「ほつれる」綿子の複雑な心情が溢れ、ほどけていく様子が描かれています。舞台でも上演されました。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「ほつれる」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

夫・文則との関係がすっかり冷え切っている綿子は、友人の紹介で知りあった男性・木村と頻繁に会うようになる。ある日、綿子と木村の関係を揺るがす決定的な出来事が起こり、日常の歯車は徐々に狂い出していく。

というお話です。

 

 

ある朝、綿子はリュックを背負ってアウトドアに行く服装で、寝室から出てきます。リビングのソファには、夫が寝ており、綿子に「厚い布団を出しておいて。」と声を掛けます。わかったと言って出かけていきます。綿子と夫・文則の関係は冷め切っていて、家庭内別居状態です。でも、お互いに離婚をしようとは言っておらず、冷めたままの関係を続けています。

 

綿子は、木村という男性と山梨にグランピングに出かけていた。友人の紹介で知り合った木村とは、頻繁に会うようになっていた。いわゆる不倫関係を1年ほど続けており、今回の旅行で木村が綿子に指輪をプレゼントし、お互いに右手の指にはめて写真を撮って楽しんでいた。

 

 

楽しい旅行も終り、地元へ帰ってきて分かれた二人。”じゃあ、また。”と分かれた後、何か後方でイヤな音がし、振り返ると木村が交通事故に遭っていた。綿子は、直ぐに警察に連絡をするが、場所や状況を上手く伝えられず、電話を切ってしまう。そしてその場を立ち去ってしまう。

 

後日、友人の英梨から連絡があり、木村が事故で亡くなったという。泣くに泣けない綿子は、葬式への出席もせず、悶々としていた。心の支えとなっていた木村の死を受け入れられず、何となく日々を過ごしながら、木村との思い出の場所を辿っていく。そして…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

加藤監督の新作映画です。少し前に、「ドードーが落下する」の舞台を観て、うーんと唸ってしまったのですが、今回も、うーんと唸ってしまいました。脳に入ってくる情報量が多すぎて、全てを咀嚼出来ないうちに、映画が終わってしまうので、こうやって感想を書くことで、解決していけるのかなと思います。

 

綿子は、不倫をしていますが、木村と付き合っているから、今の結婚にも我慢が出来ているのだと思います。夫の文則は、優柔不断なんですよ。綿子との関係は、不倫から始まったようですが、妻と離婚して綿子と結婚したんですね。

 

 

子供がいるので、今も前妻とは会っていて、実は前妻との不倫が発覚して、文則と綿子は家庭内別居状態になったんです。酷いでしょ。私なら、こんな男とは直ぐに別れると思うけど、綿子は抑えて、見て見ない振りをして、夫婦関係を続けているんです。もちろん、不満は沢山あると思うけど、不倫をして結婚した訳でしょ。なのに前妻に夫を寝取られたなんて、許せなくて、離婚したくなかったというのもあるんじゃないかな。だって、復讐されたようなもんでしょ。負けたくないと思うよね。

 

そんな意地もあって、見て見ない振りをしながら夫婦を続けて、他の人と会う事で、その寂しさを紛らわせていたんじゃないかな。ドロドロしてますよね。私なら、耐えられないと思うけど、まぁ、そういう人もいるのだと思います。

 

 

文則は、結構、良い会社に勤めているのかな。裕福そうに見えました。そして、今の二人の状態を回復する為に、家を買おうと思っていると綿子に話し、内覧しに行こうと相談をします。綿子はあまり乗り気ではありませんが、表面上は”いいよ”と返事をします。この夫婦、自分の気持ちを全く相手に伝えようとせず、表面だけで会話をしているんです。

 

こんな状況が良い訳が無く、綿子はストレス一杯だったと思いますよ。その解消として、木村との不倫があったのだと思いました。きっと、お互いに気が合って、二人とも、自分の夫婦関係に、少しウンザリしていたんじゃないかな。

 

木村は、同級生と結婚したらしく、長く付き合って結婚したようなんです。木村の妻も、ちょっとだけ出てくるのですが、はっきり言って、ずーっと高校くらいから同じ相手と付き合っていて(途中で一瞬別れたりはあったらしいけど。)、結婚したとなると、他の人との時間も過ごしてみたいと思うんじゃないかな。飽きるよね。どんなに好きだとしても、そんなに長かったら、親子と一緒でしょ。息が詰まる時だって、あると思うんです。私なら、耐えられない時もあると思います。

 

 

それぞれに違う人生を生きているけど、誰もが、きっと、息をつきたくなる時があって、たまたま、同じように息が付きたいと思っている人がそばにいたら、一緒に過すこともあるかもしれない。それが不倫になっちゃって、一般常識的には、もちろん、悪いことなんだろうけど、人生に行き詰る時って、誰もがあるんじゃないかな。

 

そんな相手が、突然に亡くなってしまって、悲しみもあるけど、それ以上に、支えが無くなって、どうしてよいのか解らなくなったのかなと思いました。本当なら、夫との関係は破城しているのだから、直ぐに離婚してとなっていたハズなのに、木村との楽しい時間で、その不満を押し殺し、何とか平常を保っていたのに、無くなってしまったら、もう、夫との関係に正面から向き合わなきゃいけなくなってしまいます。耐えられなくなりますよ。

 

 

人間って、簡単に良い悪いだけじゃ決められないんですよね。もちろん、脳では悪いと解っていても、心が耐えられずに、誰かを求めてしまうって、あると思います。綿子だけじゃなく文則だって、綿子と結婚したのは良いけど、また1から始めなくちゃいけなくて、前妻に会って子供の事を話していたら、それまで分かり合っていた気持ちが蘇って、不倫してしまったんじゃないかな。悪いとは解っていてもというのがあったのかもしれない。人間は弱いので、頭で考える行動ではなく、感情に従ってしまう事もあるのかなと思いました。

 

人の弱さがよく描かれていて、どの人物の行動も、凄く理解が出来るんだけど、でも、考えて行動して欲しいと思いました。いや、私は考えて行動したいと思います。感情に流されず、ダメな事はダメと言いたい。そう思っていないと、いつでも流されてしまいそうなんですもん。

 

 

そんな事を感じる映画でした。私は、この映画、超!お薦めしたいと思います。表面だけ見ていると、只のダブル不倫でダメになっていく夫婦の話なんだけど、細かい心理描写やセリフで知らせている部分が多いので、情報量が多くて、それを理解出来てくると、もっと楽しめると思います。”た組”の演劇が好きなので、加藤監督の作品はやっぱり良いと思いました。「わたし達はおとな」も、私は好きでした。出てくる人、みんなクズだったけど、人間ってそんなもんですよね。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「ほつれる」