「6月0日 アイヒマンが処刑された日」裁判から処刑までの間、市民を巻き込んで何があったのか。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「6月0日 アイヒマンが処刑された日」

 

を観ました。シネマNAVI(@CINEMA_NAVI)さんのTwitterで当たりました。

 

ストーリーは、

ユダヤ人大量虐殺に関与したアドルフ・アイヒマンは、終戦後ブエノスアイレスに潜伏していたところをイスラエル諜報特務庁に捕らえられ、1961年12月に有罪判決を受ける。処刑はイスラエルの「死刑を行使する唯一の時間」の定めに基づき、62年5月31日から6月1日の真夜中に執行されることとなった。火葬の風習がないイスラエルでは、秘密裏に焼却炉の建設が進められた。

というお話です。

 

 

1961年。4か月に及んだナチス・ドイツの戦争犯罪人、アドルフ・アイヒマンの裁判に、死刑の判決が下された。リビアから一家でイスラエルに移民してきたダヴィッドは、授業を中断してラジオに聞き入る先生と同級生たちを不思議そうに見つめていた。

放課後、ダヴィッドは父に連れられて町はずれの鉄工所へ向かう。ゼブコ社長が炉の掃除ができる背丈の小さな男を探していたのだ。ヘブライ語が苦手な父のためにと熱心に働くダヴィッドだったが、こともあろうか社長室の飾り棚にあった金の懐中時計を盗んでしまう。それはゼブコがイスラエル独立闘争で手に入れた曰く付きの戦利品だった。



 

居心地の悪い学校を抜け出し、ダヴィッドは鉄工所に入り浸るようになる。左腕に囚人番号の刺青が残る板金工のヤネクや技術者のエズラ、鶏型のキャンディがトレードマークのココリコなど、気さくな工員たちはダヴィドをかわいがってくれる。

ゼブコも、支払いのもめ事を解決してくれたダヴィッドに一目置くようになる。そんな時、ゼブコの戦友で刑務官のハイムが設計図片手に、極秘プロジェクトを持ち込んできた。設計図はアウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉。燃やすのはアイヒマン。工員たちに動揺が広がる。 後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、イスラエルやユダヤ人に関しての知識を詰め込んでから観ないと理解が出来ないくらい、細部までこだわって作られている映画でした。あまりにも濃厚に作ってあるので、知識が無いと理解が難しいかもしれませんが、理解出来た時、新しい世界が開けたような気持ちになります。

 

アイヒマンの処刑の日までの、かかわった人々の物語です。群像劇というのかな。3パートあり、一つが焼却炉の製造を頼まれた工場の人々で、こちらはダヴィッドが主になっているかしら。そして、アイヒマンを処刑まで守り抜く刑務官のハイムの物語。もう一人がミハというユダヤ人で、アウシュヴィッツに投獄され、家族を殺され、生き残った男性の物語です。

 

3人とも、全く立場が違うんです。ダヴィッドは、リビアから家族でイスラエルに来たユダヤ人で、ヨーロッパでユダヤ人が虐殺されたことを体験していません。なので、アイヒマンがどれだけユダヤ人に酷いことをしたのかと言う事を、理解していないんです。なので、学校でアイヒマンの話をしても、全く興味が無いような態度をみせるんです。

 

 

ハイムは、たしかモロッコ出身と言っていてスペインが近いんです。アイヒマンはアルゼンチンに逃げていたので、どちらもスペイン語が話せるようで、映画の中で、2人の時はスペイン語で話していたようです。ハイムは、死刑判決が出て、死刑の日までアイヒマンを守らなければなりません。彼自身もユダヤ人虐殺を体験していませんから、他のユダヤ人ほど憎んではいませんが、周りは今にも殺したいと思っている人間が大勢いるので、守るという重圧を感じて、凄いストレスを感じています。

 

