、結局、大学にはお金の関係で行けなくなる。酷いでしょ。母親が常連客と再婚するからということで、娘の大学費用を出して貰えるはずだったのに、男に逃げられ、パァになるんです。何処までも可愛そうでした。
イッコは、大学には行けなかったけど、実家に戻って、女を使って金儲けをするのは嫌だと言って、帰らないんです。でも、東京にいても、女を使って金儲けをすることになってしまっていて、残酷な話だなと思いました。若い頃は、女を使うことが一番楽に金儲け出来ると思うだろうけど、先の事を考えたら、若い頃に貧乏でも能力を身に付ければ、その分、年を取ってから返ってくるんですけど、それが解らないんですよ。若者の象徴的な姿でした。
次に、夏彦のお話ですが、路花の姉のキリエと付き合い始めるというか、キリエが積極的に誘惑をして、付き合い始めるんです。そして、夏彦の大学受験前に妊娠発覚します。最悪のパターンですよね。純愛なのかもしれないけど、私には、夏彦がやられちゃったなとしか思えませんでした。開業医の息子だし、医学部に行く予定だったしね。一番、付き合っちゃいけないタイプの女性です。若い頃は、つい、誘惑に負けちゃうよね。
そして、東日本大震災が起きて、色々と混乱するんです。どうなるのかは書きませんが、私には、なんだかバチが当たったように見えてしまい、嫌な展開でした。誰も、悪気がある訳じゃないと思いますが、どうしても、この展開は素直に観れませんでした。
この2人は、東北と北海道でのお話ですが、風美の話だけは、大阪の話なんです。何故か、東日本大震災の後に、しばらくして、大阪の公園に住み着いている女の子がいて、その子を保護したのが、風美なんです。そして、保護された子が、路花だったんです。何故、大阪にと思うけど、それは映画で確認してください。路花には、それなりの理由があったんです。
そんな風に路花=キリエと出会った人々が、離れ、また出会い、と絡んでいくお話でした。でも、時代や場所が、バンバン飛ぶので、観ていて、段々と辛くなりました。一つの話をずっと追う事が出来ないので、頭の切り替えが大変だったんです。3時間の中で、何度も切り替えさせられるので、さすがに疲れました。
でも、お話としては、岩井さんっぽい感じで、ぞれぞれの人に結末があって、キリエはひとりで未来を探し続けるみたいな話になっていて、良かったかなと思いました。音楽は良かったですよ。小林さんが担当されていて、気持ち良かったです。リリィシュシュやスワロウテイルの頃から好きなんです。
私は、アイナ・ジ・エンドさんをこの映画で初めて知りまして、観始めたころは、ちょっとタイプじゃなく、姉のキリエを演じている時のキリエの性格が嫌いで、うーん…となったのですが、歌を聞いていたら、段々と惹き込まれて、映画の最後の方では、彼女も彼女の歌も好きになりました。不思議ですね、映画1本で、人を好きになってしまうんです。それが、岩井マジックなのかもしれません。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。良い映画だと思いましたが、さすがに3時間は長いなと感じたのと、何度も、時間と場所が入れ替わり、それが多いので、少ししんどくなりました。この内容を欠かさずに脳に入れ込もうとすると、情報量が多すぎて、細部までを覚え込めませんでした。これは、自宅でBlu-ray鑑賞パターンかな。すずさんが、とても綺麗に描かれているので、素敵ですよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「キリエのうた」