「アンダーカレント」幸せの形は人それぞれ違うけど心の奥に仕舞った澱が多いほど豊かになれる気がする | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「アンダーカレント」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

かなえは家業の銭湯を継ぎ、夫・悟とともに幸せな日々を送っていた。ところがある日、悟が突然失踪してしまう。しばらくしてかなえは一時休業していた銭湯の営業をどうにか再開させる。数日後、堀と名乗る謎の男が銭湯組合の紹介を通じて現れ、働くことに。かなえは胡散臭い探偵・山崎とともに悟の行方を捜しながら、堀との奇妙な共同生活の中で穏やかな日常を取り戻していくが。

というお話です。

 

 

銭湯の女主人・かなえは、夫・悟が突然失踪し途方に暮れる。1年前に父親が亡くなり、2人で銭湯を継いでしばらくの事だった。組合の旅行先で、お土産を買いに行ったまま帰ってこなかったのだ。

常連さんの口添えもあり、なんとか銭湯を再開する。しかし、自分と手伝いのおばさん二人での銭湯の営業は難しく、銭湯組合に人手の紹介を頼んでいたら、堀と名乗る謎の男が「働きたい」とやってくる。

住み込みでと聞いてきたらしいが、かなえの一人住まいの家に一緒にという訳にもいかず、以前、職人が使っていた釜の近くの部屋を貸し、アパートを探して貰うことにする。二人の不思議な共同生活が始まるが、堀のおかげで銭湯は順調に稼働し始める。



 

一方、友人・菅野に紹介された、彼女の夫の友人で貸しがあるらしい、ちょっと胡散臭い探偵・山崎に、夫の行方を探して貰うことにする。あまり期待していなかったかなえだが、夫の知られざる事実を次々と知ることになる。

悟、堀、そして、かなえ自身も心の底に沈めていた想いが、徐々に浮かび上がってくる。何も無いと思っていた自分の中にも、”澱”が溜まっていたことに気付くかなえだった。後は、映画を観てくださいね。

 

私、この映画の空気感がとても好きでした。ハッピーな映画ではないですが、心に沁みる内容でした。人が生きていく内には色々な事があるし、どっちかと言うと嫌なことが多いし、自分の中だけでは処理しきれないのに、誰にも話せない事って、沢山あるでしょ。

 

 

きっと、どんな人にだって、人に話せない事、話したくない事って沢山あると思うんです。嘘をつきたくないから話さないことだってあるでしょう。それは、生きれば生きるほど蓄積されて、心の奥の方に溜まっていく。処理しないで溜まっていくから、忘れちゃうんだけど、時々、思い出したりして、チクチクするんだと思うんです。

 

それって、どうしようもないですよね。今更解決なんて出来ないし、かと言って、自分の中で納得しようにも出来ないですもんね。ずーっと澱として溜まっていくんです。その事を、嘆く人もいるだろうけど、私は、その”澱”って、年を取る証拠だし、それだけ自分が学習していることだから、増える方が豊かな人生が送れるんじゃないかと思うようにしています。それだけの体験をしてきたのだから、もっと色々な事に喜びを見出せるんじゃないかと思っています。

 

 

この映画でも、主人公のかなえは、夫の失踪を期に、色々な事を経験していき、その経験の中で、昔の事を思い出したりして、その子供のころの傷に、新しい傷を重ねていくんです。なんで、そんなに不幸ばかりと思うかもしれないけど、そんなことないんです。他の人にだって、それぞれ、辛いことは起こっているし、誰もが傷ついている。そして、知らない内に、自分も相手を傷つけているんです。

 

夫の悟は、失踪して、どうなったのかということが、胡散臭い探偵の山崎によって、明らかになって行きます。胡散臭いけど、とっても有能な探偵のようでした。あまり詳しくは書けないけど、何で悟が失踪したのかということは、最後まで言わないのですが、私が思うに、かなえと一緒にいることが、心の重荷になっていったのだと思います。

 

 