そしてミハは、アウシュヴィッツの収容所で辛い思いをし、家族を殺されて、生き延びました。その体験を検察の捜査官として法廷で話すことにより、裁判を進め、アイヒマンを処刑という判決に持って行きます。彼に対して、ある人物が、辛い過去を話すのはキツいでしょうから、もう話すのは辞めたらいかがですかと言うのですが、彼は話すのを辞めることはない、決して忘れないと返します。それが、ミハの人生なのだと感じました。

 

 

この3人の話が交互にやってきますが、ダヴィッドの話が一番メインかしら。ダヴィッドは、全く興味が無かったアイヒマンに対して、処刑に使う焼却炉を作ることで、それが歴史に残る大変な事だと感じていきます。そして、彼の周りには、腕に番号を入れられた収容所の生き残りがいた事を知ります。

 

ダヴィッドが仕事をしている鉄工所のゼブコ所長は、イスラエルの独立戦争で戦った人ですが、ナチスの収容所は経験していません。でも、その酷い状況は年代的に知っているんです。なので、処刑用の焼却炉の設計図がドイツの焼却施設のものでも、嫌がらずに受けたのだと思いました。きっと、彼以外のユダヤ人は、受けなないだろうから、自分がやらなければと思って、受けたんだと思います。

 

 

そして、ダヴィッドの能力も見抜いていたのだと思いました。ダヴィッドは、きっと勉強すれば、素晴らしい技術者になれるだろうと思い、焼却炉の製造後に、無理に辞めさせたのだろうと思いました。まだまだ勉強をして、きっと、国のためになるだろうと、未来を見たんだと思います。過去を消し去る仕事をしながら、未来も大切なのだと暗示してくれていたのだと思いました。

 

誰もが、過去を忘れたいと思いながらも、過去を忘れてはいけないという気持ちを持って、ユダヤ人虐殺を伝えてきたのだろうと言う事が、この映画を観て解りました。嫌な事は、本当なら忘れたいですよね。でも、忘れてしまったら、また同じことが起きるかもしれない。イスラエルという国には、色々な国からユダヤ人が集まって来ていて、ヨーロッパで行われたユダヤ人大虐殺をほとんど知らない人もいる。でも、そういう恐ろしい過去があったのだと言うことは、ユダヤ人、みんなで共有していかなければならないと思ったんじゃないかと思います。

 

 

映画の最初に、ダヴィッドの学校で、ユダヤ人というのは、宗教なのか人種なのかどっちでしょうという質問が教師から出されます。私は宗教だと思っているけど、彼らはどう思っているんですかね。考えさせられました。

 

私は、宗教だと思っていたのですが、彼らからすると違うのかしら。キリスト教とイスラム教とユダヤ教は、元々、同じアブラハムという人が伝えたことを書面にしたことで、3つの宗教に別れたんですよね。だから、元々、同じだと思うんだけど、どうして、こんなにも考え方が別れてしまったのかしら。ユダヤ教だというだけで、虐殺されることになるなんて、考えられないことです。本当に恐ろしい歴史です。

 

 

この映画、アイヒマンといいながら、アイヒマンの顔は映りませんし、人となりも解りません。アイヒマンを取り巻く人の様子で、処刑がどう行われたのか、何故、処刑をしなければならなかったのか、何故、6月0日となったのかが描かれます。とても良く出来た映画でした。

 

映画を観た後に、日大の渋谷哲也教授が解説をしてくださいまして、本当に良く解りました。私は、ハイムとアイヒマンの会話だけスペイン語だったなんて気が付かなかったし、ヘブライ語やアラビア語などが使われていて、イスラエルという国が、宗教でまとめられているので色々な人種がいるのだと解りました。出身によって、アウシュヴィッツを知らなかったり、教えていただかなかったら気づけなかった事も沢山ありました。再度、解説を踏まえて、観に行きたいと思います。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。今までの、ナチスドイツ関係の映画とは違います。そして、今まで映画化されたアイヒマン裁判などの映画とも違いました。毛色が違って、面白く観れると思います。但し、観る前にイスラエルの事を知ってから行った方が良いかもしれません。知的な映画になっていました。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「6月0日 アイヒマンが処刑された日」