「BAD LANDS バッド・ランズ」
を観てきました。
ストーリーは、
大阪で特殊詐欺に手を染める橋岡煉梨(ネリ)と弟の矢代穣(ジョー)。ある夜、思いがけず3億円もの大金を手にしたことから、2人はさまざまな巨悪から狙われることとなる。
というお話です。
橋岡煉梨(ネリ)は、特殊詐欺グループの名簿屋である高城のもとで受け子のリーダー・通称「三塁コーチ」をしながら生きている。自身も生活する「ふれあい荘」の住人たちを受け子として束ね、警察の張り込みにも目ざとく気付く“仕事”の徹底ぶりは高城からの信頼も厚い。
刑務所から出所してきたばかりの弟・矢代穣(ジョー)がネリを訪ねてきた。血は繋がっておらず、お互いに連れ子として親の結婚により姉弟になったのだ。お互いに面倒と思いながらも、頼りにしている部分もあるようだった。
ジョーはあまり考えるタイプではなく突っ走ってしまい、賭場で大きな借金を作ってしまう。金に困って、ネリの雇い主・高城を狙おうと仲間と行動を起こすが、失敗してしまい、ピンチのところをネリに助けてもらう。ネリは思いもかけず高城を殺してしまい、裏社会の大物の不在を、どう胡麻化すのかを考え始める。
高城が貯めていたお金を手に入れ、逃げることを考えた二人は、銀行に入っている金を引き出そうと考え、通帳、印鑑を探し出し、暗証番号を調べようと、昔、高城と働いていた”曼荼羅”を仲間に引き入れ、金を手に入れようと動き出すのだが。後は、映画を観てくださいね。
この映画、凄い感動作でした。黒川博行先生の「勁草(ケイソウ)」という小説を原作に作られた映画でした。いい映画だったなぁ。主人公のネリは、酷い人生を送ってきているんです。本当の父親に捨てられ、新しく父親になった人に性的虐待を受け、義父が消えてから母親を亡くし、東京で大手企業の秘書となるも、その社長が酷いDV男で、その社長から逃げて、また大阪に戻ってきたのでした。
弟のジョーは、何度も少年院や刑務所に入り、受け子のまとめ役として働いているネリの所にやってきます。義理の姉弟と言いながらも、最初から、なんとなく強い絆を持った二人のように見えました。ジョーは、ネリを頼りにしているようで、ネリは、そんなジョーをほおっておけないようでした。そしてジョーがとんでもない事件を起こして、窮地に陥っていくんです。
まず、オレオレ詐欺って、こんな風にやっているんだなということも知ったんだけど、それ以上に、こんなに沢山の人が関わっているんだなということも知りました。こんなに人を雇っていれば、沢山、詐欺をしないとお給料は払えないだろうし、沢山のお年寄りをだまして、お金を取っているんだろうなと思いました。酷いですよねぇ。
で、お金を受け取る”受け子”も出てくるんだけど、この高城っていう男、福祉団体を作ってボロいアパートにホームレスを住まわせて、生活保護を申請させて、その上前を撥ねる仕事もしていて、そのホームレスだった男を”受け子”として使うんです。それもはした金で使うんです。この高城、どこまでも底辺の人間からお金をだまし取るという、とんでもない悪党だったんです。
そんな高城の下で働いているネリ。実は、ある理由があって、仕方なく、そこで働いているんです。酷く高城を憎んでいるんだけど、でも、自分を雇ってくれているということで、裏切る気持ちは無いんです。それなのに、ジョーが原因で殺すことになってしまい、慌てます。そして、決意をするんです。
今まで生きてきた人生を変えるべく、行動し始めるんです。そしてね、動き出すと、実は、沢山の人がネリを愛していてくれて、味方がいっぱいいたことに気が付き始めるんです。いつも、自分は不幸だと思って生きてきたんだけど、実は、こんなにも愛されていたのだと気が付いたんじゃないかな。
誰も信用せず、必死で生きてきたネリ。東京で、その頭の良さを買われて秘書になったのだと思うけど、彼女の魅力に取りつかれた変態DV社長に執着されて、大阪に逃げてきたんです。でも、その社長だって、ネリを本気で愛していたんだと思いますよ。ま、愛し方がサイコパスなので、そりゃ、一緒にはいられないですよね。いつ、壊されてしまうか分からないもん。その社長も、大阪にいるネリを見つけて追ってくるんです。
高城関係の人に追われ、変態社長に追われ、警察に追われて、そんな中を、金を持って逃げ切れというのですから、すごいでしょ。そう簡単には逃げられません。でもね、彼女を愛している人々と彼女の頭脳で、何とか逃げ切れるのかはお楽しみです。最後の方は、そうくるか!という展開になりました。沢山の人に愛されていたネリは、それを知って、どんな気持ちだったんだろう。不幸だった人生の中にも、しあわせはあったのだと気が付いたかもしれません。
安藤さん演じるネリが、その愛を知っていくうちに、本当に美しくなっていくんですよ。そして、姉を慕っているジョー。彼も激しい人生を送り、めちゃくちゃだったけど、でも、ネリへの愛だけは、ゆるがなかったです。山田さん、上手かったなぁ。表情がいいんです。なんでこんな切ない顔が出来るのかしら。二人の間にあった子供の頃からの思いは、姉弟だったのか、それとも女と男だったのか。私は、そこには家族としての愛があったんじゃないかと思いました。辛い人生を共に生きて、血は繋がっていなくても、家族だったのだと思います。
他のキャストの方々も良かったなぁ。特に、宇崎さん、カッコよかったです。どんな役でも、ロックが入っていてイケてました。高城役の生瀬さんも、悪い奴だったなぁ。DV社長の淵上さんは、綺麗な顔をしているのに突然サイコパスになるから、ビックリでした。刑事の吉原さんや江口さん、裏のボスの天童よしみさん、もう、びっくりするようなキャストが勢揃いで、見ごたえがありました。
私は、この映画、超!超!お薦めしたいと思います。良い映画でした。凄く深い映画だと思いました。表面だけ観ないで、それぞれの人物の心を考えて観て欲しいです。きっと、不幸な映画ではなく、しあわせな映画だったのだと思えると思います。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S:山田さんが出ているので、制作の所に藤島ジュリーの名があり、またも気分が悪くなりました。映画を作っているのだから仕方ないとは思うけど、性被害者のことを思うなら、名前を消して貰うとか、そういう措置をしないのかしら。常識が無いなと思いました。
「BAD LANDS バッド・ランズ」