「熊は、いない」
を観てきました。Fan’s Voiceさんの、独占最速試写会が当たり、観せていただきました。(@fansvoicejp)
ストーリーは、
パナヒ監督はトルコで偽造パスポートを使って国外逃亡しようとしている若い男女を主人公にしたドキュメンタリードラマ映画を撮影するため、イランの国境近くの小さな村からリモートで助監督レザに指示を出す。そんな中、滞在先の村では古い掟のせいで愛し合うことが許されない恋人たちをめぐるトラブルが大事件へと発展し、パナヒ監督も巻き込まれていく。
というお話です。
パナヒ監督は、トルコで政府からの迫害から逃れるため、フランスへ国外逃亡しようとしているカップル、ザラとバクティアールのドキュメンタリー映画の作成に着手する。しかし、パナヒ監督は国から映画製作を禁じられており、秘密裏に動くしかない。撮影場所はトルコだが、パナヒ監督は国外に出る事も禁じられているため、トルコ国境近くの小さな村に部屋を借り、撮影の指示をしていた。
ある日、通信が悪くなり、回線が繋がらなくなってしまう。色々な場所で試してみるが、どうしても回線は繋がらない。仕方がないと諦め、村の子供たちや風景などを撮影しはじめるパナヒだった。
電話が繋がらないことを心配した助監督レザが、トルコからやってくる。蜜出国は難しくても、密入国は簡単なのだ。レザは密入国業者に協力して貰い、数日、トルコで撮影してみてはどうかと提案するが、パナヒは国外には出ず、村に戻る。
村に戻ると、村の女性ゴザルが訪ねてきて、自分とソルドゥーズが一緒の写真を撮っていないかと尋ねる。ゴザルには生まれた時からの許嫁がおり、他の男性と一緒にいるのはマズイのだった。その村には昔からの掟があり、女子は生まれて直ぐに夫が決められるらしい。しかしゴザルは他に好きな男性が出来てしまったようだ。村の掟が大切か、個人の意思が大切か、村では大騒ぎとなる。
パナヒは、2人の写真は撮影していないと話すが、納得して貰えない。ソルドゥーズは彼女と駆け落ちするつもりだとパナヒに告げ、出て行ってしまう。トルコのドキュメンタリーのカップルとこの村のカップル、2組の男女の問題を考えながら、パナヒ本人も危険に晒されていく。後は、映画を観てくださいね。
パナヒ監督の最新作ですが、2022年の作品で、この映画が出来上がって直ぐに、監督は逮捕されたそうです。ハンガーストライキなどをして、現在は解放されたとのお話でした。自由に映画も撮れず、言動も許されず、出国も出来ないなんて、本当に酷いけど、それでもイランに止まり、映画制作を続けるという姿勢を崩さない監督は凄いです。
そんなパナヒ監督の新作は、あるカップルのドキュメンタリーなのですが、トルコで撮影のため、リモートで監督をしています。少しでも近くでということで、イランのトルコ国境近くの村に滞在して監督をしていますが、その村でも、あるカップルの問題が持ち上がり、パナヒ監督が巻き込まれていきます。
2組のカップルを追いながら、国に蔓延っている、無意味なルールに、人間が振り回されていることを描いていて、その為に、人の命までもが失われる事もあるという、ある意味、社会の不条理を訴えているんです。
人間には、こだわりと言うものがあり、簡単にルールを変えれば良いと言う訳ではありませんが、でも、これはおかしいでしょというものってありますよね。日本でいえば、ブラック校則と言われるモノとか。授業中にスマホをいじるなという校則は理にかなってるけど、髪型を決めるのは間違ってるでしょ。個性が無くなります。
同じように、ごの村では、女子は生まれた時に結婚相手が決められると言うんです。なんで女子だけ?何の意思も持たない時に決めるって、意味がないでしょ。人権侵害ですよね。ありえない。
そんな自由の無い村で、好きな人と結婚したいと思った2人は、一体、どうなっていくのか。だって、周りはみんな敵です。怖いですよね。2人と関わってしまったパナヒ監督は、ある場面で村人に、"熊が出るかもしれないから、1人で外に出ないで。"と忠告されます。イランには、熊はいません。でもね、何があるかわからないから、気をつけてということなんです。熊より恐ろしい何ががいるかもしれない。
世の中は、自由を求める人ばかりではありません。ルールの中で生きるからこそ、安心出来る人もいる。でも、それって、人間の生き方じゃないですよね。家畜みたいでしょ。それを解ってない人って、結構、いるんじゃないかな。日本でも、言われるがまま、何も考え無い人っているじゃないですか。どう考えても、それは理屈に合ってないですよって言っても、法律だからとか、規則だからと言って、続けてしまう。人間の意志が無いんです。
どんな時でも、自分で考えなくては人間ではありません。イランでは、自分で考えることが許されず、国が言うまま、ルールに従わなければ逮捕するという、不条理な事が沢山起こっていると言う事を、暗に示しているのだと思いました。でも、これって、イランだけじゃないですよ。日本だって同じです。
今の政府がいい加減な政策を続けていても、何も変えられないでしょ。みんなが選挙に行って、自民党に票を入れなければ、政治は変わるんです。国内で苦しんでいる人が沢山いるのに、海外支援をしてしまう。国民を大切にしないで、移民を勝手に入れてしまう。もう、めちゃくちゃでしょ。そろそろ本気で拒否をしていかないと、日本は壊れてしまいます。はぁ~、パナヒ監督の映画を観ると、今の日本の現状も見えてくると思いました。
映画の後に、宗教学・ペルシア文学研究者の村山木乃実さんがいらして、解説をしてくださいました。今回もとても解りやすく、イランの現状、パナヒ監督の現在、映画の中に隠されていた比喩的表現などを教えてくださいました。とっても満足でした。
この映画、私は、超!お薦めしたいと思います。ここ最近、良い映画が続いているなぁ。とっても満足なんだけど、良い映画だとその分、凄く疲れるんですよ。細部まで観ようと集中してしまうので、観た後、身体はぐったり。でも、理解出来ているから、脳の中はスッキリしていて、アドレナリンが出た後だから、気持ちが良くなってるんです。うーん、映画って、イイなぁ。この映画、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「熊は、いない」