「白鍵と黒鍵の間に」
を観てきました。
ストーリーは、
昭和63年。銀座のキャバレーでピアノを弾いていたジャズピアニスト志望の博は、謎の男からのリクエストで「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏する。しかし“あの曲”をリクエストできるのは銀座を牛耳るヤクザの親分・熊野会長だけ。演奏を許されているのも会長お気に入りのピアニスト・南だけだった。未来に夢を見る博と、夢を見失ってしまった南の運命は絡みあい、多くの人々を巻き込みながら事態は思わぬ方向へと転がっていく。
というお話です。
昭和63年の年の瀬。夜の街・銀座では、ジャズピアニスト志望の博が場末のキャバレーでピアノを弾いていた。博は、有名なピアニスト・宅見の元で勉強をしていたが、先生の”キャバレーとかで修業をしないと。”という言葉を真に受けて、キャバレーのバンドにピアニストとして入ったのだった。
その日、歌手の希望通りのピアノが弾けず、モヤモヤしているところへ、ふらりと現れた謎の男にリクエストされて、“あの曲”こと「ゴッドファーザー 愛のテーマ」を演奏する。周りは反対したのだが、あまりにも客が強引に言うので、どうしようもなかったのだ。しかし、それが大きな災いを招くとは知る由もなかった。
“あの曲”をリクエストしていいのは銀座界隈を牛耳る熊野会長だけ、演奏を許されているのも会長お気に入りの敏腕ピアニスト、南だけだった。それが、この銀座でのルールだったのだ。
夢を追う博と夢を見失った南。二人の運命はもつれ合い、先輩ピアニストの千香子、銀座のクラブバンドを仕切るバンマス・三木、アメリカ人のジャズ・シンガー、リサ、サックス奏者のK助らを巻き込みながら、予測不可能な“一夜”を迎えることに。後は、映画を観てくださいね。
この映画、不思議な展開でした。1夜のお話なんだけど、その1夜には、3年物もの隔たりがあるんです。博という、駆け出しのジャズピアニストというか、アマチュアに毛が生えたくらいのピアニストが、銀座で弾き始めたころの姿と、南という銀座のトップピアニストに上り詰めた男の姿が描かれるんです。
博は、キャバレーでバンドのピアノを担当しているのですが、ジャズピアニストになりたいという気持ちが強くて、お客様が喜ぶようなリクエストに答えられず、上司に怒られるんです。そんな時、見知らぬ客から、”ゴッドファーザーの愛のテーマ”をリクエストされ、周りに止められるも、お客の希望に逆らえずに、弾いてしまうんです。
そこから、銀座全体が動き出して、南というピアニストや、銀座のボスと呼ばれる熊野会長の姿が描き出されるんです。その曲を弾かなければ、その出来事は起きなかったのに、事件は起きてしまい、自分の運命が動いてしまうんです。
本当なら、出来るだけ危険なことには関わりたくないし、ジャズピアニストになりたいのに、何故、ヤ〇ザさんに関わらなければならないのか。そんなことを思いながらも、この世界で生き抜かなければならなくなります。
”アイツ”の過去は分かりませんが、最近刑務所から出てきて、銀座に戻ってきたということと、”ゴッドファーザー愛ノテーマ”が好きということは分かっています。そして、どーも、銀座のボスと関わりがあるようだということは解ってくるんです。
そんなサスペンス的な雰囲気を与えながらも、現実に生きる、南と博が描かれていきます。南はトップピアニストとして、銀座で有名にはなったけど、でも銀座の店の中だけの世界で、それは飾り物でしかないということに気が付いています。なので、もう、この世界から出て、本当にピアニストとして成功したいと思っているんです。
一方、博はまだまだ駆け出しで、底辺の存在です。キャパレーのお兄ちゃんくらいの存在で、代わりはいくらでも居るんだぞという環境なんです。そんな場所で、自分だけは、他の人とは違った才能があるはずだということを信じて、向上心をむき出しにして、仕事を得ようと頑張るんです。
そんな必死な博と、既に銀座ではやりたいことはやったから、ここから抜け出したいと思い始めた南。この全く反対の状況を並べて楽しめるのですが、実は…。という展開が待っています。
昭和の最後の頃、銀座はこんな感じだったんですかね。私は、銀座の高級クラブなど行ったことが無いので、何とも言えないのですが、美しい雰囲気の裏で、こんな風に、切磋琢磨している人々がいたのでしょうね。だって、音大を卒業したからって、誰もがプロになれる訳じゃないし、本当に才能があるのは一握りだろうから、大変なんでしょう。
いつも思うのですが、なんで男性を接待する高級クラブがあるのに、女性を接待する高級クラブは無いんでしょうね。ホストクラブというと、キャバクラと同じレベルのようなものばかりで、銀座の高級なクラブで、女性を迎えるバトラーのような男性が接待してくれる店はありませんよね。本当に不思議です。
あ、すみません。普段思っていることを書いてしまいました。だって、おかしいでしょ。何度か銀座ではありませんが、高級クラブと呼ばれる店に連れて行って貰ったことがあります。建築屋は、そういうところが好きなんです。横に座って、お酒を作って貰ったり、食べ物を食べさせて貰ったりしましたが、なんでそんなことをされて、嬉しいんでしょうか。キモいんだけど、おじさんたちは喜んでいました。日本は狂ってますよね。令和の今も、そんなことをやっているのかな。不思議な世界です。
話を戻して、そんな銀座をヤ〇ザさんが仕切っていた時代。色々あったのでしょうね。映画音楽の一つを、その人以外がリクエスト出来ないルールがあるなんて、今では考えられないし、もし、今、そんなことをしたら、反社との関わりで店が摘発されちゃいます。でも、それが当たり前だった時代だからこそ、銀座で音楽家が育ったのかもしれません。お金を落としてくれただろうし、反社と芸能関係がそういうところで繋がっていたので、デビューなどが出来たのでしょう。考え深いです。
この映画、完璧な結末がある訳ではありません。それぞれの想像で、考えて欲しいという終わり方でした。これが、良いのかどうかは、人それぞれでしょう。私は、ちょっともやもやだったかな。でも、こういう描き方もあるんだろうなぁと思い、納得出来ました。南と博の関係は、映画で確認してください。ネタバレは出来ないので、ごめんなさい。
池松さんは、さすがに良かったです。そしてやっぱり目が離せなかったのは、森田さんの”アイツ”です。得体のしれない男の役ですが、これが印象的で面白いんです。彼のインパクトによって、全体が締まって見えて、楽しめると思います。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。ちょっと、もやもやする終わり方ですが、これが、ジャズミュージシャンでエッセイストの南博さんの回想録を映画化したものだと書けば、代替の想像はつくと思います。回想録ということは、もちろん、彼は、その後、銀座を出て、成功したということですよね。そこから想像してください。面白い映画でしたよ。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「白鍵と黒鍵の間に」