かなえにとっては、これから銭湯の経営をどうして行こうかとか、子供はどうするかとか、未来の事を夫に相談するのは当たり前だったと思います。私でもそうですから。でもね、悟にとっては、未来の事を想像するのが心の重荷になったのだと思います。彼の過去も解ってきますが、彼の経歴からして、計画的にとか、未来はどうするということを考えるのは、辛かったのかなと思いました。かなえが好きなら、正直に言えば良かったのにと普通なら思うけど、彼は言えない人なんです。残酷な人ですよね。でも、仕方ないんです。そういう人間っていますから。

 

一方、堀はフラッと現れて、かなえの銭湯で働き始めます。実は、彼にも難しい過去があり、傷を背負って、現れたんです。無口で、黙々と働いてくれて、とても助かるのですが、イマイチ、掴みどころが無い人なんですよ。彼も、多くを語らず、嘘はつかないけど、かなえに過去の事を全く話しません。きっと、聞きたいことがあったんだと思うんです。でも、聞くことが出来ない。そして心の奥に沈めているんです。

 

 

誰もが正直で、何でも話が出来たら良いと思うかもしれないけど、そうなったら、意見が食い違い過ぎて、全くまとまらないし、喧嘩にしかならないですよね。それぞれの人に正解があって、善悪も違います。人が全てを分かり合えるなんてことは無いと思うんです。だから、曖昧な状態でも納得をして、心の奥にしまう出来事があってもいいんじゃないかな。そんなにぶつかっても意味が無いでしょ。

 

そして、何となく折り合いをつけて、気持ちのいい場所を見つけて、生きて行くのが、良い生き方なんじゃないかなと、この映画で思いました。そうやって気持ちのいい場所を見つけられたら、それって、しあわせって言って良いんじゃないかしら。若い頃には、あっちもこっちもと欲張って、楽しんで騒いでというのが幸せと思うけど、沢山の経験をした大人のしあわせは、ちょっと違ってくるんじゃないかな。辛い思いの数だけ、人の辛さも解るから豊かになると思います。

 

 

私は、この映画を観て、自分のしあわせは、今いる場所だなと思いました。別に、特別なにかある訳ではないし、楽しい出来事が起きることも無いけど、気持ちのいい空間で生きることが出来のは、本当にしあわせな事なんだろうと思います。ペットのフェレットをぐーりぐーりしているのは、本当にしあわせです。

 

一つだけ、かなえが子供のころに、ある事件に巻き込まれて、お友達の女の子が亡くなるのですが、こういう事を子供の頃に経験すると、キツいですよね。私も覚えがありますが、忘れられないし、自分のせいだったかもと思ったりして、でも、絶対に大人に話せないんです。恐いから話せないんです。これは可哀想だと思いました。死ぬまで罪の意識にさいなまれるんです。

 

 

書きたくないけど、だからジャニーズの件は許せません。見て見ない振りをしなければならなかった子たちも、ずっと忘れられず、罪の意識にさいなまれているんです。被害者として名乗り出た人たちは助けなければいけないけど、名乗り出られない人たちも傷ついています。会社は責めても良いけど、個人に対して”言わなかっただろ”とは言わないで欲しい。だって、自分が一番解っているんだから。

 

だから、会社は解体と決まったので、所属タレントの方々は、会社と縁を切って、他の事務所と契約した方が良いと思います。でないと、いつまでも言われてしまう。変わったからって、と思うかもしれないけど、一度、縁を切れば、世間はあっという間に忘れます。事件は忘れないけど、沢山のタレントが散り散りになれば、それで馴染むでしょ。もう前を向いて、子供の頃に負った傷は心の奥にしまう準備をすべきです。

 

 

私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。キャスティングもピッタリで、絶妙な距離感が良かったです。リリーさんの探偵役が、あまりにもハマり役でした。真木さんは綺麗ですねぇ。原作漫画と同じ構図の場面があるんですが、真木さんが演じていると、ホントに綺麗。透き通って見えるんです。良かったなぁ。いやぁ、やっぱり今泉監督作品は好きだなぁ。また素敵な映画を作って下さって、ありがとうございます。また、私のコレクションに入れる作品が増えました。皆さんも、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「アンダーカレント」